穴ぐら
タイトル:穴ぐら
彼は考古学者だった。それも高名な学者。
その彼がある日、チームを組んで、
鍾乳洞のある現場に向かった。
そこにはもしかすると新発見できる遺跡があるとか何とかで、
世間は注目した。
これでまた新たな功績を手にすれば、
彼はさらに高名な学者になれる。
しかし現場調査をしていた時、
「う、うわあぁあ!!」
大きな地震が起こり、その時チームで入った3人が
穴ぐらの中に閉じ込められた。
その鍾乳洞はそれほど大きくない。
だから二次災害などでまた地盤が崩れれば、
3人ともが危ない…そのニュースで持ちきりだった。
「大丈夫かな…」
世間がそうして見守る中、
「1人!1人生還しました!!」
と言うニュースが飛び込んできて世間は喝采。
高名な学者である彼だけが生還し、
残りの2人はその穴ぐらの中で生き絶えていた。
のちに医者によると、2人の死因は酸欠だったらしい。落ちてきた岩に頭を強打していたらしい。
それから数年後。
その高名な学者こと彼を含む新たなチームが、
今度はまた別の遺跡へ現場調査に向かった。
今度も小さな穴ぐらの中。
しかし世界初の新発見ともなる遺跡が期待され、
世界中が注目。
今度そのチームの中には、
彼以上に高名な学者であった
考古学の権威の老博士が含まれていた。
老博士がそのチームを組んで、
遺跡発掘調査のプロジェクトを組んでいたのだ。
「あなたとご一緒できて光栄です」
老博士「私も君のような有能な学者をメンバーに迎えることができて光栄だよ」
2人は仲が良く、今度は5人のチームを組み、
その穴ぐらの中へ入っていった。
しかし何の因果か。
また大きな地震が発生し、
その穴ぐらの中に今度は5人が閉じ込められた。
(穴ぐらの中)
彼「ハァハァ、だ、大丈夫ですか、先生!?」
老博士「あ、ああ、なんとかな…しかし頭を打ったようだ…血が出とる…」
前の調査で生還していたその彼は、
下半身を落ちてきた岩場に挟まれてしまい身動き取れず。
しかし何とか一命をとりとめた様子で、
老博士ともに救助を待つ身となった。
彼「ほ、他のメンバーたちは…?」
老博士「…岩の下敷きになってしまったようだ…かわいそうに…」
彼「……」
そのとき残っていたのは2人だけ。
しかし救助は難航した。
また余震で地盤が緩み、落ちてきた岩で
穴ぐらと外界をつなげていた
わずかな隙間も埋まってしまった。
彼「ハァハァ…大丈夫です、必ず救助が来てくれますから。私は前にもこの経験をしています。この状況でも、しばらくは保(も)ちます…!」
老博士「ハァハァ…しかし、隙間が埋まっちゃったよ。…ここは狭い。2人と言えど、空気がもつか…」
老博士はゆっくり立ち上がり、彼の方へ歩いていった。
彼「ハァハァ…大丈夫です…!気をしっかり…え?あ、あなたそれ…」
老博士「君が前に生還できた理由は、こう言うことじゃなかったのかね…?君より私の方が高名な学者だ。世間は、私の方を待っているとは思わんかね…?」
彼「せ…先生…?や、やめ…やめてくれ!やめろぉ!!」
老博士は右手に石を持っていた。
彼はそのとき老博士の背後(うしろ)に、
あの時の2人の残影を見たと言う。
老博士はその後、無事に生還。
彼はあの時と同じ方法で穴ぐらの中に閉じ込められた。経緯も同じ。
動画はこちら(^^♪
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