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少女の病

タイトル:(仮)少女の病

▼登場人物
●路市 美奈子(ろし みなこ):女児。12歳。小学校6年生。風邪引き。人一倍臆病。
●路市裕子(ろし ゆうこ):女性。40代。美奈子の母親。風邪気味だったがもう治り掛け。
●路市啓三(ろし けいぞう):男性。40代。美奈子の父親。

▼場所設定
●路市宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。美奈子の部屋は2階。1階に両親の寝室がある。美奈子の部屋から庭が見下ろせる。庭には枯れ木が1本植えられてある。
●病院:美奈子が救急搬送される。一般的な総合病院のイメージで。

NAは路市 美奈子でよろしくお願いいたします。
(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む3144字)

イントロ〜

皆さんは、風邪をこじらした事はありますか?
たかが風邪と思っていても、長引くとしんどいですよね。
今回は、風邪を引いてしまった少女にまつわる意味怖のお話です。

メインシナリオ〜

私の名前は路市 美奈子。
小学校6年生の12歳。

私は今風邪をひいている。
もちろん治る病気だけど、
こじらせてしまったせいでなかなか治らない。

私は人一倍臆病だ。
いや、人の777倍臆病と言っていいかも知れない。

こんな時、一緒に心を支え合える仲間が欲しい。
苦しい時こそ、同じ状況に苦しむ仲間が欲しい。
とにかく、
「励まし合える仲間が欲しい」
と心の中でずっと訴え続けた。

「自分だけがこんなふうに苦しんでるのは嫌!」
こんな正直が心の中でずっと右往左往するのだ。

ト書き〈美奈子の部屋・ベッドで寝ている〉

美奈子「コンコン…!ああ、しんどい…早く…早く…治らないかな…」

私はベッドの中で、何度も何度もそう祈り願った。

ト書き〈ベッドから庭を見る〉

庭を見た。
そこには枯れ木が1本植えられている。

「あの木の枝の枯葉が、もし落ちたら私は…」
そんな一説を思い出し、何気に不安になった。

裕子「美奈子、大丈夫?お粥作ったけど、少しでも食べてみない?」

美奈子「はぁはぁ…お母さん、ありがとう…でも今は食べたくないわ…」

お母さんも少し風邪をひいていた。
でもお母さんの風邪はもう治るところ。
私の方がひどかった。
子供だからか、免疫力が無いからか、本当になかなか治らない。
もう1ヵ月くらいこの状態だ。

美奈子「お母さんは…もう大丈夫なの…?」

裕子「うん、大丈夫よ。あんたもすぐ治るから心配しない事」

私は今でも熱が38度くらい。
38度と9度の間を行ったり来たり。
猛烈にしんどい毎日が続いている。

ト書き〈悪化〉

そんな或る夜の事。

美奈子「ハァハァ…!ハァハァ!し、しんどい…本当に…誰か…助けて…」

病状が悪化した。
大した事ないと思っていた両親も、その熱の上がりように驚いた。
40度を超えていたのだ。

両親はすぐ救急車を呼んだ。

啓三「大丈夫だぞ!負けちゃダメだからな!」

裕子「大丈夫よ!今救急車呼んだから、先生に診て貰えばすぐ良くなるわ」

美奈子「ハァハァ…!」

先生に診て貰えると知った時、少し勇気が湧いた。

ト書き〈診察〉

救急車はすぐに来てくれた。
病院へ搬送され、私は診察を受けた。
なぜかこういう時、少し気分は楽になる。

ドクター「風邪をこじらしただけでしょう。多分大丈夫ですよ。お薬をきちんと飲んで、ご飯をしっかり食べて、十分に静養すれば治ると思いますよ」

裕子「有難うございます」

ドクター「でも最近は疫病の事もあるので、十分注意はして下さい。弱った時にもし罹患すれば免疫力が無い分、忽ち病状が悪化する事もありますので」

啓三「分りました」

美奈子「(疫病…)」

そういうドクターの言葉を聞いて、
「疫病」
と言うのがどうも引っ掛かった。

確かに今は疫病に罹患してない。
でも今後、罹患しないとは限らない。
どこからウィルスがやってきて、どう自分に罹患するのか。
誰にも見当が付かないだろう。

私は病院へ来て、新たな不安材料を心に植え付ける事になってしまった。

ト書き〈帰宅〉

美奈子「お母さん、私治るのよね?大丈夫よね?」

裕子「大丈夫よ♪先生もそう言ってくれたでしょ?」

美奈子「うん。…でも、もし疫病に罹っちゃったら…今こんな状態で罹っちゃったら、私死んじゃうんじゃ…私まだ子供だからすぐに死んじゃうんじゃ」

裕子「なーに言ってんのよ。あんたは街中にも行かないし誰かに会ったりもしないんだから。じっと家で寝てればそのうち治るわ。変な事考えないの」

美奈子「うん…」

ト書き〈悪化〉

美奈子「ハァハァ…お父さん…お母さん…ハァハァ…苦しいよ…助けて…」

また悪化した。
時間は夜中。
今度は熱の苦しさだけでなく、胸の苦しさも同時にやって来た。
とにかく息苦しい。

美奈子「ハァハァ…も、もしかして、あたし…肺炎…?…ハァハァ…息…苦しいよぉ…これ完全に…疫病に…罹っちゃったんだわ…きっと…そうよ…」

そんな末恐ろしい妄想が真横によぎった。
父も母もとっくに寝ている。
支え合える仲間なんて誰1人居ない。
私はこの独房のような部屋で1人きり。
とにかくずっと苦しみ続ける。

美奈子「ハァハァ…!もう…もう…ダメ…あた…し…死ぬんだ…わ…」

ト書き〈翌朝〉

そして翌朝。
信じられない事が起きていた。

美奈子「ハァハァ…お、お父さん…お母さん…!」

どうしても苦しくてその日の早朝・6時頃に、父と母の寝室へ行った。

すると父も母も頭部がメチャクチャに破壊される形で死んでいた。

そのすぐ横には血の付いた金属バットが転がっていた。
この金属バットはもともと家にあった物。
お父さんが、草野球なんかで使っていた金属バットだ。

「強盗殺人でも起きたのか!?」

この光景から、その思いが真っ先に浮かぶ。
でも部屋は無闇に荒らされていない。

ト書き〈その後〉

美奈子「どうしよう…私元気になっちゃった…この先一体…私どうしたらいいのよぉ…!」

解説〜

はい、ここ迄のお話でしたが、意味怖に気づかれましたか?
それでは簡単に解説します。

美奈子は風邪を引き、こじらせて苦しんでいました。

先生からは治ると言われていましたが、それでも、
「もし疫病に罹患してしまえば症状は悪化する」
と聞かされ、美奈子は持ち前の臆病な心から、
「自分はこのさき罹患するかも知れない」
と本気で心配し始めます。

ストーリー中に何度か出てきましたが、美奈子は、
「一緒に苦しんでくれる人が欲しい」
「苦しい時こそ支え合える仲間が欲しい」
「自分と同じ状態にある人が欲しい」
等、とにかく自分を安心させてくれる人の存在を欲しがっていました。

その上で1度は病院へ行き、
回復する兆しを見せた美奈子でしたが、
帰宅後、病状はまた悪化してしまいます。

美奈子はそのとき自分が疫病に罹患したと思い込み、
「もうダメ、あたし死ぬんだわ」
と妄想に取り付かれたように思い込んでしまいます。

ここまで来ればもう分かるでしょうか?

そう、両親を殺害したのは美奈子でした。
最期の力を振り絞るつもりで、両親殺害に及んでしまったのです。

理由は、
「自分と同じ運命を辿ってくれる人」
の存在を願った為。
つまり、
「自分と一緒に死んでくれる人」
を願った為です。

美奈子はもう自分が死ぬと思い込んでいた為、
先回りして、
「死んだ後の世界で自分を待ってくれる人の存在が欲しい」
と強く願います。

もし本当に強盗殺人が起きていたなら、
金属バットで殺害すると言うのもおかしな話。
強盗殺人犯なら刃物か何かを持参して、
確実に死に至らしめる凶器を選ぶでしょう。
ましてその家に金属バットがあるかどうかなど、強盗犯が知る筈ありません。

また部屋が無闇に荒らされていなかった事も、
強盗に遭ってない証拠の1つになるものです。

更にまた美奈子だけが襲われなかった事も、
強盗犯など存在しなかった理由の1つになるでしょうか。

金属バットのグリップからは、
間違いなく美奈子の指紋が出てくる事でしょう。

そしてラストの、
「どうしよう…私元気になっちゃった…この先一体…私どうしたらいいのよぉ…!」
という美奈子のセリフ。

これは元気になった事で、
「罪の裁きを受けなければならない」
と言う恐怖の絶叫でした。

美奈子は苦しみの果てに自分は死ぬと思い込み、その延長で、
「共に苦しむ人が欲しい」
「自分と一緒に死後の世界へ行く人の存在が欲しい」
と犯行に及びました。
だから、自分が元気になってしまっては困るのです。

「この先一体、私どうしたらいいのよぉ…!」
その先には罪の裁きしか待っていません。

もう少し耐えて時間を待てば、
家族3人揃ってまた円満な生活を送れていたと言うのに…。
なんとも早まった、浅墓で愚かな事をしてしまった美奈子…
と言うより他ないですね。

動画はこちら(^^♪
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