GRAPEVINE Wants

昨日まで手には一杯
取り憑かれた逆説だらけ
言うなれば
きみを失うのがこわいだけ

わたしの「好きだなー」プレイリストの一曲。何度も聞いてきたのに不意にこの歌詞に感動した。

でも、だって、から始まる言葉が良くないって当然知っているのに。そんな言葉をたくさんたくさん必死に並べてしまって。その言葉たちの裏にあるのはあなたを失いたくないって純粋な気持ちだけなのに。

自分の平たい体験をGRAPEVINEの歌詞に重ねるのは烏滸がましいのだけれど、勢い良く暴言を吐いていたくせに思ってもないことを言っちゃうから喧嘩をやめたいと情けなく縋る癖がある私は、あの惨めな様がこんなにも綺麗に言葉に落ちるのかと感心した。

もちろん田中さんが私と同じ情景を浮かべて歌詞を作ったわけじゃないだろうし、こうやって独自の景色をつけたことを発信するのも野暮なことだと思う。


ただGRAPEVINEの曲の凄まじさを改めて感じる体験だったことは発信させてほしい。

わたしはGRAPEVINEのアルバムを聴く時いつも初見で引っかかるのは歌詞に遊びがあるアップテンポな曲。なしくずしの愛とか。その初見で引っかかる曲を楽しみにアルバムを繰り返し聴くと亀メロがだんだんと顔を出してくる。そしていつの間にかミドルテンポに難解だけど真っ直ぐな歌詞が乗った亀メロ曲が大好きになってる。この引っ掛かり曲の引っ掛かり持続時間と亀メロの良さが引き出される時間がぴったり一致する。

これがとんでもない体験でGRAPEVINEの凄さだと思ってた。これがもう1段階あったんだよ。

聞き続けると解像度の高くない歌詞にある日唐突に自分の体験が乗る。曲がひとつ自分に近づいてくれる。


GRAPEVINEの曲はすごい。これらの体験が計算されているとしてもこれが1人のオタクの妄想であったとしてもこんなに魅力を再認識する機会が与えられる曲たちはすごい。

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