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日本で暮らし7年経ったテルマ「おばあちゃんになった時、後悔のない人生にしたい」

みなさんこんにちは!KAMIKITA HOUSE住人のきどみです。

KAMIKITA HOUSEに暮らす個性豊かなメンバーの魅力を伝える住人インタビュー。
10月末で連載終了のはずが、大好評につきseason2を開始することが決定しました!いつも温かい応援をありがとうございます。今後も定期的にアップしていくので楽しみにしててください!

さて、記念すべきseason2の最初のゲストはエンタメ系雑誌の会社で働くテルマさん。日本に来てからの波乱万丈な暮らしについて語っていただきました。

テルマ
エンタメ系雑誌のセールスマネージャーとして働きながら、大学で心理学も学ぶ。アイスランド出身。ゲームや歌、筋トレが趣味。Yotuberとして自身のチャンネルでカミキタハウスのことを発信している。

アイスランド、イギリス、日本。3つのルーツを持つテルマ

ーーテルマさんは、いつ頃日本に来たんですか?

初めて日本に来たのは、22歳の頃です。アイスランドの大学の留学プログラムで来ました。幼い時にミッキーが日本に行く物語を読んで憧れて、14歳から独学で日本語を勉強し始めたんです。留学期間が終わり、アイスランドの大学を卒業してからも、再び日本に来て演技の専門学校に通いました。その後就職もしたのでもう7年暮らしています。

ーー日本に来るまでは、ずっとアイスランドで暮らしていましたか?

いえ。生まれはアイスランドですが、2歳から12歳まではイギリスで暮らしていました。なので、アイスランドで暮らしていたのは幼少期と13歳から22年の、約10年です。「何人?」と聞かれてもあまりアイスランド人という実感はないですね。「アース人・世界の子供」がしっくりきます(笑)

ーーアース人(笑)。日本語・英語・アイスランド語の3言語を話せる人はなかなかいないと思います。テルマさんからみて、どんな違いがありますか?

日本語は、漢字が特徴的だと思います。一つの漢字にちゃんと意味が込められているので、すごく好きです。例えば「忙」という漢字は「心が亡くなる」と書いて忙しい意味を表しているので深いなと感じます。アイスランド語は言葉に性別があるので、難しい言語ですね。英語は言葉で遊べる言語なので面白いです。例えば、イギリスで自分の好みじゃないものがあれば、「That’s not my cup of tea.(それは私のティーじゃないわ)」で言い表せます。日本やアイスランドで言うと「は?」って空気になると思いますが、イギリスではみんなその表現を理解してくれるので楽しいです(笑)

ーー日本語はどうやって身につけたんですか?

日本に来るまでは、インターネットで日本語の勉強方法を調べ、数字やひらがな、カタカナ、漢字を学んでいました。日本語が身についたな、と感じたのは日本で演技の専門学校に通っていた時期ですね。毎日、日本人に囲まれて日本語を耳にしていましたし、渡される台本も全部日本語です。特に演技をする時は、自分のセリフも相手のセリフも、意味を100%理解しなければならないので、大変でしたが、日本語をしっかりと学ぶにはいい経験でした。

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日本で暮らす夢、2度破れる

ーーなぜ、演技を学ぼうと思ったんですか?

イギリスで4歳の頃に演技の授業を受けて、舞台に立つのは楽しい、と思ったことがきっかけです。あと、お父さんがアイスランドのテレビの司会者なので、その影響も大きいと思います。自分もお父さんの番組に出たこともありますし(笑)。
演技の勉強がしたい、日本に住みたい、そのどちらの希望を叶えるには、日本で演技の専門学校に通えばいいじゃん、ってなりました。

ーー専門学校で印象的だった思い出はありますか?

一番大変だったのは、ゲーム会社で働く社員が、江戸時代にタイムスリップする劇です。自分は現実世界では部長で、タイムスリップ後に姫の体に乗り移る役でした(笑)。元々日本人が演じる役ですが、監督が自分のために外国人に変更してくれたんです。ですが台詞はすべて日本語だし、2つの役で言葉遣いや人柄も切り替えなきゃいけなかったので、とても大変だった記憶があります。全部で1時間ほどの尺で、練習では一度も成功しなかった場面もあったんですけど、本番で奇跡的に成功したので嬉しかったですね。スイッチが入ったんだと思います(笑)

ーー楽しそうですね(笑)

ですが、実はこの専門学校時代に、4年付き合っていた彼氏にフラれたショックで一時的にアイスランドに帰国したんです。彼とはずっと同棲していたので、結婚して、その後日本に住み続けようというプランを描いていました。だから、別れた時は、彼と結婚する夢と大好きな日本で暮らす夢がどちらも消えて絶望的でした。専門学校で仲良い友人はいなかったので、誰にも相談できなかったんです。孤独でさらにメンタルがやられ、1週間で10キロも痩せました。最終的には、専門学校の校長に泣きついて、すごく親切にしてもらったんです。メンタルを回復させるために一時帰国したらどうかと提案してくれたのも校長です。

ーー大変な経験でしたね。アイスランドに戻ってメンタルは回復しましたか?

大好きな家族に支えられ、心は段々と元気になりました。また、ネットでメンタルの回復方法を調べているうちに、「恋愛では、相手から愛をもらおうと思わないことが大切。自分を愛し、自分への愛で心を満たそう」という言葉を見つけ、自分を愛そうと思うようになったんです。嫌な経験だったけど、この失恋を通して心が強くなったと思います。3ヶ月のアイスランド滞在を終えて、再び来日。無事に専門学校も卒業できました。

ーー卒業後は、日本で就職したんですか?

卒業後は一度アイスランドに戻って『IKEA』で3ヶ月間働いてました(笑)。6月から日本でハイヒール会社の専属モデルとして契約を結んでいたので、それに合わせてまた来日したんです。しかし、その会社の人と会って驚きました。実はその契約、書面だけ正社員という表記にして私に日本で暮らす権利を与えるだけで、給料は会社から支払われないものだったんです。「お金が欲しければテレビ局にでも行って、自分で営業して稼いで」と言われました。本当に信じられなくて。その会社のおかげで「日本で暮らす」という夢が続くと思っていたので、また夢が潰された、とショックを受けました。

ーーその後、どうやって職を見つけたんですか?

その会社とは縁を切り、専門学校時代の校長にまた助けを求めました(笑)。そこで今後の作戦会議を立てたんです。日本の学校を卒業すると「就職活動ビザ」がもらえて、3ヶ月間は日本で就職活動ができます。「日本で暮らす」夢を叶えるためには絶対採用されたい、と思い合計250社くらい応募しました。ですが、ほとんど不採用。もう夢は諦めた方がいいかな、と思いかけたところ幼稚園から採用の連絡が来たんです。

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日本と海外の架け橋になって社会を変える番組を作りたい

ーー専門学校卒業後は、演技は続けましたか?

日本に住んで芸能界に入ることも夢のひとつだったので、専門学校時代に芸能関係のアルバイトをして、テレビ局と繋がったり、キャスティングの人や監督と仲良くなったんです。この世界、そうしたネットワークが重要なので。今も本業の他に、アメリカ人のプロデューサーがいる日本の制作会社でアシスタントとして働いています。撮影現場でサポートしたり、動画を編集したり。ナレーターとして出演したこともあります。ここでの仕事は一番ワクワクして、最高に楽しいです。いつか、女優として作品に出演したいと思っています。

ーーテルマさんが考える、演技の魅力は?

演技は、役を演じることで自分と全く違う考え方や生き方を知れるのが魅力だと思います。想像力が身につくので、リアルで出会う人のことをもっと理解できるようになった気がします。あと、演技は笑わせたり、泣かせたり人の感情を動かす力を持っているので面白いな、と思います。どんなに緊張してても舞台に立つと役に入り込んで、緊張感はなくなるんです。

ーー将来の夢はありますか?

テレビのプロデューサーになって、社会に影響を与えるドキュメンタリーを作りたいです。日本で女性や外国人の立場がもっと上がるようにする、もしくは海外で日本人の立場が上がるようにするため、人々に考えさせる番組にしたいです。
女優業での夢は、大好きなレオナルド・ディカプリオとの共演です(笑)。彼と同じ作品に出れるなら何の役でも嬉しいです。

ーーカミキタハウスに住み始めて半年が経ちましたね。暮らしはどうですか?

最高です!みんな自分のくだらない話を聞いてくれるし、ノリがいい。心が温かい人ばかりだと感じます。みんな夢に向かって頑張ってるので、私も頑張れるんです。

ーー夢を持っていてもなかなかテルマさんのように行動するのは難しいです。何かアドバイスはありますか?

自分の人生を振り返ると、夢が叶わなかった瞬間はたくさんありました。「日本で暮らしたい」と思っても何度もその夢は破れて、絶望して。諦めようとしたけど、「夢のために頑張れないなら私はなんのために生まれたんだろ」と思うと踏ん張れました。その結果、今はこうして日本で暮らせてます。一番怖いことは、おばあちゃんになってあの時こうしておけばよかったって後悔すること。やってみなきゃわからないので、勇気がなくても、夢があるならやってみればいいと思います。勇気がないことを言い訳にせず、一歩踏み出しましょう。

【取材後記】
取材中、「この話してもいいー?」と、こちらから質問しなくても自ら喋ってくれたテルマ。どの話題も面白いし、何度も笑いが起きて終始楽しいインタビューだった。中でも印象的だったのが、家族の話。両親の馴れ初めの話や、アイスランドのテレビ番組の司会者として活躍するお父さんの話を聞かせてくれた。家族とは毎日チャットや電話で連絡を取るし、Netflixを同時再生して一緒に観ることもあるという。テルマはカミキタハウスの住人に対して愛情深いと感じるが、それは家族から愛情をたっぷり受けて育ってきたからだと思う。

そんなテルマが「日本で暮らす」夢を叶えるため、何度も心が折れそうな経験をしながらも、家族の元へ帰らず頑張り続けている姿に感動した。外国人が日本で働き、暮らすことがどんなに大変なことか知れた取材だった。テルマはその現実を変えるためにドキュメンタリーを作ろうとしているのがすごい。夢を信じる力と行動力を兼ね備えているのでどんなことだってやり遂げそうだし、きっとおばあちゃんになっても悔いなく生涯を遂げられるだろう。
テルマとレオが共演した作品を映画館で観るのが今から待ちきれない。

取材:きどみ、コージー
執筆、編集:きどみ



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