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ベンチをつくるなかで考えたこと(ベンチ設計・施工:木村七音流より)

作品の舞台となった7つのスポットはすべてベンチなど、座れる環境を提案しています。そのうち2ヶ所は既存のベンチがないため、オリジナルのベンチをつくって設置するという計画を立てました。
ベンチの設計を担当したのは、若手建築家の木村七音流さんと下田悠太さん。
中心になって設計した木村さんが作業のなかで考えたことを教えてもらいました。設計意図を知った上で実物を見ると、きっとまた違った味わいがあるはずです。
(阿部)


モデル:高橋由佳(uni)

墨田区役所うるおい広場のベンチ

  • 短期間の設置で、割と広い広場の端に置かれるということで、興味を持ってもらえるためのいい意味の異物感と、同時に周辺に調和するような在り方を目指した。

  • そのため、極力”ベンチ的でない”オブジェクトをめざした。水辺だったので、波のイメージがあった。

  • 広場のスケール感がおおらかだったので、そのスケール感にそぐうようななるべく大きな座面のあるベンチにしようと思った。

  • 出来るだけ方向性も規定しないものにしたかった。いろいろな方向からアクセスでき、複数人でもいろいろな関係で座れるようにした。

  • ベンチ上で寝ることができないようにバーを付けることが求められたが、なるべく排除アート的な印象にならないように、そのオブジェとしての意匠的な要請から出来ているような波線になるようにした。また寸法としてギリギリ寝られないようにしながらもその中で最大限ゆったりしたものにしている。

  • わりとハードな仕様に耐えるようにずっしり作る必要がありながら、なるべく軽やかな印象になるように意識した。

  • 夜は楕円の天板だけが浮き上がっているような不思議な体験を目指した。

  • 勝海舟の銅像を掘り出すという話だったので、「おおきな下駄が突然出現した」というようなイメージをしながら作った。

設計図
製作途中
本を読んだりギターを練習している人を見ることもあった

すみだリバーウォークのベンチ

  • 隅田川をわたる体験とリンクするように橋的なたたずまいを目指した。

  • ここでのラジオの内容が、橋に恋する女性ということだったので、すこし生き物感のあるような(人というよりは動物だが)フォルムにした。

  • 橋上の公共空間に置かれるということで、ずっしりとした安心感を持たせつつ、意匠的には重苦しくならないように抜けを作った。

  • とても長い通路なので、通路に並行するような流れを意識した。また、遠くから見たときにあれはなんだと目を引くような立面(側面)の作り方を意識した。

  • 橋自体が規則的な部材の構成をしているので、規則的なリズムを持たせるようにした。

  • 脚があって天板があるというようないわゆるベンチ的なつくりにしたくなかったので、側面も天面もワンバイフォーという素材だけで等価につくった。

  • (発信向きなポイントではないかもですが)なるべくヘルプに来てくれた人でも簡単にできる工法で、しかしDIY感が強くないものにしたかった。

設計図
1×4をたくさん重ねて固定している
両サイドから座ることもできる

(ベンチについてのコメント:木村七音流)

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