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来訪者

今年の夏は、初お目見えの虫たちがたくさん家の周りにやって来ました。名前を調べてみました。ショウリョウバッタの雌(日本で最大のバッタだそうです)にクビキリギリスの幼虫、それにツチイナゴの幼虫。こちらは黄緑色のプニプニした体で、新種かと思ってしまうほど見慣れない様子をしていました。生まれたてのグミ!といった感じです。そして驚くほど小さな小さなコオロギも見ました。赤ちゃんはあのように小さいのですね。確かに毎年此処で生まれていたオオカマキリも赤ちゃんは小さかったです。

そしてなんと、立派なカブトムシの雄がやって来ました!といってもカブトムシは家の玄関までたどり着いて、すでに息をひきとっていました。艶々の翅の立派な美しい姿でした。触ったのは生まれて初めてかもしれません。さらに瀕死のアブラゼミもやって来ました。窓の外でバッサ!という音がしたので見ると、窓際に茂っているルリマツリに逆さにつかまっていました。そしてしばらくしてまたバッサ!という音がしたので見ると、下の植木鉢に落ちていました。仰向けになるのを直しても直してもひっくり返るので、そのままにしておいたらいつの間にかいなくなっていました。さらにレモンゼラニウムの枝にアゲハチョウの蛹を見つけましたが、翌日には茶色く変色して羽化しませんでした。羽化するところを見たいと家に入れたからでしょうか?申し訳ない氣持ちになりました。

此処は生まれ来る者と、人生を終えて逝く者が出入りする場所なのかと思うほどでした。そういえば、ショウリョウバッタが現れたのはちょうどお盆でした。三日間毎日現れて、知らずに側を歩いては、毎回突然の高ジャンプに驚かされました。アブラゼミは以前、夜中に玄関の前で鳴くのでドアを開けたら、家の中に入って来たことがありましたが、それほど観察もしないまま翌日飛んで行ってしまいました。今回は目と目の間に赤い単眼が3つあること、翅脈は黄緑のような美しい色をしていること、そして翅が透明ではなく茶色をしているのは、世界的にも珍しいのだということを知りました。さらにアブラゼミの翅は、逆さになっていると蝶の翅のように見えるということにも氣づきました。

今年は色々な昆虫が出入りしているようで、てっきりこの場所にとあるポータルでも開いたのかと思っていたら、この夏は市が所有している近くの土地の木々が伐採されていて、ある日突然丸坊主の丘になっていることに氣づきました。それが原因でいつもはそこで暮らしていた昆虫たちが、こんな小さなスペースにわずかな緑を求めて避難してきたのだとわかりました。以前近くに住む友人が、友人宅の近隣の木々の伐採があり「鳥が来なくなって氣持ちが沈んでいる」と連絡してきたことを思い出しました。彼女は数日泣き暮らしたそうです。繊細さんです。私も丸坊主の景色を見て一瞬落ち込みましたが、なんとなく家の周辺のわずかなスペースの緑たちと、あの切られた木々たちは植物界では繋がっていると感じられて、すぐに氣を取り直したのでした。前向きさんです。

自分が注目したことを見聞きする・体験するこの世界では、それぞれがそれぞれのドラマを観ています。私の世界ではこの夏の数日、虫たちが大騒ぎで氣にせずにはいられなかったのです。このように文章にしなければ存在しないも同然の小さな世界…。因みに相当の木が無くなったにもかかわらず、鳥のさえずりが消えることはありませんでした。昨年より増えている氣さえします。現状は、それほど悪くないと知らせているかのように。

意にそぐわないことがあった時に、氣を取り直すことを意識することは重要です。自分の「氣」を取り戻す、本質でいるということ、安心で平和で軽やかであるということは心地良いものです。そしてそのエネルギーは周りにも伝わるものなのです。

では、また。ごきげんよう。


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