母になります。
クリームパンみたいな手。
触ると壊れてしまいそうな脆さを漂わせながら、ぶんぶんと振り上げる腕には吹っ飛ばされてしまいそうなほど力強さを感じる。
赤ちゃんって可愛い。
赤ちゃんって可愛い。
そう思えるようになったのは一昨年くらいから。私の結婚式に来てくれた友人が、妊娠していたことを知ったことで「もうそんな歳なんだな。」とぼんやり思うようになった。
主人とは、結婚する前から「子供は2、3年経ってからね」と話し合っていた。そんな提案をしてくれるなんて現実的な人だなと思ったし、私は子供のことなど考えていなかったのだから少し申し訳なくなった。
主人の提案はもちろん受け入れた。私に子供を育てられる気はしていなかったし、30歳手前にして生理不順、月経前症候群に悩まされている女が子供を授かれる気もしなかったから。その気持ちに変化が訪れたのが、友人の出産だった。お腹の大きな彼女を見て、神秘的なことが起こっているんだなと思った。
出産予定日や、男の子か女の子か、そのくらいしか質問を投げかけなかった当時の自分は、やはり出産育児に興味がなかったのかもしれない。どんな旦那さんなのか、夫婦や親との仲は順調なのか、そんなことばかり気遣っていた気もする。
しかし、出産予定が近くなるとやけにそわそわした。女の勘なのか、きっと今彼女は頑張っている気がするぞと思うことがあった。しばらくして出産の報告をもらった時は自分のことではないのに涙がでた。この経験が、妊娠を希望する世の女性たちへの見方を変えた。
もう一人の友人は、社会人になって初めて目にした時から素敵な子だなと惹かれるものがある子だった。出会ったのは今から5年も前のことだ。仕事の縁もあり退職するまで仲良くしてくれた。
すっかりいい歳なので、久しぶりに会って話すことは、ライフプランや仕事の話。その中でも子供の話を聞いた時、私はまた自分の気持ちに違和感を感じたのだった。
子供が欲しい。
その言葉は、その当時の私には全く実感の持てない言葉だった。結婚して2年。あ、私たちも考えないといけないのかな。と思うことくらいしかできなかった。いつでも先を行く彼女には感心する。一生ついていきます。
ライフプランについて学校で学んだことがあった。おそらく義務教育時代のことなので、完全に夢を見るかのような話だ。23歳で結婚して、26歳には子供を産む!なんて言ってたっけ。ごめん私。もう27歳だわ・・と昔の自分に謝った。
しかしなぜか、やはりその友人の出産の時期も、胸がざわつく日が訪れた。その数時間後、出産の報告が来るのだから驚きだ。今度は自分のことのように嬉しかった。
あれから半年。私たちのところに新しい命がやってきた。
それはそれは神秘的なことだと毎日感動がとまらない。毎日変化を感じる。いいことも悪いこともある。不安や喜びがあって大変だけど、今だから感じられること。3年前の私は想像もしていなかったこと。
綺麗な言葉を並べたが、妊娠の始まりは泣くほどしんどい。つわりとホルモンバランスの崩れで気持ちもガタガタである。落ち込みすぎて主人に怒られた。怒ることはないんじゃないかと今でも思うので、きっと一生忘れないだろう。
10ヶ月続くのか、それとも安定期には落ち着くのか、人より早いのか遅いのか、不安でいっぱいになりながらも、毎日をただひたすらやり過ごした3ヶ月だった。世の中のママたちを心から尊敬する。
何気なくSNSを見ていると、自然と妊娠出産関係の情報が集まるようになった。
生まれてきてくれたら、それだけで100点だよ。
その言葉を見たとき、目頭が熱くなった。
もうすでに、私はお腹の子のお母さんなんだ。
できれば元気な姿で生まれてきて欲しいけど、どうか無事に生まれてくれますように。あと5ヶ月、無事に育ってくれますように。
ここ最近毎日かけている言葉は「一緒に大きくなろうね」「一緒に頑張ろうね」である。
安定期に入ったので少しずつ思い出を残していこう。気負わない、頑張らないただの記録として。
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