使用済み紙おむつ由来の「RefFパルプ」がユニ・チャーム社内最高賞に!いま求められる、社会課題を解決するアイディアとは?
ユニ・チャームでは、毎年社内の優れた発明を選び、その功績をたたえる「発明報奨制度」を開催しています。
なんと!今年、私たちRefFプロジェクトの使用済み紙おむつから生まれた「RefFパルプ(※)」にまつわる発明(特許)が、その中でも最高賞の「ゴールド賞」に選ばれました!!
※ユニ・チャームでは使用済み紙おむつから取り出した「リサイクルパルプ」を「RefFパルプ」と呼んでいます。
今年、発明報奨制度は大きく変わりました。
この記事では、制度改定の大きな背景である、ユニ・チャームが目指す“共生社会の実現”について、高原社長のコメントとともにご紹介。知的財産本部のメンバーと、RefFプロジェクトメンバーの開発チームの声もあわせてお届けします!
使用済み紙おむつ由来の「RefFパルプ」が、ユニ・チャーム社内「発明報奨制度」の最高賞に!
これまでの発明報奨制度は「主に会社の事業利益に貢献している」ことが重視されていました。
ですが、今年から新たに「社会課題の解決につながる技術の開発」という評価基準が新しく加わったんです!
使用済み紙おむつ由来の「RefFパルプ」を使用した「RefF紙おむつ」は、まだ一部の地域でしか売られておらず、事業規模がとても小さい商品です。
それでも、ゴールド賞を獲得できたのは、今回、評価基準が改定されたからなんですよ(実は、RefFプロジェクトのメンバーにとっても嬉しい驚きでした…!)。
「社会的に意義のある開発活動を推進していただきたい」高原社長のスピーチに込められた期待
なぜ、今回、評価制度が変わったのでしょうか?
その理由が、発明報奨授賞式典の高原社長のスピーチでわかりました。
高原社長「2004年からスタートした発明報奨制度ですが、20回目の節目となる今年、大きく改定しました。
その目的は、これまでの“事業利益に貢献する発明”という点に加え、“消費者が求める価値につながる技術”、“社会課題の解決につながる、独自性の高い技術”を評価することです。今年は改定を踏まえ、3チームのゴールド賞が選出されました。
今回の改定は、独自性のある技術を奨励することを主旨としています。
その理由は、独自性のある技術が真にお客様の満足につながるものである、この点を重視するからです。皆さんには、その商品でしか得られない価値につながる技術の開発を重視し、より一層、社会的に意義のある開発活動を推進していただきたいとあらためて思っています」
知的財産本部のメンバーが語る「未来を見すえた“社会課題につながる技術の開発”」
発明報奨制度は、知的財産本部が運用しています。本制度の改定を担当した渡辺さん、そして「RefFパルプ」の特許出願を担当した、辻さんにお話を聞きました!
ー発明報奨制度と、今回の改定について教えてください。
渡辺さん「発明報奨制度は、ユニ・チャーム社内でその年に取得した特許を事業利益や技術の独自性など、複合的な観点から評価する制度です。
これまでは“事業利益に貢献する”という点が大きく評価されていましたが、今回からは将来への期待も加味して『社会課題への解決につながる技術』も評価されるように改定しました」
ー今後、この制度をどのように活用されていきますか?
渡辺さん「ひとつは、公平な評価を通じた、社員のモチベーションアップがあります。もうひとつは、事業を通じて、社会課題の解決につながる発明活動をうながす制度づくりを重視しました。例えば、開発のアイディア時点で、環境フレンドリーな素材を使用するなど、さまざまな社会課題や環境課題を意識していただくというねらいがあります」
―ゴールド賞を受賞した「RefFパルプの特許」は、どのような点が評価されたのでしょうか?
辻さん「使用済みの紙おむつから取り出したRefFパルプが『リサイクル前よりも綺麗になっている』という点で、非常に社会的な価値、また技術的な価値が高いものになります。また、“水平リサイクルができるのは、唯一、ユニ・チャームだけである”という点でも認められたと思っています」
ー辻さんは「RefFパルプ」の特許出願を担当されています。今回、担当のお2人が受賞されていかがですか?
辻さん「開発チームの小西さん、平岡さんとも、受賞を非常に驚かれていて、平岡さんから知的財産本部に『間違いではありませんか?』と確認の電話があったぐらいです。
お2人とも、実験規模が小さい段階から、コツコツと真摯に実験を続けて、鹿児島県志布志市での実証実験にまで進まれました。今回、受賞されて本当によかったと思いますし、これから、社会の中で紙おむつのリサイクルが広まっていくのが理想です」
開発チームに聞く「“RefFパルプ”の特許」によるゴールド賞受賞の喜びと、未来への想い
紙おむつのリサイクル技術の開発責任者である小西さん、設備開発担当の平岡さんに、今回の「RefFパルプ」の特許にまつわる受賞についてお聞きしました!
ー今回、ゴールド賞を受賞した感想はいかがですか?
小西さん「これまでは事業利益の高い商品の特許に与えられる賞でしたので、受賞の連絡を受けたときには『何かの間違いではないか』と思ったぐらいです。受賞は開発者として励みになりますし、光栄です。社内で紙おむつの水平リサイクルの認知度が高まるきっかけにもなりました」
平岡さん「評価制度が変わったことを知りませんでしたので、非常に驚きました。『社会課題の解決につながる技術』という点での評価は、ほかの開発者にとっても励みになるのではないでしょうか」
ー「RefFパルプ」にまつわる特許について教えてください。
小西さん「ごく簡単に言うと『使用済みの紙おむつからパルプを取り出して、そのリサイクルパルプを衛生用品に使用できるまで、きれいにする技術』と『RefFパルプ』自体の特許になります」
ー技術面ではどのような苦労がありましたか?
小西さん「もともと、紙おむつは厳選された非常に良い素材で作られています。使用済み紙おむつから取り出したパルプを“使用前よりもきれいに、しかも安全な状態で戻す”ことが非常に難しかったですね。最終的にオゾン処理技術にたどりつくまでに、数十種類のトライアンドエラーを繰り返し、3年近くかかりました」
ー小西さんによるビーカー規模での小さな実験から、設備開発の平岡さんがメンバーに入られて、テスト装置の開発をされたとか。
平岡さん「これまでに経験のないことでしたので、どのような設備が良いのかを探るために、さまざまな実験機を組み、改良することに時間と労力を費やしました。設備開発の際にも、リサイクルパルプを安全にきれいにするために、数十種類の薬品を試していきました」
―今後の意気込みを教えてください。
小西さん「持続可能な社会の実現のためには、今ある資源と経済活動がバランスよく循環していかなくてはいけません。既存のごみ処理のインフラと共存する形で、紙おむつの水平リサイクルが当たり前となる社会の実現を目指していきたいですね」
あとがき
ユニ・チャームは「共生社会」の実現に向けて、環境問題や社会課題の解決に取り組む『Kyo-sei Life Vision 2030』という目標を掲げています。
高原社長の「“社会的に意義のある技術”の開発活動を推進していただきたい」という言葉、また、知的財産本部の渡辺さんが取材の中でお話しされていた「人々の価値観だけでなく、法律の解釈も時代と共に変化していく。時代の変化に寄りそって、共生社会の実現に貢献するよう制度を考えていく必要がある」という言葉は、『Kyo-sei Life Vision 2030』につながるものだったんですね。
社内の制度が変わった今年。開発チームが「RefFパルプ」関連の特許を取得した嬉しさがある一方、これからの社会でメーカーとして、環境問題、社会問題に対する責任をあらためて感じました。