バイトさんの方が優秀なジレンマ(大阪医科大学事件)

大阪医科大学事件とは、非正規雇用の事務職員が専任職員に支給される賞与が支給されなことに対して「同一労働・同一賃金」を巡って争われた事件のことです。最高裁判例において、非正規雇用に対して賞与を支給しないことに非合理性はない、として結論づいた重要な判例の一つです。

判例の意義

こちらの判例も「同一労働・同一賃金」を語る上で非常に重要なものになっています。判決の根底にある正規非正規の間の差異は「有為人材(確保)論」で説明が付けられました。すなわち、正規雇用の職員は非正規と比べて業務範囲が広く、責任の所在も明確であり、そして何よりも優秀な人材を組織が確保する上では合理的な待遇差であるということです。

文字どおりの賞与

奇遇にも大学にてこうした事件が発生し、そして判決が出された背景には大学における賞与の性質もあるのではないか、と感じました。世間一般の民間企業においては、業績に応じて支給率が決められたり、その人の成績によって配分が変わるなどの、ある意味では賃金的性格を含んでいるのではないでしょうか。しかしながら、大学という職場には成果主義が導入しづらい部分があるので、私の知る限り一律支給が主であるように感じます。

そうすると、民間企業とは違って、文字どおりの賞与(ボーナス)となります。するってーと、業務の内容ではなく、身分によって支給されても不合理はない、と結論づけられたのではないかと思われる訳です。

使えない専任、優秀なバイト

どの世の中でもそうなのかもしれません。しかし大学においてはその傾向は中々に強いものがあります。もちろんみんながみんなダメ社員と言うつもりはありませんが、安定し過ぎている職業だけに、あぐらをかいてしまっている専任職員がいるのも事実です。その中にあって、昨今の臨時職員の方は非常に優秀な方が多いです。

おそらく職場としての人気も高いので、臨時職員さんの中でも険しい競争があるのかもしれません。しかし悲しいかな、より厳しい競争を勝ち抜いてきた専任職員であっても「入職したらゴール」のような高待遇の前にかつての熱量は失われ、ただただ定時を待つナマケモノと化してしまったのかもしれません。おっと、失言。

有為人材論って…

そうなってくると、いよいよ「有為人材論」って何なんだろうと思えてきませんか?

有為な人材を確保するために、正規非正規の差を明確にし(もちろん業務内容や責任などの差もあり)、十分に能力を発揮してもらうことを意図しているはずですが、一度正規雇用になってしまえば、あとはクビになりにくい日本的雇用慣行の下で、それがどれだけの意味を持っているのでしょうか。

ましてや大学職員のように個人の業績があまり関係のない職業においては、刑事事件でも起こさない限りクビにはなりません。この判決を受けて、専任職員としては「妥当だよなー」と最初は思いましたが、よくよく考えてみれば、果たして報われるべき人が報われているのだろうか、と気になるようになりました。

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