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Day.10 よくある腹痛(虫垂炎、胆嚢炎)診断後の診療メモ【総合診療トピックゼミ


<Story>

休憩中、ふと思って先輩医師と話をします。「そういえば、この病院ってすぐの外科手術は対応してないですよね?」『そだね』「虫垂炎、胆嚢炎とかって、大きい病院だと、保存の場合でも外科にお願いってなりますけど、うちも基本転送してます?」『原則そんな感じなんだけど、こういうときは……』

<虫垂炎の手術/転送をどう考えるか>

虫垂炎については、再発の可能性を考えると原則手術で動いてよいでしょう。ただ、手術しないという選択肢もあるのはあるので整理します。

<手術になる虫垂炎>

穿孔している虫垂炎や、膿瘍形成している虫垂炎については
〇バイタルが不安定なら感染ソースコントロール目的に即時手術
〇バイタルが安定なら術者や施設の判断
となりますが、タイミングがどうあれ手術になります。故に、外科対応可能な医療機関に転送でよいでしょう。
また、妊婦や易感染性を認める患者は緊急虫垂切除。
加えて高齢者も、虫垂癌による閉塞の可能性があるため、Opeがよいです。

<手術でなくてもよい虫垂炎>

逆に言えば、穿孔していなくて膿瘍形成もしていない虫垂炎については、抗菌薬のみでの対応も選択肢となります。しかし……
〇初回手術を回避しても、繰り返す可能性が高い。
〇糞石があれば、そもそも保存的加療が失敗しやすい。
など、デメリットがあることが前提となります。

<虫垂炎の手術/転送の動き方>

これらを踏まえると、下記の対応が良さそうです。
1)まず、患者さんに耐術能があるかを判断。
→ここで手術が難しいと判断したら、転送する意味はないでしょう。抗菌薬加療での対応になります。
2)手術をお勧めする形でご説明する。
→現状、虫垂炎への対応としては、タイミングはさておき手術加療がベストと考えられます。従って、患者さんが手術が絶対に嫌とかでなければ、手術の方針がよいでしょう。また、ここでご説明する際には、「手術になる虫垂炎」か「手術でなくてもよい虫垂炎」かでお勧めする強さが変わってきます。
3)保存加療になったら、リスクを説明の上、経過を追う。
→手術になれば、転送となります。一方、保存加療の方針になった場合には、リスク(繰り返す可能性も含めて)や結局手術になる可能性もご説明の上、抗菌薬を使用して経過を追います。

<胆嚢炎の手術/転送をどう考えるか>

胆嚢炎については、虫垂炎ほど深く考えずに、耐術能があれば手術をお勧めの上、同意を頂ければ外科対応可能な医療機関に転送でOKと思います。というのも、胆嚢炎では抗菌薬で散らす保存的加療が、原則的な治療とは言いにくいためです(原則Opeです)。

<Column>

◇内科医と外科医は画像を見るときの目的がどうも違うらしいです。というのも、内科医は診断をつけるために画像を見ますが、外科医はどう手術するか、手術ができるのかを判断するために画像を見る生き物だそうです。言われてみれば確かにそうですね。だから、診断を求めて外科医に画像を見せるというのは、外科医からすると違和感があったりするそうです。
◇手術適応を非外科医が判断できるべきか、そもそも判断すべきかというのは難しい問題です。ただ、外科がパンクしそうな(早晩、日本はそうなっていくでしょう)地域の病院なんかでは、外科医の体力温存は極めて優先度の高い事項です。そうなってくると、手術適応でない患者さんはなるべく外科に回さずに完結させるという意味で、非外科医が手術適応を知っていることの意義は大きいのではないかと感じます。

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