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「金色のキティちゃん」の、はなし。#4

むかし、幼稚園生の頃。
近所に住む同い年の女の子、Sちゃんという友達がいました。

Sちゃんとは同じ体操教室に通っていて、
よくお互いの家も行き来して、
ママ同士の仲も良く、一緒の時間を長く過ごしていた友達でした。

Sちゃんには2つくらい年の離れた弟がいて、
ゲームをするにも何をするにも、
3人で仲良く遊ぶようにと、よく、ママたちから言いつけられていました。

言いつけられた、というのも、
やっぱり私は、Sちゃんと2人で遊びたい気持ちが強かったので、
日頃からわかりやすく、
弟くんを避けるような態度が出ていたようでした。

ある日、Sちゃん一家がうちに遊びに来てくれた日のこと。

当時、私が部屋に大切に飾っていた、
金色の、大きなキティちゃんの貯金箱が、
弟くんがはしゃいだはずみで床に落ちてしまい、
耳が欠けてしまうプチ事件が起こりました。

このキティちゃん、貯金箱とは名ばかりで、
背丈で30cmほどのサイズ感があり、
私の部屋で大きな存在感を発揮していたものでした。

かつ、お店で買ったものではなく、
家電量販店の抽選で、運よく当たりを引いてゲットしたものだったので、
そんな運命的な出会いも相まって、代わりのない宝物だと思って、大事にしていたものでした。

耳の欠けたキティちゃんを見て、
「貯金箱としては使えるからセーフじゃないっ!」と、
大泣きしている私を慰める母は、
動揺しているSちゃんママを、気遣っているようにも見えました。

ごめんね、ごめんね。と、
Sちゃんママがしきりに謝っていたのを、
よく覚えています。


それから、
1ヶ月ほど経ったある日。

19時頃に、突然うちのチャイムが鳴り、Sちゃんママがやってきました。
普段、日が沈んでからうちに来ることはなかったので不思議に思っていたら、
これをYuniちゃんに。と、
大きな赤い箱を渡してくれました。

中を開けてみると、そこには、
私が知っているのとはひと回りサイズの小さい、
金色のキティちゃんがありました。

「なんとか同じものを見つけたかったんだけど、
どうしてもこれしか無くって、ごめんね。。」

そう言いながら、玄関先で頭を下げながら渡してくれました。

子供ながらに、
お母さんって、なんでこんなに凄いんだろう、
なんでこんなに頑張ってくれるんだろうと、
Sちゃんママを見て、そう思いました。

今では、通販サイトで検索をかければ、
一瞬で金色のキティちゃんにたどり着けるだろうし、
中古で出回っているものも、たくさんあるかもしれない。

でも当時、そんなものはもちろんなく、
ショップで買ったわけでもない、抽選の商品を、
色んなお店に足を運んで、
必死に探し出してくれたんだなと思います。


あの時の、Sちゃんママの原動力はなんだったんだろう。

悲しい思いをさせてしまった子に、なんとかもう一度喜んで欲しい、
不満を抱きつつも、いつも弟くんと一緒に遊んでくれる子が、
息子のことを嫌いにならいでいて欲しい

色んな気持ちがあったと思うけれど、
自分の子じゃない子供にも、
これだけのエネルギーをかけて、
金色のキティちゃんを見つけ出してくれたこと。

やっぱりお母さんって、凄い。

もう20年以上前の出来事だけど、
私はずっと、覚えています。


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