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リモートでもその場にいるようなコミュニケーションを。海外の「テレプレゼンスロボット」活用事例

遠隔操作を通して、人々との交流を可能にするロボットを「テレプレゼンスロボット」といいます。Zoomアプリの入ったiPadに遠隔操作可能な足が生えたもの、と考えると分かりやすいかもしれません。

遠隔操作による移動が利益をもたらすコミュニケーションの場で活用が期待されています。例えば、病気で通学が難しい生徒による教室での利用や、遠隔地にある不動産内覧での利用などでの活用が模索されています。

現在、テレプレゼンスロボット導入の障壁となっているのは高いコスト、利用者へのトレーニング、社会への浸透の低さだと、Webメディア「Robotics Business Review」チーフエディターのKeith Shaw氏は指摘しています

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、Zoomなどのオンラインミーティングツールは2020年以降急速に普及しています。つまり、障壁であった人々が遠隔でのコミュニケーションツールを使い慣れていないという点は解消されつつある可能性が高いといえます。

実際にどのようなシーンで利用することができるのか、まだイメージできない方も多いかもしれません。今回は、海外の活用事例をご紹介します。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。

また弊社では最新ロボットの導入支援も行っております! 今回ご紹介した製品に興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

学校へ行けない生徒のクラスに参加に利用

Double Robotics社のテレプレゼンスロボット「Double」は、2014年より継続的に病気などの事情で学校へ行くことのできない子どもたちの授業参加手段として活用されています。

▲Doubleを操作するJasmine Fatmiさん

米国メーン州のSebasticook Valley中学校は、病気のため学校に来ることのできない生徒に向けてDoubleを導入しました。生徒のJasmine FatmiさんはDoubleを自宅から操作することで、今までほとんど行けなかった授業に毎日参加。彼女の両親や教師は、Jasmineさんがクラスメイトとの交流ができるようになった点も高く評価しています。また、移動やズームなどの操作を行える自由さがある点も、Doubleの大きな利点だと彼女自身が語っています。

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▲Doubleを使い、授業に参加するBrookfield高校のJames Humphreysさん Double公式サイトより

同じく学校に来れない生徒のためにDoubleを導入したBrookfield高校は、「生徒の間で広く受け入れられている」とインタビューで述べています。初日はぎこちなかったといいますが、時間の経過とともに慣れ、他の生徒たちもDoubleを利用する生徒に敬意をはらって接しているそうです。

また、同校の教師がインタビューで「生徒とオンライン上で接したことがなかったから最初は慣れなかった」と述べていますが、コロナ禍で状況は一変しました。当時以上に周りが慣れるのは早いかもしれません。

医師のリモート診察の質向上に

米国では、電話やWebツールを用いたリモート診療は頻繁に行われています。しかし、入院患者のリモート診察となると、「セッティングに時間がかかる」「患者の様子を見ることが難しい」といった課題があります。

これらの解決のために、テレプレゼンスロボットを活用する事例が生まれています。リハビリや長期療養のための施設を運営するAzria HealthはOhmnilabs社の「Ohmni Telepresence Robot」を試験導入しました。

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▲施設内で稼働するOhmni Telepresence Robot Azria Health Newsroomより

実際にテレプレゼンスロボットを利用してリモート診療を行った医師のNatalie Manley氏は、「その活用の可能性は無限大だ」と語っています。

今までのiPadなどを利用したリモート診療だと、セットアップに時間がかかったり、技術的なトラブルが起きたりといった問題がありました。テレプレゼンスロボットを使うことで、現地介護スタッフ側はロボットの電源ボタンを一度押すだけで済むようになったそうです。

電源をつけたあとは、医師が実際に施設内にいるようにロボットを移動させ、診療を行うことができたとのこと。医師が新型コロナウイルスの濃厚接触者となり、現地に入ることができなくなってしまった際には、このロボットが特に役立ったそうです。今後は、スムーズな走行のための導入環境整備(手動ドアの解消など)、ロボット本体の走行能力の向上(段差の走行を可能にするなど)が重要になってくるかもしれません。

不動産内見のリモートツアーに

不動産管理を行うオーストリアのSIGMA社はリモートでの不動産内見を提供するため、Ava Roboticsのテレプレゼンスロボット「Ava」を導入しました

Avaを利用することで、顧客は遠隔地の物件の中を自由に閲覧することができます。また、不動産会社や管理人と会話を行ったり、気になる部分をズームしたりすることで、リモートでも詳細に物件について理解ができます。

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▲「Ava」でリモートツアーを行う様子 Ava Robotics プレスリリースより

IMF(国際通貨基金)の発表によると、SIGMA社のあるオーストリアも住宅価格が高騰している国のひとつです。住宅ローン金利の低水準に加え、在宅勤務の増加による住宅需要の高まりが原因とのこと。こうした住宅獲得競争の中、SIGMA社はAvaの導入により、遠隔地からでもすぐ物件を確認できるようにすることで、顧客体験の向上を期待しています。

一部社員がテレワークを行うオフィスでの活用

ロボットを使わなくてもテレワークにはパソコンのオンラインミーティングツールで十分なのでは?と思う方も多いかもしれません。Doubleを導入したRED Interactive Agency社のリモート勤務社員も、「実際に利用してみるまでは半信半疑だった」とインタビューで語っています。しかし操作してみると、自由に動きながらズームイン・アウトなどで視界を変えることができ、まるでオフィスにいるように働けたことに感動したと述べています。

また、複数のユーザーでDouble1台を共有した使用もできるそうです。会議室のような予約制のシステムが搭載されており、必要な時に必要な社員がテレプレゼンスロボットを使用することができる点も便利だと述べています。

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▲オフィスを移動するDouble Double Robotics社プレスキットより

筆者もオフィスで行われている打ち合わせに一人だけZoomで参加したことがあります。前提はオフィス現地という環境のため、Zoomでは音が聞き取りづらかったり、ホワイトボードが見にくかったりといった問題がありました。かといって、少数のリモート社員のために「ホワイトボードを使わないでくれ」「もしくは全員オンラインにしてくれ」と言うのもなかなか難しいものがあります。その点、Doubleを使えば、自分でズームインができたり、聞き取りやすい位置まで移動できたりします。在宅勤務、オフィス勤務双方の利点を損なうことなく欠点をカバーできるツールだと感じました。

さて、様々な業界で活躍が期待されるテレプレゼンスロボットですが、導入費用はいくらぐらいなのでしょうか? Double Robotics社のテレプレゼンスロボットは4,000米ドル(およそ46万円)から、Ohmnilabs社は3,000米ドル(およそ35万円)からのお値段でした。

数百万円することも珍しくないサービスロボット業界では比較的安価といえますが、費用に見合うかどうかはその利用方法次第かもしれません。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! 今回ご紹介した製品含めご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。

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