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ふわふわの白いエビフライ

ワモンアザラシのミゾレがお空に旅立った。
今年の4月に3歳になったばかりだった。

ミゾレとは2021年春に生まれ、大阪にある海遊館で完全人口哺育で育ったアザラシの男の子。その時期はコロナという得体の知れない病原菌が猛威を振るい、世界中が悲しみと先行きの分からない不安とストレスの中だった。

例外なく私もステイホームしており、ダラダラとスマホを眺め続ける日々。そんなある日、なんとなく見ていたYouTubeというインターネットの海から流れてきたミゾレの可愛さにはたまげた。3度見くらいした。おめめがくりくりでふわっっふわの白いエビフライ。こんな子が厳しい自然界に転がってるんですか!?!?見た瞬間虜になり気がついたらミゾレ関連の動画を全て視聴していた。


産まれてからスピスピと鼻を鳴らしながら眠ってみたり。初めて水に触れる練習で、鼻に水が入り驚いてしまったり。パタパタとちびっこい手を動かして「んぅ゛ーーーっ!」と鳴いていたり。溢れ出るあまりの愛おしさと可愛さで爆発しそうになった。

コロナ禍に海遊館の公式が発信してくれたミゾレの動画で私の様に癒された人、アザラシの可愛さに目覚めた人、救われた人が大勢いることはコメント欄から明白だった。
人間の手で愛情いっぱいに育てられた白いエビフライは、やがてふわふわの毛が抜け、飼育員さんにベッタリな甘えんぼの玉こんにゃくに成長した。


アジが大の苦手で食べずに逃走するワガママアザラシ。でも人間のことが好きで、水槽のお掃除をしている飼育員さんをくねくねしながら邪魔をしてみたり。元気よく自由に過ごしている様子はよくSNSから流れてきた。定期的に動画や写真を見返しては、たくさんの人から可愛がられている様子を画面越しから眺め癒されていた。

そんな中ミゾレが大阪の海遊館から北海道のおたる水族館へ引っ越すということを知った。そうか引っ越すのか。いつかは会いに行きたいなあ。そんなことを考えながらミゾレが海遊館に別れを告げ、北海道行きの飛行機に乗る動画を視聴していた。


ワモンアザラシの平均寿命は30年前後らしい。3年はあまりにも短すぎる。だってこの前元気に泳いでたって聞いたよ。あなた少し前にボールで遊んでいなかったっけ?SNSに上がっていた、おたる水族館の水槽の前に置かれた献花台の写真を見ながら私は泣いた。

1回も会っていない、しかもミゾレが成長していく様子を一方的に見ていただけ。そんな私がボロボロと泣いているのだから、毎日毎日成長を暖かく見守り続けてきた海遊館、そしておたる水族館の飼育員さんの悲しみは計り知れない。あれが悪かったのかなこれが原因なんじゃないかは一旦置き、24時間365日必死に育ててくれた飼育員の皆さんに感謝の気持ちを。ただミゾレがこの短い生涯の中で最後まで楽しかったなあ、幸せだったなあと思っていることを願う。

青く透き通ったお空の海で、大好きなボールのおもちゃを突きながら自由に遊んでいますように。




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