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Day.28 甲状腺機能低下症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<Story>

 次の患者さんの事務メモを見ると、「定期診察、前回採血結果説明」と書かれている。さて、前回採血の結果は……。ん?TSHがめちゃくちゃ高い!けど、FT4は正常範囲か。前からずっと採血はこんな感じの方なんですね。変わりないっちゃ変わりないですけど、これってなにかする必要あるっけ?

<甲状腺機能低下症の鑑別>

-原発性(つまり甲状腺に原因がある)-

◇橋本病(慢性甲状腺炎)→最多
◇無痛性甲状腺炎の低下期
◇医原性(甲状腺摘出後、ヨウ素使用後など)
◇薬剤性(アミオダロン等)
など

-中枢性(つまり下垂体に原因がある)-

◇下垂体機能低下症
→手術やら、腫瘍やら、炎症やら、なんでも。
◇TSH単独欠損症

<原発性甲状腺機能低下症はさらに分類>

◇顕性甲状腺機能低下症:FT4⇩、TSH⇧

◇潜在性甲状腺機能低下症:FT4:OK、TSH⇧
→潜在性甲状腺機能低下症では、症状があるか、70歳以下でTSHが10μU/mLを超えているかでなければ、経過観察で問題ない。

<橋本病を捕まえる>

抗TPO抗体:甲状腺ペルオキシダーゼへの抗体
抗Tg抗体:サイログロブリンへの抗体
どちらかが陽性であれば、橋本病(慢性甲状腺炎)と診断できる。
甲状腺ペルオキシダーゼも、サイログロブリンも、甲状腺ホルモンを合成するのに必要な物質である。

<内服を開始するその前に>

◇無痛性甲状腺炎後等による甲状腺機能低下など、異常が一過性の経過をたどると考えられる場合には、内服での甲状腺ホルモン補充を行わず、1~2か月後に甲状腺機能を再評価する。

◇ヨウ素過剰が疑られる場合にも、ヨウ素の摂取制限を行って、1か月後に甲状腺機能を再度評価する。

*アミオダロンの副作用で甲状腺機能が低下したと考えられる場合には、”アミオダロンは辞めずに”内服でヨウ素の補充を行う。

<内服と目標値>

◇チラージンSを1日1回25μg(or12.5μg)から開始。
◇下記の目標を目指して、1週間に25μgずつ増量していく。

-TSHの目標値-

◇非高齢者:正常範囲内に
◇高齢者 :4~6に

*甲状腺全摘後、妊婦については、対応が異なります。一応。

<Column>

 個人的には、内分泌内科以外で甲状腺機能低下症を最も気にしないといけない領域は、精神科だと思います。甲状腺機能低下症の症状は精神系統にもおよび、無気力を認めた場合、うつ病であると判断を誤る可能性は十全にあるように思われるからです。精神科って、大変ですよね。究極の除外診断という感じがします。身体疾患を全部検討して除外し、初めて精神科!みたいな。

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