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Day.7 高血圧症に潜む原発性アルドステロン症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<原発性アルドステロン症の特徴>

◇副腎皮質からのアルドステロンの自律分泌・過剰分泌が病態。
◇アルドステロンの作用で……
1)Naが体内に貯留して、高血圧に
2)血管、腎臓、心筋にダメージを生じる
→つまり、高血圧の背後にいるのであれば、見つけ出して介入したい疾患です。血管、腎臓、心筋にダメージって嫌じゃないですか。
そしてそもそもに、2次性高血圧の原因としては最多です。

<スクリーニングする>

採血で下記を調べます。

〇PAC:アルドステロン濃度:pg/mL
〇PRA:血漿レニン活性:ng/mL/h

採血はできることなら、早朝空腹時30以内、安静臥床後がよいです。
また、検査に影響の少ないCaブロッカーや、αブロッカー以外の降圧薬をストップした状態で採血したいところです。但し、あくまで理想論です。

そして、下記に該当するか確認します。
ARR:アルドステロン レニン比=PAC/PRA
ARRが200以上(つまり、アルドステロンがたくさん出ているのにレニンが出ていない)かつ、PACが60以上(アルドステロンの絶対量が多い)であることがスクリーニングの判定基準です。

<スクリーニングにひっかかったら>

下記の負荷試験のうちいずれかで、確定診断を行います。
◇カプトプリル負荷試験
◇フロセミド立位負荷試験
◇生理食塩水負荷試験

<アルドステロン症が確定したら>

サブタイプとして多いのは
1)アルドステロン産生腺腫
……要するに片側性にホルモンをつくる腺腫がある状態。
2)特発性アルドステロン症
……要するに両側性の副腎過形成
があります。
◇必要なら手術するぞという患者さんに対しては、副腎静脈サンプリングを行い、片側性か両側性かを確認して診断します(片側性なら病側副腎切除です)。
◇逆に、手術はしないという患者さんの場合には、片側性だろうが両側性だろうが薬物療法になるため、副腎静脈サンプリング自体を実施しません。(但し、手術した場合にでも降圧薬の継続が必要になる場合が多いです。)

<手術はなんのために行うのか>

さて、アルドステロン産生腺腫であることが確定し、手術(片側副腎摘出術)を行う運びになりました。と、この場合、手術はなんのために行うのでしょうか。
腺腫(良性)と評価しながら、サイズが大きいとか、画像上悪性が否定しきれないとか、一般的な腫瘍に対して行うという側面もあります。
但し、今回の相手であるアルドステロン産生腺腫は、機能性腫瘍です。これがある限りはホルモン過剰状態が続きます。従って、内分泌系の安定化、コントロールが手術のメイン目的という場合が多くなります。

<そして内服コントロール>

基本的には、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)を中心に使用します。原因となっているホルモン系をそのまま抑える感じですね。
例えば
スピロノラクトン錠 1日1回 50~100mg

<Column>

さて、高血圧から原発性アルドステロン症を疑ってスクリーニングを行い、PAC:アルドステロン濃度とPRA:血漿レニン活性を調べたら、次にすることはなんだったでしょうか?そうです。比をとることです。この、比をとるというのが実は曲者でして、単独の検査値としては別に問題なくね?と思っても、比をとってみると引っかかることがあります。お気をつけ遊ばせ。

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