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旅人算 - 旅を続けるナナニジに授けられた2つの新しい世界

22/7(ナナブンノニジュウニ)の2ndアルバム『旅人算』は、曲順がよく練られていてコンセプトアルバムのような趣もある、一枚を通して聴くことを推奨したくなるような作品でした。

今回は、そのコンセプチュアルな流れの中で大きな役割を担っている2曲の新曲について、どんなアイデンティティを持っているのか、ナナニジにとってどのような意義のある曲なのか等を軽く検証してみたいと思います。

君とどれくらい会わずにいられるか?

アルバムの1曲目、リード曲と呼ばれる位置づけの曲。1stアルバムのリード曲「ヒヤシンス」はグループ本体の状況に当てはまるような歌詞が強い存在感を放ち続けていますが、はたして今回もそういった方向性なのかどうか。私はこれはそうではないと結論づけています。

この曲の「愛を試す/試さない」というテーマは、ナナニジというグループそのものに当てはめるのはさすがに無理があるでしょう。もっとも、秋元康氏が歌詞を書くうえで、休業中のメンバーがいるという状況をヒントにした可能性は十分にあるとは思いますが。

この曲にあえて特別な意味や意義を見出すとすれば、それはナナニジにとっての"新しい世界"とか"新たな可能性"といったものではないかと考えています。

ナナニジ史上最大級に明るくポップなメロディに乗せた、"君と僕"の甘酸っぱい恋の唄。
描かれた世界観はおそらく携帯電話の普及していない時代。曲調もちょうどそれと重なる、90年代初頭以前のアイドルポップスを彷彿とさせるテイスト。アイドルというとその時代のイメージが刷り込まれている私のような世代の者には特に響くような、胸がキュンキュンするような要素が詞にメロディにアレンジに詰まっている。

ナナニジというアイドルグループがこれまでに作り上げてきた楽曲世界。その枠を勢いよく取っ払うような、懐古趣味であり強烈なまでにフレッシュでもある楽曲。これをこの表題曲という位置に持ってきたというところに大きな意味を感じます。秋元氏からの粋な贈り物であると思いたい。

君とどれくらい会わずにいられるか? -「22/7 ANNIVERSARY LIVE 2023」(2023.11.7)


世界の矛盾

この曲も「君とどれくらい〜」と同じく、"新しいナナニジ"であることを強く感じさせる楽曲。

一聴して伝わるシリアスなムードは、それまでのナナニジのイメージ通りとも言えます。しかし、歌詞の内容は従来のように自身の内面の苦悩や葛藤を歌ったものとは大きく異なる、広い世界に向けて発信するようなメッセージが込められています。昨今の世界情勢を想起させつつ、もっと身近な人間関係に当てはめられるようにも作られているのがポイント。

あけすけに言ってしまうと、この歌詞はジョン・レノンの「イマジン」の影響下にあると思われます。ともすれば理想論を振りかざしているようにも見えてしまう内容も、秋元康版「イマジン」だと思えば一気に腑に落ちるものがある。「理想を描こう」「地図に線などない世界」「みんなが味方」といった部分は共通の思想を感じずにはいられません。

秋元版「イマジン」を杉山勝彦氏の曲に乗せ、それがナナニジに託された、そう思うと何だか凄くないですか?(STU48の「花は誰のもの?」という近いテーマの曲もあるにはあるのですが)
これをメジャーな歌番組で披露すれば多方面から話題を集められるのではないか、などとつい夢想してしまうものです。

世界の矛盾 -「22/7 ANNIVERSARY LIVE 2023」(2023.11.7)


結局のところ、この2曲は秋元氏による"新しいナナニジ"の提示であり、新たな旅路を進もうとするグループへのはなむけのような存在なのだと私は考えています。

9thシングル『曇り空の向こうは晴れている』以降の表題曲と今回の2曲には、アイドルファンやアニメファンという括りを超えて一般層に刺さるポテンシャルを私は感じています。何とかして多くの人の耳に届けたいのですが……。

今回のリリースはいつにも増して宣伝の量が少ない気がする。うーん、頭が痛い。

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