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東京六大学野球 春の仮想展望③

この企画も最後の第3弾です。こうして6チームしっかり各選手を見ていくとどの大学も今年はチャンスがありますね。とにかく動く選手が見たいものです。今回は明治大学と東京大学についてです。

1.明治大学

昨年はエース森下暢仁投手(広島1位)と伊勢大夢投手(横浜3位)の強力投手陣を擁し、春季リーグ優勝と全日本大学選手権の優勝を勝ち取った明治大学。一方、秋季リーグでは4勝8敗で5位に沈み、浮沈の大きいシーズンを送りました。明治大学の特徴として、シーズンを通して4年生から1年生まで幅広い選手を起用していることが挙げられます。今年の4年生~2年生の選手たちで、投手は8人、野手は37人の選手がこれまでに公式戦に出場しており、これは六大学の中で投打ともに最多の人数です。監督が善波達也氏からコーチだった田中武宏氏に替わり、その起用や手腕に関しても注目が集まります。早くから多くの選手がチャンスを貰い、神宮球場の芝を踏んだ経験が今後どう生きるのか、以下見ていきたいと思います。

1-1.明大投手陣

明治大学の今年のメンバーの通算成績はこちらです。

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エースは4年生で副キャプテンの入江大生投手(作新学院)です。今井達也選手(現・西武)を擁して夏の甲子園で優勝した際の一塁手兼二番手投手だった入江選手は、大学では投手に専念しこれまで60イニングに登板しています。1年生の春から登板機会を与えられたものの結果が残せてきませんでしたが、19年秋は見違えるようなピッチングを見せてくれました。150km前後のフォーシームの力強さに加え、決め球の大きなスライダーの制球が安定し、22イニングで被安打10、奪三振25と高いスタッツを記録しています。

公式戦では100球以上投げた経験がなく、先発登板数は3年間で4回とスタミナの部分で不安要素はありますが、本人の強いプロ志望意志もありラストイヤーに期待がかかります。明スポのインタビューでは今季の目標について次のように語っています。

まず防御率は絶対0点台です。昨年できたことなので、今年できないわけがないじゃないですか。どれだけ打たれても、どれだけエラーが出てもチームを勝たせられるような投手になりたいです。なので、目標は5勝。五大学から勝ち点を取ることです
明スポ(17)春リーグ開幕前インタビュー 入江大生投手

今年は副キャプテンとなり、エースナンバーの11を背負いました。甲子園で3試合連続本塁打という偉業を成し遂げたその打撃にも先発登板時には注目したいポイントになるでしょう。

二戦目の先発を任せられるのは3年生の竹田祐投手(履正社)が有力です。2年間で22試合63イニングに登板し、その半分の11試合で先発を任されています。特に昨春は6試合すべてに先発、4勝0敗防御率1.96と完璧な内容でした。

これまでに許した本塁打は1本のみ、BB/9も通算で2点台前半と安定した制球と、出どころの見えづらいフォームから繰り出される変化球のキレがストロングポイントです。昨年は打撃でも満塁弾を放つなど、プロ入りした柳投手・星投手・森下投手ら「打っても凄い明大投手」の伝統は続いています。

リリーフ投手には4年生左腕の石毛力斗投手(健大高崎)が対左打者のワンポイント的に起用されており、他の投手陣が軒並み右投手であることからも継続してリリーフで大事な場面を任されそうです。

昨秋2試合3イニング投げた3年生右腕の高橋聖人投手(小諸商)もリリーフ起用がメインになると考えられますが、2月のJPアセット証券とのオープン戦初戦の“開幕投手”に抜擢されており、140km中盤の球速を安定して出せるようになれば投手陣に大きな厚みが加わりそうです。

同じく3年生右腕の米原大地投手(八王子)は、高校時代からMax147kmのフォーシームを主体とし、清宮幸太郎選手擁する早稲田実業高校と対戦し話題になりました。進学後、公式戦出場は2試合2イニングに留まりますが、横手に近い角度から投じるリリーバータイプです。甲子園で活躍し、昨春は6試合に登板した3年生の磯村投手は2年間で20イニング投じてきましたが、今春は背番号がなく故障が疑われます。

ほかに背番号を貰った選手はともに3年生の西城愁太投手と宮内大河投手です。フレッシュリーグでは登板機会を多く貰ったものの、公式戦は出場無しとなっており、初登板に注目です。

1-2.明大野手陣

主軸を担ってきた4年生が卒業しましたが、下位打線では1年生を含む下級生を多く起用してきた明治大学。今季背番号を貰った野手18人のうち6人が1・2年生と、フレッシュなメンバーがスタメンにずらりと並ぶこともあるでしょう。各ポジションで力が拮抗した選手同士のレギュラー争いが繰り広げられ、スタメンの時点でワクワクするような見所満載なのが今年の明治大学です。ポジショニングマップは以下で予想しています。

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昨年から卒業した西野真也選手(現JR東日本)はいたものの正捕手の座は空いており、今年はともに3年生の篠原翔太選手(報徳学園)と植田理久都選手(高松商)の2人の争いになりそうです。篠原選手は高校時代4番に座り、現在は早大に在籍する西垣選手とバッテリーを組んで選抜ベスト4にチームを導きました。昨春の時点で正捕手候補だったのですが、不調に苦しみレギュラーは奪えませんでした。今年はオープン戦から打撃面でも調子が良く、レギュラーに最も近い選手です。昨年の最終カード立教戦では3番キャッチャーとしてスタメン出場を果たし、期待度が現れています。対抗馬の植田選手も高校時代は選抜準優勝を果たしており、大舞台での経験もある好捕手同士の争いが楽しみです。新二年生の蓑尾海斗選手(日南学園)が昨年秋に最多の8試合出場しており、正捕手候補として名乗りを上げていたのですが、春は背番号がなく残念です。

二遊間は昨年ルーキーイヤーながら出場機会を多く与えられた新2年生3人が凌ぎを削ります。昨年4試合で遊撃手としてスタメン出場を果たしたのは西山虎太郎選手(履正社)。17打席に立ち無安打と打撃で結果は残せませんでしたが、1年目から13試合もの経験を積めたことは大きな財産になりそうです。日置航選手(日大三)は春の優勝決定戦(5/26法政戦)で途中出場し反撃の口火をきるタイムリーを放ちました。4試合12打席で安打はこの一本でしたが、セカンドをメインに失策0でシーズンを終えることができました。足さばきがよく、高校時代から評価されてきた遊撃守備を一段階上のレベルで見たい選手の一人です。村松開人選手(静岡)は秋に4試合でセカンドのスタメン出場を果たし15打席2安打、失策0でした。4年の藤江康太選手(千葉黎明)、鈴木貴士選手(佐久長聖)、3年の小泉徹平選手(聖光学院)も公式戦出場機会があり、まさに横一線の戦いとなっています。

サードには新主将の公家響選手(横浜)が中心に起用されるでしょう。これまでの3年間で15試合14打席と途中出場での起用が多かったものの、限られた打席で4安打を放っておりここ一番での集中力がうかがわれます。公家選手本人も打撃面での役割について次のように語っています。

Q.打線でどのような役割を担っているとお考えですか。
A.中軸を任せていただけるのならば、やはり結果で応えなければいけないです。状況に応じた打撃ができるので、臨機応変に状況を見極めていきたいです
Q.打撃の目標を教えてください。
A.去年まであまり試合に出ていないので具体的なイメージが湧かないのですが、数字というよりは、ここぞという場面で打つ選手になりたいです
明大スポーツ(2)春リーグ開幕前インタビュー 公家響主将 より一部抜粋)

卒業した喜多真吾選手(現日本製鉄かずさマジック)が抜けた一塁手も現状はレギュラー確約といえる選手は不在です。有力なのは4年生でキャッチャー登録の清水風馬選手(常総学院)ですが、公式戦では3年間21打席で1安打のみと結果を残せていません。3年生の大池稜選手(明大中野八王子)も公式戦では昨秋の代打での1打席のみで、打力が重視されるポジションであることからも結果がすべてのスタメン争いになりそうです。

最後に外野の3ポジションについてです。センターには侍ジャパン代表にも選出された3年生の丸山和郁選手(前橋育英)が中心に起用されるでしょう。昨年はケガで秋の出場はなかったものの、春は2番センターでほぼ固定起用され12試合52打席で打率.318と結果を残しました。四死球0で三振7と出塁能力に課題は残しているものの、安定した外野守備も含めてケガさえなければレギュラー確定といえます。

残る2ポジションについてはどうでしょうか。登録背番号を見たときに私は驚いたのですが、昨年ルーキーで早くも出場機会を与えられた新2年生の長南選手・冨田選手・中村選手・原田選手らが悉く背番号を外されていました。代わりに出場機会のなかった2年生の明新大地選手(明大中野)、新1年生の西川黎選手(履正社)が番号をもらっており、波乱の展開となっています。

秋に出場機会を得て主にセンターの守備位置についた4年の市岡奏馬選手(龍谷大平安)、3年生でレフトの守備位置に入り俊足が持ち味の陶山勇軌選手(常総学院)はともに昨年多くの打席を与えられており、今年も出場機会に恵まれそうです。市岡選手は大学2年で投手から野手に転向し、昨秋は17打席2安打。四死球2つ、盗塁も2個と野球センスの高さを感じさせる見ていてワクワクする選手の一人です。

1-3.予想オーダーと順位

最後に予想オーダーと順位予想です。

1番(右)市岡奏馬
2番(中)丸山和郁
3番(捕)篠原翔太
4番(三)公家響
5番(一)清水風馬
6番(遊)西山虎太郎
7番(左)陶山勇軌
8番(二)村松開人
9番(投)入江大生

明治大学は新体制の中で公式戦に本塁打を打っているのが竹田投手のみという長打力不足が最大の課題でしょう。俊足のバッターが多いだけに、クリーンアップに並ぶ打者が長打力を発揮できれば得点期待値も大きく上がります。投手は入江投手・竹田投手の二枚看板が強力ですが、リリーバーは実績が少なく、先発がどれだけ長いイニングを投げられるかがカギになりそうです。投打に強力な選手をそろえている早稲田・慶応には分が悪く、4位~5位に春はとどまってしまうのではないかと予想します。

2.東京大学

宮台康平投手(現日本ハム)を擁した2017年秋季リーグ以来、引き分けを挟んで42連敗と苦しいシーズンを続けている東大野球部。昨秋はエース小林大雅投手を中心に惜しい試合もあったものの勝ち切れませんでした。4年間で222イニングという圧倒的な登板数を重ねた小林投手が卒業し、今年も厳しいシーズンが予想されます。13年春から指揮をとった浜田一志氏に替わり、今シーズンから東大野球部として初のプロ出身監督である井出峻氏が就任しました。最初のミーティングで井出監督はチームのビジョンとして次のように語っています。

投手を中心とした守備走塁を隙なくやるチーム。三塁走者のゴロゴーの徹底などヒットがなくても1点を取る。難しくないことを全員ができるようにしたい。ランダウン、内外野の中継、カバーリング、ファーストの連係などをうるさく見たいね。東大はミスをしないというチームになれたらいい。教科書に書いていることはできているチームにしたい
THE PAGE 「落合打撃からもヒント!東大野球部新監督の元中日・井手峻氏は42連敗中の東京6大学最弱チームをどう改革するのか?」より

中日では一軍二軍のコーチを務め、フロント入り後は球団社長まで上り詰めた井出新監督の元、どのような野球を見せてくれるのか楽しみです。

2-1.東大投手陣

昨年は小林大雅投手、坂口友洋投手の四年生コンビが抜け投手陣はかなり苦しい陣容となっています。現在の2~4年生の公式戦での登板データは以下の通りです。

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2年生~4年生まで合わせても合計で44イニングしか投げておらず、防御率も軒並み2桁でかなり厳しいです。夏に開催予定の東京六大学は1試合総当たりというルールになることを考えると、先発の柱を作るのではなく継投でつないでいくやり繰りになるでしょう。

主力になってほしい投手の一人が3年生左腕の小宗創投手(私立武蔵)です。卒業した小林投手の背番号18を受け継いだ左腕は、昨秋2試合4イニングに登板し、イニングより多い5三振を奪いました。与四球は2と多いものの、春は9イニングで17四死球だったことを考えれば改善の気配が感じられます。スライダー、カーブのキレが良く、独特なフォームは武器なのでコントロールを磨いて欲しいですね。

同じく3年生の奥野雄介投手(開成)も戦力になってくれないと困る投手の一人です。これまでの成績はぱっとしませんが、2年秋に一度140kmを出しており、数少ない速球派投手として期待がかかります(140kmを東大の選手で出したのは宮台投手以来)。短いテイクバックから速いボールが投じられるので、高めに浮いても空振りが取れるのがポイントです。

基本的に実績のない投手がほとんどなので予想も立てづらいのですが、九州春合宿での練習試合6試合で13失点と投手陣が奮闘しました。負けてしまったものの中央大学戦でも5失点に防いでおり、未知数な投手が粘ってくれているようです。公式戦出場はありませんが背番号を貰った2年生の井澤駿介投手(札幌南)、西山慧投手(土浦一)にも登板機会がありそうなのでそのピッチングに期待したいですね。

2-2.東大野手陣

大学2年からレギュラーをつかみ主将だった辻井新平選手らが卒業したものの、各ポジションで昨年から1~3年生を起用していたため野手陣に関しては経験を積んだ状態で今シーズンを迎えられそうです。まずはポジショニングマップです。

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各ポジションごとに見ていきましょう。扇の要であるキャッチャーには3年生の大音周平選手(湘南)が正捕手として起用されるでしょう。昨年は1年生の松岡泰選手とポジションを争いましたが、壁能力が高く東大投手陣のボールをよく止めていた印象です。今春、松岡選手は背番号が無く、実質大音選手一択の状態といえそうです。

内野守備の中心である二遊間については、新主将の笠原健吾選手(湘南)がまず入ります。昨秋は主にセカンドを守り失策0、春はショートで多くの試合に出場しておりどちらもこなせるプレイヤーです。特にセカンド守備では球際に強く、リーグで見ても上位に入るレベルです。101打席で打率.220、出塁率.275と打撃も良く、1~2番で起用したい頼れるキャプテンです。

二遊間のもう一翼は4年生の早川怜志選手(菊里)と3年生の辻村和樹選手(県立千葉)の2人が争います。年次を考えると4年生の早川選手がスタメンを担うことが多くなりそうですが、守備交代や代打後の守備などで辻村選手にも多くの機会が回ってくるでしょう。

サードには昨秋の侍ジャパン代表合宿に東大から唯一選出された(選ばれること自体凄いのですが)4年生の石元悠一選手(桐朋)が入ります。昨年は春・秋共に1本ずつホームランを放っており、打率もともに.250越え、出塁率は3割越えと主軸としての役割を果たしました。春のホームランは明大の入江投手、秋のホームランは同じく明大でエースの森下投手からと、実力のある投手から打っており、今年もその打棒に期待がかかります。サードの守備は秋に3失策と課題がありますが、東大打線の中ではそれを補って余りある打力の持ち主です。

ファーストは3年生の井上慶秀選手(県長野)がメインに入るのではないかと考えています。昨年は卒業した青山海選手が打力を買われて入っていましたが、176cmで92kgと当たれば長打の期待を持てるどっしりとした井上選手はその後継として適任でしょう。

最後に外野の3ポジションです。昨年のキャプテン辻井選手が通年にわたりセンターを守っていたものの、両翼は2~3年生が多くの守備機会を得ていました。今年は4年生の岡俊希選手(小倉)、梅山遼太選手(四日市)、武隈光希選手(鶴丸)の3人が各ポジションにつく形がメインになるでしょう。

いずれも3年間で60打席以上に立っており、出塁率も通算で.250を越えています。岡選手は2年時に2本、3年時に1本、通算で3本塁打を放っている右の長距離ヒッターで、155打席で64三振と脆さも見えますが気楽に振り回せる打順であれば力を発揮してくれそうです。梅山選手は2年秋に主に代打で出場し13打数6安打と打ちまくりましたが、昨年は49打席で8安打と苦しみました。秋の慶應大学戦で初本塁打を石井投手から放っており、いい選手であることは間違いないのでその打撃に期待したいところです。

2-3.予想オーダーと順位

最後に予想オーダーと順位予想です。

1番(右)梅山遼太
2番(遊)笠原健吾
3番(三)石元悠一
4番(中)岡俊希
5番(左)武隈光希
6番(一)井上慶秀
7番(捕)大音周平
8番(投)小宗創
9番(二)早川怜志

井手監督は投手を中心としたチームにしたいと語っていますが、投手陣の経験不足は明らかで、今の段階で予想する限りでは打ち勝つ以外に選択肢はありません。上のメンバーでは4人が本塁打を打っており、三振は多いものの当たれば長打が期待できる選手が並んでいます。

宮台投手が在籍し、勝ち点も挙げた2017年は平均4点以上を取る打線で打ち勝ってきました。その時のような打線の爆発を期待したいですね。

■最後に

今回も出典は東京六大学野球連盟です。

8月、1試合総当たりということで弱点を抱えるチームにとっても勝利のチャンスが大きく拡大しています。新たな戦力、期待の選手、新監督の采配や、戦い方など目が離せませんね!!

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