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お菓子の国の住人はとにかく褒め合う。 「あなたの頭の上のチョコレート、とってもツヤツヤね!」 「君の襟のデコレーションもとても華やかで素敵だよ。」 彼らは相手のこだわりを見抜いて、とことん褒め合う。それが挨拶がわりにもなっている。 なぜかって? 毎日毎日、自分の生地の材料やデコレーションの美しさにとってもこだわっているから、相手が何にこだわっているかなんてすぐピンときちゃうのさ。
母が透明な時計を買ってきた。 確かにカチカチという音がするが、まるで見えない。 どうして透明な時計にしたの? などとは聞くよしもない。母は透明な家具を集めるのが趣味で、家中が透明なのだから。 透明な壁に透明な画鋲を刺した母が、透明な時計を持ち上げて壁にかけた。ことり、と音がしてどうやら壁に上手くかかったらしい。 夕日に照らされた時計は確かにそこにあるように見える。カチカチと軽快な秒針の音が我が家に加わった。 まぁ、今が何時かは分からないんだけどね。