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2024年12月

【12/1〜12/8】
12/1 文フリ。会場がビッグサイトに。天井が高い分息苦しさが少なくてよかった。読書会(Tough)と自分のブースを隣接して出店したのであまり暇せずに済んだ。自分のお客さんがToughの方にも流れるのではという目論見があったが、逆にToughのみを目当てに来る人が多く、思い上がっていたことに気づかされる。
客としても楽しく過ごした。相互だけど会ったことない人のブースに伺ったり。文フリは自閉しているみたいな論調をよく見かけるけど、普段から仲良くしてる人とお互いの本を買いあうのは別に不健全なことじゃないと思う。そこに義務感や息苦しさを覚えるのなら買わなくてもいいわけだし。
投稿もしたが、「ビニール袋」という批評系?サークルが、冊子を袋にパッキングし、持ち運び用の取手を付けて販売していて、面白かったので買った。マテリアルとしての本という視点もあっていい。僕が毎回出している本は、表紙に文字だけの簡素なもので、所有する喜びが薄いかもなあとも思う。誰かにデザインとかやってもらいたい。
Toughのメンバーは三人とも疲れていたので、終わったらまっすぐ解散した。なにはともあれ完売してよかった。

12/7 大滝のぐれさんと池袋で飲む。タイ料理に行き、バーに行き、最後は公園で話した。文フリの話から学生時代の話まで、いろいろ話した。小説を書いている仲間は本当に少ないので、これからも仲良くしてほしい。

12/8 未来さんと渋谷で飲む。二軒回ったが、ほぼずっと「コミュニケーション」の話をしていた気がする。未来さんはけっこう変な人なのだが、その「変さ」の言語化能力が高いところがおもしろい。他人の「変さ」への洞察力も鋭いので、おれの話すことに対して「ん?」と思われてないか、心配。

【12/9〜12/15】
12/13 Ryoji Ikedaのライブ。そこまで熱心なリスナーでもないのに、ノリで行ってみたらめちゃくちゃよかった。身体性を持ったビートミュージックとでもいうのか。反復の中から生まれる差異を見出す快楽に満ちた聴取体験だった。

12/14 Tough読書会。課題図書はブラム・ストーカー『ドラキュラ』。なんか『ドラキュラ』感あるのでは、という理由で、早稲田と神楽坂の間にある草間彌生美術館に行った。草間彌生美術館は個人的には全然よくなかった。というのも、建物が5階建なのだが、各フロアがかなり狭くて窮屈なのである。絵画も、ワンフロアの一つの壁に10点以上もびっしり所狭しと並べられており、非常に息苦しい。最終的に5階というか屋上の大きな黄色いカボチャの横でピースして写真撮れれば観光客的にはOKみたいな、とても鑑賞を楽しめるような場所ではないと感じた。
読書会は楽しかった。最後に雑談の中で、ある著名な批評家と、新進気鋭の批評家の間で起きたビーフについて語り合って、それもよかった。僕としては概ね新進気鋭の批評家の肩を持つ立場であるが、まあこんなゴシップにかまけてないでちゃんと著作を読まなければならない。

【12/16〜12/22】
12/16 mixi2が唐突にリリースされる。文字がデカくできたり、リアクションという機能があったりして、おもろい。真面目なことを話すような感じでもないのがとてもよい。みなさんもぜひ。

12/17 自分がどんな音楽を通ってきたのかをプレイリストにまとめた。なるべく「イキリ」なしで選んだのでバンプとかエルレとか入ってるし、マルーン5とかも入ってる。選ぼうとする段階で自分がSlipknotとかKornとかSystem Of A Downみたいなニューメタルをよく聴いていたことに気づき、泣く泣くKornを外したりした。ニューメタルばっかになってしまってもあれなので。

12/22 M-1を観た。真空ジェシカがファイナルラウンドに残ったのが嬉しかった。
おれはジョックロックをBLとして見ている。

【12/23〜12/29】
12/24 手軽にさっと読めるようなものをネット上に上げたいなあと思い、「メリー・クリスマス」という掌編小説を書いてみました。
いかがでしたか?
自分のフォローしてる人がなんらかのリリースをしたときはなるべくチェックしたいと思っているが、全部を追いきれているわけじゃない。
なので、今回読んでくれた方はありがとうございます。またなんか出すことがあると思いますが、気が向いたらぜひ……。

12/27 友人と荻窪で飲んだ。文フリで出した『ふにくん三十一歳 その他の短編』の感想を聞かせてくれた。表題作が一番おもしろいと言ってくれた。
「あなたはだめだった」という、よくない男性と付き合っている女性の話も収録されているのだが、それよりも「ふにくん」の方が「他の誰にも書けない」という点ですぐれていると評価してくれた。
「自分はけっこういい年なのにまだまだいろんな苦悩や葛藤に苛まれている」という話をすると、「それも今だけかもしれないから、書けるうちに作品にしておいた方がいい」と言ってくれた。年々、年齢に見合わない未熟さみたいなものが、気になってしまうのだが、逆にそれを書いた方が面白いのかも、と希望を持てた気がする。
友人は婚約中で、近々入籍するのだが、着実にライフステージを進めていて、焦る。おれは遥かに手前のところでごちゃごちゃやっている。でもそれこそが自分の持ち味なのかもしれない。

12/29 渋谷のBunkamuraル・シネマで、相米慎二『お引越し』を観る。おもしろかった。そのあと新宿の伊勢丹でおしゃれ用に指輪を購入した。

【12/30〜12/31】
12/31 漠然とした焦燥感に駆られて、多少文章を書くなどした。テレビ等は何も見ずに年を越した。

【読んだ本】
・済東鉄腸『クソッタレな俺をマシにするための生活革命』:引きこもりでありながらルーマニア語の小説家になったという著者による、自身の生活を見直すエッセイ。フェミニズムやクィア・スタディーズを経た上で、シスヘテロ男性である著者が「男らしさ」を考えるという本だ。
シスヘテロ男性が語る男らしさ、と聞くだけで身構える人もいると思う。ネットでは、単にモテないくらいのことを「弱者男性」と称しそれを盾に女性を攻撃しているような連中も多くいるからだ。この本はそういったルサンチマンとは一線を画す。
しかし、最近よくある「フェミニズムを学んで反省した男性」というポジションにも陥っていない。ぜひご一読あれ。

・済東鉄腸『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』:上記と同じ著者のデビュー作。著者の豊富な読書量、映画の鑑賞体験が、知的な洞察を導いている。好奇心と行動力によって著者がどんどんあらたなステージへと向かっていくのが、読んでいて楽しい。

・周司あきら『トランスジェンダー男性によるトランスジェンダー男性学』:済東鉄腸の『クソッタレな〜』の種本として紹介されている。男性について語るとき周縁に追いやられてきた「トランス男性」に目を向けることで、男性の新たな可能性について、問題提起がなされている。性別違和の解消のためトランスとして移行することで、著者は男性としての特権を得ることとなる。そうなるとフェミニズムと共闘することはできなくなる。そこで新たな「男性学」を打ち立てようとする姿勢がすごい。

・源河亨『美味しいとは何か』:食についての本と思わせて、美学に代表される哲学の根本を語る良著。なんなら、「テクスト論」批判として読むこともできる。まっさらな状態で芸術に触れるよりもちゃんと知識を学ぶのが大事ですよという話。

【まとめ】
今年はわりといろんなことがあった気がする。自分は小説をはじめとするさまざまな文章を書く人間なんだ、というアイデンティティの芽生えがあったと思う。いまのところは、ひたすらお店に商品を並べるだけの日々が続くことにはなるが。
いろんな人に会って、刺激を受けたりもした。来年もまた新たな出会いがあるといいな。
なにが自分にとっての幸福なのかわからないまま、すごい勢いで歳を重ねてしまう。
2025年はターニングポイントになるような力の入った作品を生み出す必要を感じている。いつまで小説とか創作活動のことを考えていられるのか、わからないから。そういうことを「卒業」していく人々も多い。残された時間が少ないというか、走り出すのが遅すぎた。本当に頑張りたい。

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