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【父は剛し】東京ヤクルトスワローズ 新左のエース、高橋奎二の2021年を振り返る

こんにちは、シュバルベです(^ω^)いよいよ #球春到来 の2月1日ですね!

2年前の2020年、スワローズの投打のキーマンに挙げたのは高橋奎二投手と塩見泰隆選手でした。2020年はともに故障もあり奮いませんでしたが、2021年はリーグ優勝・日本一のまさにキーマンとして活躍を見せてくれました。

塩見選手編はこちら⤵︎

さて、今回のnoteは高橋奎二投手についてです。過去、高橋奎二投手について2本記事を書いておりますので、成長の軌跡と思って目を通していただけると嬉しいです笑。

2021シーズン前はオープン戦で打ち込まれ二軍スタートとなってしまいましたが、夏場から先発ローテーションに組み込まれ、優勝争いで大きな役割を果たしました。

昨年の高橋奎二投手のハイライトと言えば、日本シリーズ第2戦でしょう。

自身初となる完封勝利。1戦目に手痛い敗北を喫していたチームを立て直し、谷繫元信氏や江川卓氏は日本シリーズのMVPに推すほど日本シリーズの流れを変える投球を披露しました。

プロ入り後通算10勝ながら左の新エースを嘱望され、今年のドラフト1位山下輝投手からは「高橋投手のような投手になりたい。直球のキレがすごい。自分はまだまだなので、目指して頑張っていきたい」(2021年10月11日付スポーツ報知)とまで言われる高橋投手の今年の成長を振り返っていきましょう。

1.高橋奎二の登板成績

まずは2021年の成績をおさらいしましょう。

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14試合に登板し4勝1敗、貯金を3つ作りました。防御率は3点を切り、先発投手として高いクオリティーを見せています。昨シーズン唯一のリリーフ起用になったのは優勝を決めた10月26日のDeNA戦で、4番手としてマウンドに上がり2イニング無失点で勝ち投手になっています。

奪三振率は25.0K%でセリーグの先発投手平均である18.6K%を大きく上回り、与四球率は7.8BB%と平均並みに抑えています。神宮を本拠地にしていながらHR/9は1.03と被弾も少なく、指標上も素晴らしい1年だったと言えます。

こちらは高橋奎二投手のプロ入り後、一軍登板での主要な登板実績をまとめたものです。

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こうして比較すると2021年は2つの数値が良化していることが分かります。一つは与四球率、もう一つはWHIPです。

WHIPは1イニング当たりに許したランナーの数を現し、20年シーズンまでは1.4人以上のランナーを平均して出してきましたが、21年は1.07人にまで減らしています。与四球が減ったことは勿論、被打率は.209と被安打の減少もWHIPの良化には当然影響しています。なぜ被安打が減ったのか、は次の章で考えます。

こうした出塁を許さないピッチングをしつつ、一軍初出場の18年以来20K%以上を安定してマークしてきた強みの奪三振率は21年になっても高い数値を維持しています。

こちらは12球団で21年シーズンに70イニング以上登板したピッチャーのK%ランキングです。

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名だたる好投手が続く中、4位に入った唯一の左投手が高橋投手です。高橋投手の投球回は78イニングなので、70イニング以上でのランキングは私の恣意的なものですが、23歳かつ左ピッチャーでこの面子に名を連ねていることは希望に溢れていると思いませんか?

簡単にまとめると、2021年の高橋投手は奪三振率はそのままに与四球率・被打率・被本塁打を良化させることができました。これは素晴らしいことです。

なぜ高橋投手はこの1年で大きく成長できたのか。次の章ではその投球内容から考えてみましょう。

2.高橋奎二の投球内容

高橋投手のピッチングで最初に浮かぶのは左投手にもかかわらず最速150km/hを超えるフォーシームです。21年の高橋投手のフォーシームは平均147.3km/h。左の先発投手としてはDeNAのロメロ投手(151.3km/h)に次ぐ速さです。

ただ、高橋投手の球の速さは打ち込まれていた19シーズンでも平均146km/h出ており、読者の皆さんも感じているように球が速いだけではNPBで通用しません。

こちらは2021年と2019年の球種別の球速/失点増減/投球割合です。

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高橋投手の球種構成自体はこの3年間大きくは変わっておらず、持ち球はフォーシーム、スライダー、チェンジアップ、カーブと稀にカットボールの5球種です。19年と21年で比べた時、どのボールも失点増減が大きくプラス指標に逆転しており、特にフォーシームでは非常に高いプラス指標を記録しています。

変化球に関して、高橋投手は長らくカットボールを投げるべきと言われてきましたが必ずしも私はそう思っていなくて、それ以上に持ち球であるフォーシーム・スライダー・チェンジアップを磨くべきだと思っていました。昨年はカットボールの割合は少し増えましたがまだ単体ではバリューを増やせておらず、むしろ既存のボールの精度が上がったことでの大幅なバリューアップとなりました

投げているボールに着目してみましょう。こちらの悟さんのツイートをご覧ください。

TVや現地で観ていても分かりますが、対角線に投げ込む威力あるフォーシームを軸に、右打者にはアウトドアのカーブ・スライダーと逃げるチェンジアップ、左打者には逃げるカーブ・スライダーを基本線に投球を組み立てています。カットボールはフォーシームに近しいゾーンに投げることで打ち損じを誘い、実際に空振り率は他の球種に比べて低くなっています。

高橋投手の特徴の一つが、打者の左右に関係なく変化球を投げられることです。特に左バッター相手に左投手がチェンジアップを投げるのは難しく、スワローズに昨年入団した山野太一投手は春の練習試合で次のように語っています。

石川から助言をもらったチェンジアップが有効で「今までは左打者にはあまり使ってこなかった。そこは収穫です」と笑み。五回1死一塁では、左打者の黒川を同球種で右飛に打ち取るなど手応えをつかんだ。

この点に困らない高橋投手は、他の左腕に比べて一つアドバンテージを持っていると言っていいでしょう。右打者に対しての巻き込んで入っていくカーブは被打率.000と圧巻ですし、繰り返しとなりますが左右関係なく全球種使えることで全体的な被打率の低下を誘っています。

さて、質の高いボールを投げられるようになったことで変わったこと。それは1イニング当たりの球数が減り、長いイニングを投げられるようになったことです。

こちらは高橋投手が先発した際の平均イニング数と、1イニング当たりの球数に注目し、18年~21年でとったデータです。

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2020年までは先発しても平均して5回を投げ切れていませんでしたが、21年は先発時に平均5.9イニングと1イニングも平均値が増加しています。9イニング制という通常よりも1試合当たりのイニング数が少ないにも関わらずです。21年のP/IP(1イニング当たりの球数)は16.3球で、20年までよりも2球近く減らすことが出来ています。

球数を減らすのに最も効果的なのは出塁をさせないことです。2021年の高橋投手は質の高いボールを投げることで被安打・与四球を減らし、WHIP1.07と出塁を減らしました。

質の高いボールを投げる

被安打・与四球が減る

球数が減る

そらそうやろ、なフローですが、開幕二軍で状態も悪かった所から3か月でこのフローに乗せることができたのは素晴らしいですね。二軍の尾花コーチ・小野寺コーチもよくサポートしたんだなと思います。

3.環境の変化がもたらすもの

高橋投手は2021シーズン、大きな環境の変化がありました。元AKB48の板野友美さんとの結婚と、第1子の誕生です。

結婚当時は板野友美さんの認知度が世間では圧倒的に高かったですが、日本シリーズでの完封などもあり1年で高橋投手の知名度も上がってきたのではないでしょうか。高橋投手がインスタグラムなどに投稿していますが、食事面などサポートも素晴らしく、クライマックスシリーズでは神宮球場にかけつけ応援される姿も見ました。お子さんが産まれたことで一層自覚が増したのか、後半戦~ポストシーズンでの熱投は頼もしく映りました。

後半戦、特に9月以降の高橋投手は緊張感の高い重要な試合を任され、なおかつゲームを作ることで自信を深めていきました。優勝が決まるまでのゲームは次のカード※()内は首位とのゲーム差。

9月1日 巨人戦 7回2失点(3位2.5差)
9月9日 阪神戦 6回3失点(3位2.5差)
9月18日 巨人戦 5回4失点(2位2.5差)
9月25日 中日戦 7回0失点(1位タイ)
10月9日 阪神戦 5回1失点(1位2差)
10月20日 阪神戦 7回0失点(1位1.5差)
10月26日 DeNA戦 2回0失点※リリーフ(1位1差)

終盤の阪神・巨人・ヤクルト三つ巴の優勝争いにおいて、2か月で阪神戦に3試合、巨人戦に2試合先発登板。5試合中3試合でQSを達成しました。極めてタフなメンタルを持っていますよね。

そして日本シリーズでは第二戦で自身初の完封勝利。昨年の自信を手に躍動する高橋投手がどこまで行くのか、楽しみでなりません。

4.2022年の展望

はやくも右の奥川、左の高橋の左右エースを待ち望む声が大きいですが、まだ焦らなくていいと私は思っています。

高橋投手に関しては昨シーズン後半戦の快投が光りましたが、イニング数としては規定に大きく足りていません。一年通して投げ切れるコンディションをキープすること、通年ローテーションに入る安定感を身につけること。成績の浮沈以上に一年通じたピッチングを求めたいと思います。

特に今年は延長12イニング制に戻ることが発表され、先発投手には長いイニングを投げることが求められます。昨年成し得たボールの質を上げて球数を減らしイニングを稼ぐ、これが一年通じて出来るかが鍵です。

新たな取り組みとしてはこちら。

「直球とチェンジアップの間ぐらいの横の変化。少し曲がるスライダーを投げたいので、そこを練習したい」

カットボールに近いんですかね?平均140km/hぐらいで横に少しスライドするボールを投げて凡打を誘いたいのかなぁと想像しています。キャンプ〜実践でのピッチングを見ないと中々分からない部分ですが。

勝敗はもちろん貯金を作ってくれれば良いのですが、やはり一番拘りたいのはイニング数ですね。怪我なく一年ローテーションを守ること。ただ先日、コロナ感染との報道が。。

この時期でまだよかった、そう言えるような調整に再度取り組んでほしいと思います。調整の遅れが生じるのは仕方ないので、首脳陣が万全でないと感じたのなら開幕に照準を合わせないかもしれませんね。このあたりのケアに関しては現行のスワローズの体制は信用できるので。

左のエースとしてシーズン終えられる、そんな一年であってほしいと思います。がんばれ~~~!!

■出典






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