最低賃金が上がり、東京は1041円へ

7月14日、最低賃金を全国平均で28円引き上げることとなりました。令和3年7月現在で、東京都の最低賃金は1013円であり、全国平均は902円となっています。前年がコロナ禍を鑑み、見送られたことから、2年ぶりの上昇ということになります。アルバイト等で働く人にとっては良いニュースにも思えますが、大学ではどのような影響があるのでしょうか。

大学の非正規雇用

大学には専任(正規雇用)の他、色々な雇用形態で働いていらっしゃる方がおられます。社会人アルバイト、学生アルバイト(TA、SA)、任期付嘱託職員、部活動指導者などなど今回の最低賃金に関係するところでいくとこのような方々です。学生アルバイトについては、奨学的性格が強いためやや実態は異なるかもしれませんが、基本的には皆さん最低賃金で雇用されているのではないでしょうか。なお、非常勤の先生方は特殊なので省いています。
さて、これらの人々にとって最低賃金の上昇は喜ばしいことだけでしょうか。

雇い止めになる可能性

結論から申し上げれば、必ずしも喜ばしくはないと感じます。そもそもコロナ禍によって、上述の非正規雇用の方々の雇用契約自体がなくなっているのではないかと考えています。私の勤務先においても、昨年、コロナウイルス蔓延に伴い、事業自体が大きく縮小しました。例えば、学生が大学に来ないので、窓口対応をお願いしていたパートさんをはずしたり(契約期間中は雇用調整助成金等対応あり)、学生アルバイトも大学イベントが全て中止ないしオンライン化したために役目がなくなってしまいました。
そうして迎えたコロナ禍2年目、コロナウイルスが健在であることはともかく、大学行事がハイブリッドになったことでこれまで雇用していた方々の活躍の場がなくなってしまいました。これが多くの大学の現実だと思います。
そうすると、コロナ禍が収まったとしても一旦抑えた人件費を再度支出することは非常に考えにくいのではないでしょうか。元々圧迫されていなかったとしても、オンライン化により人手が足りるようになると、用途がない訳ですから再度雇用しようとは思えないのです。更にそこに最低賃金が上昇したというのならばなおさらでしょう。
厳しいですが、これが現実です。


今後ますます非正規雇用を雇わないようになる

最低賃金だけでなく、大学は今後さらに非正規雇用の職員を雇わなくなるであろうと私は感じています。
それは、現在の人事労務界隈で話題になっている、非正規雇用に対する退職金支給に関するものや教育訓練義務、社会保険加入、再就職サポートなど様々な施策が待ち受けていると思われるからです。
現在係争中の判例も含めて、非正規雇用に対する政府の支援は方向性が定まってきていますが、果たして、そのことがかえって雇用を控えるようになってしまうのでは、というのが私の考えです。
本末転倒とはまさにこのことですが、大学とて民間企業と同じく余裕がありません。コロナ禍による働き方改革が進んだことでお役所的体質が変わることは良いことですが、効率化・合理化が進むことで、非正規雇用の方々にもしわ寄せが迫っていると言えるのかもしれません。

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