新体制発表会見からファジアーノの2023のチャレンジをあらめて考える ーJリーグクラブの経営情報を元にー

皆さん,こんにちは。
早いもので,1月も折り返しとなりました。
1月7日には,岡山学芸館高校が高校選手権で優勝し,岡山の新しい扉を開いてくれましたが,同日にファジアーノ岡山の新体制発表会見も開催されました。
その場では,北川社長から経営情報の見込み,2022のチームの分析,クラブの取り組みなどが発信されました。

年末年始にかけて,うにがしらからは3回のシリーズで記事を配信させてもらいましたが,北川社長からの発信を見ていて,特に下の第2回の内容と関連させて振り返る事ができそうだと思いました。

そこで今回は,経営情報の見方を押さえつつ,2023のファジアーノのチャレンジについて考えてみたいと思います。
それでは,よろしくお願いします。

1.【前提】クラブの経営情報の見方を考えてみよう

※この項については,会計に詳しい方,および「Jリーグ クラブ経営ガイド」を読んだことがある方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。


今回は,最初に新体制発表会見の内容を振り返る前に,経営情報の見方を考えてみます。
まず,前回配信したシリーズでも使用した,こちらの表を再掲します。

上の表は,2021年度のJリーグの各カテゴリ平均の経営情報です。

うにがしらは会計を専門的に勉強したことがないので,無手勝流の読み方になりますが,ちょっと説明してみたいと思います。
この記事を読んでいる方で,会計を専門的にされている方がおられましたら,間違いがあればご指定いただけますと幸いです。

では,説明をば。
過去の記事では詳しく説明しませんでしたが,うにがしらとしては,経営情報を大きく3つに分けて見ていくと良いと考えています。表にも示していますが,その内容は,①収入,②支出,③それ以外です。
特にまずは,①収入と②支出に着目すると良いでしょう。
個人で何か欲しいものを買う場合を考えると,おこづかいや給料でお金をゲットして,それを元手に欲しいものに対して支払いをしますよね。
言い換えると,お金を使う動きは,自分で稼いだお金を元にして何かをするのが一般的です。
その事を念頭に置いて,先ほど掲載した表を少し作り変えると,こんな風に読み替えることができると思います。

「営業収益」をブルーに,「営業費用」をピンクに分けてみました。
Jリーグの各クラブは,基本的にブルーの部分でお金を得て,ピンクの部分で様々な取り組みを行って,【黒字を継続しながら】少しでも上の順位を目指していると言えるでしょう。
中身を見ていくと,「営業収益」では「スポンサー収入」が,「営業費用」では,「チーム人件費」が大きく目立ちますね。ただ,「営業費用」の「販売費および一般管理費」といった,何を指しているのかがイメージし難いものもあります。
これらの内容ですが,Jリーグから「Jリーグ クラブ経営ガイド」というものが出されており,その中により詳しい説明がされています。
参考までに,こちらを元に作成した表を掲載します。

2.北川社長からの発信を受けて ーその1:今年は勝負の年ー

北川社長の発信を振り返る前に,各クラブの「銭闘力」を見る上で,収入(営業収益)と支出(営業費用)のどちらを見るのが適切でしょうか?
前回までの記事を読んでいただいた方は,ご記憶かと思いますが,うにがしらはクラブのお金を見ていく際に収入(営業収益)を基準として見てきました。これはこの記事の第1項で触れた通り,Jリーグの各クラブは,基本的に【黒字を継続】を目指すものだからです。
しかし。
あるリスクを負って,赤字覚悟で支出(営業収益)を増やせば,その年は使えるお金が増えるので,できることが増えると言えます。そして,どんなことにお金をかけたがわかるのも,支出(営業費用)です。
そう考えると,収入(営業収益)よりも,支出(営業費用)の方が「銭闘力」をより表していると言えるでしょう。前回までの記事では,こちらに着目すると話が複雑になるため避けたのですが,チームの取り組みを個別に見ていくには支出(営業費用)を見るほうが適切であると,うにがしらは考えます。

さて,前提を整理したので,北川社長の発信を振り返りましょう。
うにがしらは,以下3点に着目しました。

①営業収益は,17.8億
②営業費用は,20.5億
③3.0億あった純資産を1.5億程度残して調整する。

はい,①ー②=赤字2.5億です。
今シーズンは,赤字覚悟で「銭闘力」を上げると宣言されました。家計に置き換えると,ローンなどの借金を背負いつつ,一時的に使えるお金を増やすということですね。
うにがしらが知る限り,ファジアーノ岡山は,今まで赤字を出してきていないと思います(あっても少額のはず。)ので,これはかなりのチャレンジです。
Jクラブの経営で,赤字が続くどうなるか。ご存じの方も多いと思いますが,ざっくり言うと3期連続で赤字および債務(家計で言う借金)が解消しないと,J1・J2はカテゴリが降格,J3では勝ち点10がマイナスされるといったペナルティがあります。したがって,各クラブともに赤字は避けざるを得ないのが,基本構造です(まあ,家計でも借金が続くと生活がヤバいのはわかりますよね。)。
さて,「3年間赤字が続くとヤバいってことは,この先どうするのよ?」ということになりますが,そこで上記の③が関わることになります。

純資産については,うにがしらは,「家計で言えば,貯金」と理解しています。(会計の知識がある方は,ちょっとまて!と思われると思いますが。)普段使わないように持っておいて,緊急時に使えるお金という意味あいがあると理解しているのですが,まず2021年度末に3.0億まで増やした分の半分(1.5億)を赤字の補填に充てると。
そうなると「あれ?でも,それでも赤字が2.5億だから,赤字が1.0億残るけど?」となりますよね。
ですから,残った1.0億は例えば,0.5億ずつ2024と2025に何らかの形で減らしていく必要があります。となると,シンプルに考えると2024と2025は,本来使えたはずの0.5億を我慢する(例えば,獲得したい選手をあきらめる)ことになるでしょう。
これが,非常に単純化した,上記①~③の意味合いだと考えます。(おそらく現実的には,もう少し色々な要素があるのでしょうが・・・それは「中の人」じゃないとわからない部分でしょう。)

これまでも「2022と2023は勝負の年」という発信がされましたが,2023は,ある意味「背水の陣」で戦いに臨む必要があることが示されたと理解してよいかと思います。

3.北川社長からの発信を受けて ーその2:あらためてサポーターにできることを考えるー

のっけから,「やべえ・・・」という感じの流れとなっていますが,もう少し落ち着いて考えてみましょう。

今回の北川社長からの発信は,営業収益の見込みは,2022は18.6億で出されており,2023は17.8億でした。
「なんか少なくない?勝負の年なのに稼げないの?」という感じを受けませんか?

新体制発表会の資料では,2023の予算の試算の前提として,「分配金,移籍金などの外部変動が大きい」ことと,「為替,物価・原材料高騰」といった経営上のリスクが掲載されていました。したがって,提示された資料の数字は様々なリスクを考慮した手堅いものであると思われます。
その中で,うにがしらがスライドを読み込む中で「かなり手堅く見積もったなぁ」と思った要素が1つあります。
それは,「チケット収入(入場料収入)」です。
今回,新体制発表会で提示された資料では「8,000人」で見積もられていました。

(ここからは,他チームのサポーターさんも読まれているかもしれないので,少しぼかして書いていきます。)
12月27日付の山陽新聞に掲載された北川社長のインタビューでは,2023の入場者の目標も示されていましたが,そこでは資料の8,000名/試合より,もう少し多い人数が掲げられていました。
したがって,まず「かなり手堅い見込み(好転する可能性もそれなりに期待している)」ところに,チームの目標として,自分達でもう少し稼いで何とかしようとしているのが,現状だと思われます。
そして,この記事の最初にリンクした「ファジアーノの現在地 ー第2回:岡山県のポテンシャルを信じてー」でも触れた通り,入場者が増えれば,増えるほど,先ほどの2024以降への影響や純資産の減少を防ぐことができます。

なお,残念ながら,新体制発表会見の資料から試算しなおした2023の入場料収入の1人あたりの平均単価は,「ファジアーノの現在地 ー第2回:岡山県のポテンシャルを信じてー」で試算した金額より,少し下がるようです。
それでも,あらためて試算しなおしてみると

新体制発表会見で提示された2023の営業収益の資料から・・・
・10,000人/試合達成 → +約0.6億
・12,000人/試合達成 → +約1.2億

となり,それだけビハインドを取り返せる計算になりそうです。

4.北川社長からの発信を受けて ーその3:2023のチーム人件費を予想してみるー

ここまで厳しめの話をしてきましたが,その一方で2024以降の試算は,「強気だなぁ」とも思いました。J1になると,入場者が増えるといった環境の変化や新しい施策を見込んで試算しているためでしょう。

ここでは関連した内容として,うにがしらが個人的に気なっている2023のチーム人件費を,2024および2025~2030の試算数値を元に予想してみます。

・2024   営業収益:23億 ・ チーム人件費:13億
・2025以降 営業収益:30億 ・ チーム人件費:15億

以上が,新体制発表会で提示された数字になります。大体営業収益の5割~6割弱を見込んでいる感じですね。この情報と,2023の営業収益の見込みを合わせて考えると,2023のチーム人件費は,この10億に近いのではないでしょうか。
過去のこちらの記事で,「J1への自動昇格には10億程度必要では?」と考察したことがありましたが,はてさて、2022の実績と合わせてどうなりますか。

今回,選手の引き留めにかなりお金を使っていると推測されます(そもそもチーム成績がアップしたので,年俸を上げないといけない状況だと思う)し,資料からは,チーム人件費を2025まで徐々に上昇させていくシナリオに見えます。そう考えると,チーム人件費の予算が2022より増やされていてもおかしくはないでしょう。その上で,ミッチェル デューク選手の移籍と合わせると,まだ残ってないかな・・・からの,サプライズ補強カモン!を期待したいところです。

5.他のチームは,赤字になったらどうしてるの? ー特別利益ってなんだよー

最後に,他のチームは赤字になったらどうしているかを見てみましょう。
この記事の第1項で,「経営情報は,大きく3つに分けて見ていくと良い。表①収入,②支出,③それ以外」と示しましたが,①収入ー②支出がマイナスになるチームは,③の項目の一つである「特別利益」によって補填しているケースがあるようです。

この「特別利益」ですが,親会社から補填されるケースやクラウドファンディングを募って充当する場合などがあるようです。
さて,最新の開示情報(2021)で,特に大きな特別利益が計上されているチームは・・・と,

なん・・・だと・・・(;゚Д゚)

神戸さんが30億以上の,長崎さんが10億以上の赤字を,「特別利益」で補填してますね・・・。
ファジの2021の営業収益の・・・,神戸さんだと約2倍。長崎さんだと6割程。
これが親会社の力なのか,そうなのか⁉

天丼。

・・・2023は,町田さんがここに加わってくるのでしょうか。

終わりに

以上で終わると,おあとがよろしいのですが。

上記2チームについて,少しフォローというか補足しておくと,2021はやはりコロナ禍の影響が大きかったことは間違いありません。
また長崎さんについては,2022はコストダウンに取り組まれたとの情報もあります。
2022はシーズン中に高田明氏が,成績不振に対して,長崎サポーターの反感を買いそうなツイートをされていましたが,親会社も株主への説明責任があることを踏まえると,この行為について共感はできなくても理解はできるというのが,うにがしらの感想です。
多くのお金を親会社から投入できるのは,良くも悪くも劇薬の面があることは押さえておいてもよいでしょう。

今回は,新体制発表会見の北川社長の発信を元に,予算の観点を中心にファジアーノ岡山の2023の状況を考えてみました。

中々しびれるシチュエーションとなっており,あらためてサポーターがチームを後押しできるか否かが問われている熱い展開でもあることが確認できたかと思います。

チームの練習も公開されて,いよいよシーズンインが本格化しました。
これからが楽しみですね。

予算関連の話が続いていますが,もう1回,予算をテーマに記事を書きたいと考えています。次回は,「予算から見たときに,岡山のライバルと言えそうなチームはどこか?」を予定。

それでは、また。

※今回の記事と関連して,以下も読んでいただけると嬉しいです。


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