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self-quarantine diary 5/30/2020

体調がすぐれない夜、毎晩開けっぱなしの窓も今日はきっちり閉めたまま、風にあたることすらすこしこわいくらい。これで5月を終わりたくないので明日にはよくなっていますように。体調が悪いのは食生活のみだれもあるけれど(口内炎がたくさんできた)、ここ最近ずっと夜眠れないからだと思う。見たいコンテンツがあるのと、読みたい本があるのと、したいプラクティス(手のムドラの結びかた、オイリュトミー、瞑想、ストレッチ)があるのと、そしてまたどさっと仕事の山が積み上がっている。考えること感じることはその山よりも高く高く。それをぜんぶ夜にやろうとするものだからいけない。とりあえずデジタルデトックスからはじめようと思い、さきほど頻度の高いアプリをいったんぜんぶ消した。

ぜんぜん眠れる気がしないもはや朝みたいな夜には、すべてのよきものをそこで取り戻そうとするみたいに熱い湯船につかり、良いにおいのする化粧水をつけてしばらくぼーっとする、そのたった3分に全宇宙がある。たった3分の即席宇宙、ビッグバンがあったあと、宇宙は3分で原子核がつくられる温度まで冷えた。どろどろ高温のスープのなかで、わたしとあなたがようやく手をとりあうようになるまで。Let’s cool it down. でもこれは科学者がつくったひとつの神話。宇宙がつくられて今が今になるまで、わたしがひとりですみずみまで話すことができるような、わたしなりの神話を見つけなくちゃならない、いつか。それからすでに眠っているオンと、寝落ちした松樹がいるベッドルームによろよろ向かい、いったんオンの小さなベッドに横になる。そのまま添い寝させてもらえるときと、無意識のオンに「どいて」と蹴飛ばされるときと。それにしても、眠る人にこんなにも癒されるなんて、オンがここにくるまで知らなかった。

わたしはいつも、一緒に寝ている人に先に寝られるとその人を起こさないか不安になってリラックスできず、反対に先に寝てもらわないと相手のもぞもぞが気になってまたリラックスできない、というジレンマにおちいることが多かった。でも寝ているオンはわたしを眠りに導く最高のおまもりで、その小さくてツンと上を向いた鼻とか、世界中のすべてのまるいものを集めて作ったみたいなほっぺたに顔を近づけるだけで、わたしはものすごく安心な気持ちになる。毎日いろんなことがあるけれど、これを知れただけでも人生は完璧だだとか思いたくなる。眠る子どもはまじで神さまだ。

今日は昼から父母にオンを預け、それから広場に行ってしばらく読書。デパートはぎりぎりまだ空いていないものの、併設のカフェはすべてオープン、とても天気の良い5月の週末、人々は当然ここに集まってきて、それでもちょっと遠慮気味にベンチに座ってコーヒーを飲んだり、買ってきたテイクアウトのランチを広げたりしていた。花を撮影したり、偽の城の前でポーズをとったり。そのときわたしが読んでいた本はアーノルド・ミンデルの『シャーマンズボディ』で、まだ1章しか読み終わっていないけど(とにかく並行して読んでいる本が多すぎる。1冊に集中できない日々が続いている)、そこには読んでいるだけで知覚を変化させるような何かがあって、だからわたしは本から顔をあげてあたりを見回した。するとコーヒーを飲んでいる人のそのコーヒーが喉を下る感じとか、テイクアウトのランチの蓋をあけるときのあのぱかっという開放感、それから偽の城の前、カメラマンの前でポーズをとる女の子のミニスカートの足のつめたさとかそういうのがぜんぶこちらに入り込んでくる気がした。わたしのからだはまだまだ整えられていないけど(ほんとうに暴飲暴食・睡眠レスなので)、いつかそういうことを当たり前のように、そしてそれをとにかく気持ちのよいこと、たのしいこと、いやされること、うれしくなること、最高の気分になれることに使えたらいいなあと思う。

おととい窓から月を見上げていて、オンもわたしも同時に声を上げた「月だ! 月が見える!」それからオンと松樹がお風呂に入って、ふたりにおやすみなさいをした。そのあとどんどん光を増す月をてきとうに見ながらソファの上で、あの「月だ! 月が見える!」という声についてひとしきり考えていた。月が見えたら声を上げたくなる、上げなくても喉元までやってくるあの声にならない声のことを。

きのう、仕事に行く松樹とバトンタッチするために、昼、広場から家に急いで向かっていく途中、また空を見上げて声を上げている人たちを見た。東京に住むわたしたちの空の上にはきのう6機編隊の小型飛行機が飛び回った。

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