上田剛史は本当に戦力"外"だったのか
こんにちは、シュバルベです。今日はスワローズファンの間で大きな騒ぎとなった戦力外通告について取り上げたいと思います。
発端はこちらのニュース。
07年に入団しスワローズ一筋で14年間在籍した上田剛史選手が、球団からスタッフ等の打診もなく戦力外になったことはファンに大きなショックを与えました。その一方で、これからのスワローズが変わるためにはこうした結果の出ていない中堅選手を戦力外にするのは痛みを伴う改革の一つ、という論調もあります。多少私らしく、この球団の判断をデータを基に見てみたいと思います。
1.打撃成績・走塁
まずは戦力外もやむなしの判断の最大の要因になっている打撃から。特に直近3年間の打撃成績は次の表のように年々低下しています。
昨年は長打0、今年は24.6K%と三振が増えた結果打率も一割台前半と散々な結果になってしまいました。32歳で年々下降している打撃成績、しかも今年はここ3年間でもどん底の成績でこれを見れば戦力外も仕方ないと思わされます。犠打は上手く、通算88犠打。左打者としては珍しく一塁方向の方が上手く、上田選手のドラッグバントはその足もあって相手にとって嫌らしかったと思います。
走塁に関しては足が速いわりに盗塁が苦手で通算75盗塁。成功率は78%と悪くないのですが、直近3年間ではわずか8盗塁と終盤の競り合った場面での出場で次の塁を盗めていないのはこのタイプとしては欠点というべきでしょう。
2.守備成績
とはいえ、実際の試合で上田選手に求められていた役割はスタメンで打力を発揮することではありません。彼の最大の役割は外野の守備固めです。レフト、センター、ライトの3ポジション全て守れ、盗塁は下手ですが足は速く守備範囲の広い上田選手は、青木・坂口の両ベテラン選手を抱える今年のスワローズでは頻繁に守備固めとして出場してきました。直近3年間の守備指標は次のとおりです。
打撃成績以上に、この守備指標が上田選手の去就を決めたと考えています。18年はセンターをメインポジションとしてUZRも2近くプラスでしたが、今年はレフトをメインポジションに移らざるを得なくなりました。センターでの守備機会が少なく判断に困るのですが、ライトでのARM指標とUZRの低下は守備面での衰えも感じさせます。今後さらに衰えがくると愈々レフトの守備固め専任となり運用に制限がかかってくると判断された上での戦力外ではないでしょうか。
さて、それでも私は上田選手はまだ戦力だと思っていました。なぜか。一つは今のスワローズの外野編成です。今年の4月時点で外野手登録は10人。しかし塩見選手、渡邉選手、中山選手の怪我が重なった時期が多く、二軍の外野は火の車に。大村・内山の両捕手が両翼を、センターを藤井選手が守るなど本職以外の選手が守備位置につくケースが目立ちました。外野手というポジションで見ると上田選手・田代選手の放出に対し、現在獲得しているのは並木選手のみ。青木選手・坂口選手には守備固めが必要な年齢で、特に上田選手はレフトの守備固めにチーム最多の26回も入りました。途中出場は35回で、これもチーム最多です。
※データはnf3Baseball Data Houseより。
上田選手は2020年については守備固めの一番手として起用されていたことが良くわかるでしょう。今回戦力外となった3人で守備機会は299イニングもあり、特に上田選手(141イニング)と田代選手(124イニング)はすべて外野での守備機会です。
最後にチームの外野守備機会の多い7名のUZRを比較してみましょう。
メインでレフトを守る青木選手が異次元の数値を残しているのがすごいですね(笑)。センターを見てみると全員マイナス指標になっているのが分かります。一番良いのが上田選手の-0.4(イニングが少ない点は留意必要)。各守備位置で見ても上田選手の守備指標はリーグでは平均クラスですが、チーム内では比較的上のレベルであることはこの表から言えるのではないでしょうか。
3.最後に
とりとめもなくデータを参照しながら上田選手を見てみましたがどう思いましたでしょうか?私としては、現状上田選手はまだ戦力になると考えました。少なくとも、入団してくる並木選手が守備固め・代走要因として一軍ベンチに座り打席を積めずに日々を過ごすことを回避するには上田選手は必要だったと思うのです。これから外国人の獲得やFA参戦などあるかもしれませんが、その見通しがついているのかという点は疑問視しています。戦力外から取るなら上田選手のままでいいのではないか、というのが私の本音ですね。
今年は怪我もあり二軍の外野編成が不安定で、本業でないポジションを仕方なく守るような編成ははっきり言って失態です。支配下70人縛りがその一因になっているのは言うまでもなく、今年明らかに回っていなかったポジションから2人も(藤井選手も二軍では外野をメインに守っていることも付け加えます)抜くのは正しい判断なのでしょうか?私は間違っていると思うのですが…。
そして、彼のキャラクターに最後に触れておきましょう。スワローズの中でも”お調子者”として知られ、インスタグラムも頻繁に更新するなどチームでは珍しいキャラクターでした。
でもこういうキャラクターも必要だよね、と思わせるというか、チャンスでポップフライを打っても、けん制死しても「なんだまた上田か(笑)」みたいなことを私たちに思わせてくれるのが上田剛史という選手でした。懐かしのこのコピペ(飯原選手の落球なのに)はTwitterで今でも稀に目にします。
余談ですが、サヨナラホームランを2年前に打った時はまさに「何があった、また上田か!!」状態でした。懐かしい思い出です。
今のNPBは右投げ左打ちの外野手はただですら飽和しており、守備固めが中心の32歳はなかなか他球団も手を挙げづらいと思っています。それでも私は彼が今後どこかの球団で溌溂とプレーしている姿をまだ見たいですね。涙を流せるぐらい野球が好きなら、応援する人はどこの場所でも増えますよ。かつては青木二世を嘱望された男です。次の道に幸あることを。
■出典
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