見出し画像

オリックス・バファローズ 宗佑磨選手の1年を振り返る

こんにちは(^ω^)シュバルベです。

2021年になってから、昨年スワローズとバファローズでキーマンになる選手として挙げてきた選手たちの1年を振り返ってきました。私なりの『それって実際どーなの課』です笑。

オリックス・バファローズでは投手では荒西祐大投手、野手では宗佑磨選手をキーマンに選出し、先日荒西投手の1年をnoteで振り返らさせていただきました。

さて、今回は宗選手についてです。早速見ていきましょう。

1.総合成績

宗選手は現在24歳。今シーズンは高卒7年目のシーズンを迎えます。入団時は181cm78kgでしたが、公式HPでは現在83kg。5kgのビルドアップは果たしましたが、まだ細さは拭えません。2年目の16年に一軍初出場を果たし、2019年は怪我に悩まされつつも54試合177打席で出塁率.370、OPS.735と結果を残しました。

2020年のキーマンに挙げた時の記事はこちらです。

19年の基本的な成績を改めて書いておきましょう。

画像1

打席数が増えればさらに成績がのび、2020年は主力になれると期待が福良む一年でしたが、結果はこちらです。

画像2

前年より20試合あまり多く出場機会を得ましたが、強みだったはずの出塁率は.288に沈み、本塁打はランニングホームランの1本のみでOPS.596。どの数字を見ても19年よりも劣った成績となってしまいました。

オフの契約更改でのコメントはこちら。

今シーズンの成績には満足していません。自分の中で迷いや割り切ってできない部分もあり、自分の良さが出せなかったシーズンでした。

コメントからも悩みが伝わってきますね。キーマンの記事で、私は2020年の飛躍のために以下のことを書いていきました。

・多少コンタクト率を減らしてでも(特に追い込まれる前は)長打を積極的に狙っていく
・ほぼ全球種でマイナス指標になっている変化球への対応
・センターのUZRがマイナスで、サードのポジションもオプションとしてもつ

特に上記の点に留意しつつ、宗選手の一年をさらに細かく見ていきましょう。

2.打撃成績

まずは宗選手のゾーン管理能力から見てみましょう。直近三年間のストライクゾーン/ボールゾーンでのスイング率とコンタクト率はこちらです。

画像3

入団後から年々ストライクゾーンのコンタクト率は上昇しており、20年はほぼ上限値とも言える94%ものストライクゾーンコンタクト率となりました。スイング率はストライクゾーン・ボールゾーンともに低く、基本的には宗選手は待球型でコンタクトに重きを置いたバッティングスタイルとなっています。高卒6年目のシーズンを終え、宗選手のゾーン管理能力は決して低くなく、安達選手や福田選手に近い数値となっています。

問題は、ゾーン管理ができているにも関わらず、ヒットが打てていない点でしょう。

宗選手の打球の強さをSoft(弱い)/Mid(普通)/Hard(強い)に分けると次のようになります。

画像4

20年は弱い打球が19年に比べ4%ほど増えてしまっていますが、強い打球の割合はほぼ変わらず、Soft%に関しても誤差の範囲内です。これは私としては少し意外な結果でした。打率が19年.270→20年.225と大きく低下した原因はゾーン管理の悪化か、打球が弱くなっているかだと考えていたためです。ところが、実際に両方のデータを出してみると二年間で数値の大きな変化はありませんでした

つまり20年の宗選手の不振の原因はゾーン管理能力や打球の強さではなく、別のところに求められると考え、さらにデータを見てみましょう。

こちらは打球結果の割合をゴロ/ライナー/フライに3分割したものです。

画像5

18年と19年が全く同じなのは間違いではありません笑。こうしてみると20年は明らかに(10%以上)ゴロが減りフライが増えていることが分かります。10%以上割合が変わっているのは流石に意図的でしょう。20年シーズンの宗選手は意図的にゴロを減らしフライを打とうとしていたのです。

さらに打球の方向も大きく変わりました。こちらは直近三年間の推移です。

画像6

ライト方向(=引っ張り方向)への打球が昨年に比べ15%も増加しています。

BaseballSarvantなら打球の落下点がゴロ・フライでマッピングされているのですが、NPBだと見られないのが辛いところですね。それでもこれらのデータから言えることは、2020年シーズン宗選手は引っ張り方向を中心にフライ性の打球を意図的に打とうとしていたということです。

しかしながらホームランは20年シーズンにわずかに1本。その1本もフェンスを越えたのではなく球団18年ぶりのランニングホームランでした。

打球の性質や打球方向としては明らかに長打を増やすことを目指したアプローチですが、結果的に一年間で柵越えなし。その取り組みは結果に出ませんでした。

その要因の一つとして考えられるのはインコースの弱さ、特に左投手のインコースに対して無力だった点です。こちらはBaseball LABさんに掲載されている宗選手の安打時の投球マップです。

画像7

投手からの攻め方はありますが、コースを3分割で見た時にインコース寄りのボールをほとんどヒットにできていません。引っ張り方向にフライを上げていくという打球アプローチ自体は私がポイントに挙げた「長打を積極的に狙っていく」という点に合っており好ましいと思っているのですが、インサイドのボールを強く叩いて安打にできていない点はやはり彼のポテンシャルからしても物足りないでしょう。特に左投手に対してはヒットゾーンが外角低めに偏っており、対左の打率は.133と低迷しています。19年は左右ともに.270だったので、この点は19年から大きく悪化してしまった点ですね。

そして私が飛躍のキーとして挙げた変化球への対応についてもwSF(スプリットに対する得点増減)は+2.3なものの、他の球種に対してはマイナス指標となっています。実は変化球の各球種へのマイナス幅は19年よりも減っているのですが、何より気になるのは2019年に+2.9を叩き出したwFA(フォーシームに対する得点増減)が-4.5にまで下がってしまっている点でしょう。

これらインコースへの脆さとフォーシームへの対応の遅れについては次の章で見たいと思います。

その一方で、ポジティブなデータも一つ。2020年の二塁打数は10本。19年の6本から大きく増加しており、チーム6位タイの本数です。ヒーローにもなった11月4日の二塁打のような打席を増やすことが宗選手の目的でしょう。

3.フォームを見てみる

宗選手のフォームについてはこれまでもTwitterで呟いてきましたが、結局これなんです。

タイミングを取るための右脚のステップの踏み方。そしてそれに連動したトップの作り方。ここの試行錯誤っぷりは凄まじいものがあります。宗選手はキャリアで最も多くの試合に出場した2018年は一段ステップでしたが、翌19年からは2回右足でステップを踏んでいますがその足の上げ方は月によって大きく変わります。例えば2019年10月7日の二軍戦でのホームランはこちら。

画像8

画像9

一段目→二段目でホームベースに寄り、前傾し、トップの位置はややキャッチャー側へ寄っています。それでもこの時はステップ幅・足上げの距離共に小さく、ノーステップに近い打ち方となっています。

2020年初めの練習試合ではもう少し二段目のステップ時に足を上げていたのですが、最終的にはこのノーステップに近い形に落ち着こうとしています。こちらは2020年7月2日の西武戦。

打撃フォームのみスクリーンショットに取ったものがこちらです。

画像10

画像11

1枚目はやはり一段目のステップなのですが、19年に比べてホームベースから遠い位置に踏み出しており、二段目のステップの踏み位置も若干離れ気味になっています。これは引っ張りの意識によるものなのではないかと思います。そしてトップの位置については大きく変わっています。バットの寝かせ具合が大きくなり、二段目でより後ろに引いています

こうしたフォームを見ていくと、二段ステップの幅を極力少なくしノーステップに近い形で打とうという努力は見られるものの、踏み出し位置はこの半年だけでも試行錯誤が続いておりそしてトップの位置についても定まりません。この2回のステップの動作による立ち遅れと、トップが深すぎることによるフォーシームへの振り遅れが引っ張り意識が強くても20年に結果を出せなかった原因なのではないでしょうか。

左右の別はありますが、2回のステップを踏んでいる著名なプレイヤーの1人が平田良介選手でしょう。彼もフォームは頻繁に変わりますが、こちらの二軍でのホームランは20年の宗選手のバッティングと比べてみると面白いものの一つです。

平田選手の二段目のステップ時の足の位置とトップの位置を確認してみましょう。

画像12

平田選手もホームベースからやや離れた位置に着地をしていますが、バットは完全に立っています。そしてこれ以上背中側に引くことなく持ち味であるスイングスピードでボールを粉砕するスタイルを作っています。

宗選手と同じ左打者でお手本に出来うる選手の1人が海を渡ってフォームを変えた大谷翔平選手です。

MLBの速いボールに合わせるためにステップの幅と足上げを小さくし、二段ステップを経てほぼノーステップになった大谷選手のこちらのホームラン。小さいですが二段目のステップはやはり取っており、その時のスクショはこちら。

画像13

やはりバットは地面に対して垂直に近いぐらい立っています。平田選手に比べて背中側にヒッチをしていますが、それを補うのがスイングスピードでしょう。

大谷選手と比べるのもアレですが、彼もかつては日本の高校野球を経てプロの門を叩いた人間でスタートラインには大きな違いはありません。この大谷選手のノーステップ打法について、和田一浩氏が解説をしているのですが、これが宗選手の今のフォームの課題にとても当てはまっているので以下、参照してみましょう。

元々ノーステップ打法の原点は余計な動作を省き、動きをシンプルにすること。右投げ左打ちの弱点は、利き手のある体の右サイドを使って打ちにいく点。投手に近いサイドを使って打ちにいくため、どうしても立ち遅れやすくなる。ちょっとの違いだが、最初からグリップと頭の位置を後ろにしたのは、大谷なりに立ち遅れせず、強い打球を打つための意識の表れだろう。

まさに宗選手も右投げ左打ちで、20年の大きな問題点として立ち遅れが挙げられました。ステップ幅が小さく、足を上げることでの地面反力を享受できないため、上半身の体の強さを元にしたスイングの強さとスピードが求められます。色々書きましたが、宗選手が今のフォームで大成していくためには全身の筋力UPは最優先で、現在181cm・83kgという体格はやはり細すぎると言えるでしょう。

とはいえ、宗選手も紆余曲折を経て20年シーズンはほぼノーステップになりました。その方向性は立ち遅れの対策として間違っておらず、速いボールへのコンタクトを重視した結果だと思うのですが、バットの立たせ具合と純粋な筋力に依るスイングスピードの不足が平田・大谷ら第一線の選手との違いではないでしょうか。

なお当方はフォームや筋肉の動きなどはほぼ無知に近いので、この内容もほぼ推測の域でございます。ここが違う等ぜひご指摘いただき勉強させてください。

4.守備での新たな取り組み

最後に、守備について書いていきましょう。20年シーズンに飛躍するためのポイントとしてあげたのが、「センターのUZRがマイナスで、サードのポジションもオプションとしてもつ」ということ。実際に20年シーズンを振り返ると、なんとサードでの出場がメインとなりました。かつて素材型遊撃手として入団し、一度は落伍して外野(といってもセンターを任されるのは流石ですが)に回されたものの、再度三塁という内野に戻ってきたのは驚きです。

三塁手として333イニングを守り、UZR+3.2。これは20年にオリックスでサードを守った選手の中で最も高い数値です。さらに広げると、リーグで300イニング以上守った選手の中でもなんと鈴木大地選手と同値のトップだったのです。センターで培った球際の強さに加え、もともと備わっている地肩の強さでサードとして躍動し、チームを救いました。

少し思っていたのとは違う方向ではあるのですが、オリックスはセンターもサードも一年間レギュラーを固定できず空きポジションとなっています。チャンスに変えて欲しいですね。

5.最後に

ここまで宗選手について振り返ってみました。個人的には引っ張り方向にフライボールをあげていく意識はかなり好ましいですし、本人が「結局は打つ人がレギュラーになるんです」(引用元は下記リンクより)と語ったように長打を打つための試みだったと思われます。

やはり私が気になるのは3章で取り上げたバッティングフォームです。プロのコーチ陣が指導しているのでもちろん私の一意見などよりは優先されるべきなのですが、それでも18年のような一段ステップに戻したり、せめてバットは立たせて空振りしてもいいからインコースも思いっきりしばけるようなバッティングを目指して欲しいと願ってしまいます。

ランニングホームランや守備動画を見ての通り、全身バネのような強い身体と生まれ持った野球センスは感じさせるだけに本当に歯痒いという感じです。光明としては、サードでリーグトップクラスの守備指標をマークしたことと、打撃面でもノーステップに近い打法で固めてきている点でしょう。

しかしキャンプメンバー発表時では下半身のコンディション不良でC組スタート。

若いとはいえ高卒7年目のシーズン、キャンプより前にコンディションを整えられていない点は率直に残念でした。特にサードを争う大下選手が疲労骨折で出遅れ、人材不足となる中でチャンスを逃してしまったのは大きな痛手です。出塁率に優れ、キャプテンも務めた福田選手がサードに就く機会も増え、うかうかしていると一年があっという間に終わってしまいそうです。

1日でも早く怪我を治して欲しいですし、今年はかなり崖っぷちなシーズンになるので(推奨されないかもしれませんが)無理にでも出場機会を掴む努力をしなければならないでしょう。アプローチや方向性は間違ってないはずなのであと一歩です!本当に頑張って欲しいです!

■出典


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?