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科学の甲子園 県大会 実技競技を振り返る

というわけで、どうもこんにちは。佐川です。今日は悪問オブザイヤーにノミネートされたことでも有名な「科学の甲子園 予選 実技競技」を見ていきます。

注意

  • この記事は実施から3ヶ月経った3月末に書いているため、記憶があやふやになっています。概要としては事実と矛盾のないように録画やデータと照らし合わせながら記述していますが、細かな数値等については事実と多少のズレがある場合がございます。ご了承ください。

  • 昼食を挟んで記事を書いたので、途中からデスマス調になっています。ごめんなさい。




大会準備パート

導入

弊校は、期末テストが終わった翌々日が科甲でした(私立アンチの教育委員会の謀略ではないかという説もありますが…)。とは言っても、定期テストは2、3時間のテストがある日が1週間続くゆるいものなので、逆に良かったとみることができるかもしれませんが。

私は科学部員ではなく(高校に内部進学したタイミングで科学部は"引退"しました)、暇だったので科学部に遊びに行き始めたのが試験発表が始まった、大会2週間前。そこから2週間でなんとか完成させて行きました。

実技競技の細かなルール
・発射物は弾性力によって発射されなければならない
・発射担当者2名のうち、1人が装置を押さえ、もう1人が発射する
・この際、発射者が発射ラインを超えて発射してはならない
・発射装置の底面が接地していなければならない


想定解を作る

まずは想定解と思われるものを作った。具体的には、工作用紙でバネを作り、これを使用して段ボールに乗せた粘土を飛ばす様な装置を作った。試行錯誤の末、段ボールを折り曲げたものに2つバネを取り付け、それに土台をつけて飛ばす様にした。的中率はまずまずと言ったところで、60点(180点満点)ぐらい取れるほどになった。


Realize

ここで、本競技の想定を確認しておこう。これは共通テストで学問を"無理やり"実生活に結びつけた悪問が生み出されることがよくあるが、これと同じ様なものである。
さて、本競技の概要にはこうある。

競技では、災害によって橋が流された川の対岸に物資を届けるという想定の下、川の対岸に見立てた机や椅子、災害地に見立てた床の上のコップや皿に、物資(発射物)を、いかに正確に着地させることができるかを競います。

とある。
「想定の"下"」の漢字遣いに違和感があるのは些細な問題であるとして、なんというか180点分の物資のうち3分の1しか届けられないのはいかがなものかと思うわけである。そもそも、物資を自由落下させて運ぶのもどうなのだろう。

さて、では実際の災害現場ではどのように物資が輸送されているのだろうか。物資輸送の主な方法は陸路であり、自由落下ではない様である。驚いたことに、自衛隊が流された川に仮設の橋を設置することもある様である。

そうであるならば、橋を架けない手はない。
次は長い棒を作ってそこを転がして、粘土を運ぶことを考えるに至った。なお、みなさんご存知の通り、高知県は非常に予選の時期が遅いことが知られている。その頃には、他県で同じように"橋を架けた"事例も多く上がっていたことから、その方向で更なる研究が進んだ。


橋を架ける

橋をかけるには、強度の心配が一番大きかった。試行錯誤の結果(と、省略してばかりで申し訳ないが)、段ボールを三角形に加工しそこをボールが転がるようにして、手元に発射装置を作るをいう方針になった。それでも依然、強度の問題は残り続けた。


後出しジャンケン

さて、この様にして準備を進めていた矢先、1通のメールが入る。そう、教育委員会からである。主要な部分を以下に示す。

質問2:
弾性力を使って物質を発射させれば、その後発射装置の一部を使って、発 射物を移動させても構わないか。
回答2:
この競技は弾性力を使って物質を発射させて、その力により目的地に着地させる競 技です。 弾性力を使って発射させたあとに、他の構造物を利用して目的地に到着させること は、この競技の本来の趣旨とは異なります。 弾性力を使って発射された発射物が発射装置の一部を使って移動し、装置から離れ た場合、弾性力によって目的地に着地したものとは認められません。(0点または 失格)
(補足)事前公開資料p5失格規定「発射装置に乗せた発射物を直接指で弾くなど、 弾性力以外の力を使って発射物を発射させた場合」とあるように、弾性力を使って 発射させた後、発射装置の一部に接触した時点で、弾性力による発射による着地点 は発射装置の一部であるため、目的地以外の場所に着地したものとみなします。

要するに、私たちがエクスプロイトしていたバグにパッチが当てられたわけである。なんてこと
そこで、このパッチをバイパスする方法について深い議論が交わされた。そして発見したのである、橋を転がすのではなく橋の先で発射すればいいということに。実際、この方法はパッチされていなかった。
こうして、従来の橋型の装置を改良し、新しい条件に適合するような装置を作り上げた。


最終的な方針

最終的に、材料を鑑み、橋型とバネ型を両方制作することとした。これは材料に余裕があったからであるとともに、(こんなことがあるべきではないが)橋型がイリーガル認定された場合でもバネ型を代替することができる様にである。


プロトコル制作

本大会では例年、顧問の教員と教育委員会担当者の間で、激しい議論に発展することがよくある。そこで、弊校科学部はディベート部の友人を議論の担当者にする様にした。そう、私である。
あらゆる状況を想定し、ルールの曖昧な点で確認すべき点、自分たちの装置が規定に違反すると言われた時の反駁などをまとめあげた。
これが「科学の甲子園プロトコル 高知県大会版 実技競技篇」である。
なお、本県は過年度の科甲で、2グループに分かれて実技を行ったところグループごとに結果の判定方法が異なっていたというポンコツ具合である。


大会パート

いざ本番へ

筆記競技は特に何事もなかったので割愛する。黄ソルバーが2人いるし何とかなったはずである。

筆記と実技の間に、会場と実際の発射場所が公開され、私たちは確認に向かった。すると、G高校の生徒が発射場所を前に「届くかなぁ」と話し合っているのが、聞こえてきた。
私たちは思った、「なんてことだ」と。

そこで、私、Mr.S、RankTurnipの3人で、会場の周りを散歩しながら対応策を考えた。その話し合いの結果、プロトコルで質問すると決めていたことのほかに、追加でいくつか担当者に確認をすることになった。
「(発射)補助者が手で(発射装置を)発射台に押さえ付けてもよい」という規定について、下から(上方向の力を加えて)装置を支えることは禁止されているかというものである。回答としては、想定通りの禁止されているというものが返ってきた。


そんなこんなで、実技競技が始まった。私は顧問と控室から中継を見ている。そして、画面に映るG高校の長い橋。そして私はこう言ったと思います、「なんてことだ、もう助からないぞ!」と。

そんなこんなで制作が終わり、試行が始まります。2番手が弊校、7番手がG高校でした。
まずは、Chordがバネを使って30点分ほど得点します。
その後、Mr.Sの橋が登場、ざわめきと笑いが起こる会場。しかし、橋が思ったより安定せず、発射機構も安定していなかったため、60点ほどしか決められず、深い悲しみの中にある、弊校。

その後、いろいろあって、G高校。
橋の先に簡単な発射機構をつけて長い紐を土台側から引っ張り、発射する機構です。
経験上、橋を渡すタイプは必ずどこかでミスをやらかすものなので、注意深く見ていることに。
RankTurnipが紐が地面についた状態で発射されていることに気づきます。これは「発射装置の底面が枠内からはみ出ではいけない」という規定に反するものです。
また私は、彼らの致命的なミスに気づきます。橋を手で掴んで支えています。これは、下から支えているとかいう軽微なミスではなく、棒が装置によって一切支えられていないという重大なミスであることを補足しておきます。

G高校が130点決めて絶望に暮れる中、私とRankTurnipで異議を申し立てました。主なポイントは以下の通りです。

  • 発射時に紐が地面に触れており、枠から底面がはみ出てはいけないという規定に反する

  • 棒を手で保持しているため、これは手で支えてはいけないという規定と反する


結果発表

そして結果発表。筆記では勝っている自信があったので、実技がどうなるか次第でした。結果、何とか1位で全国大会に進むことができました。
が、結局のところ実技の結果がどうなったのかは、3月になっても不明なままです。


まとめ

このことから学ぶべきこと

  • ルールをよく読むことが大切です

  • ディベート部を雇いなさい

  • 学問を実生活と結びつけると破綻することが多い

  • JSTは仕事をしてください


謝辞

大会準備期間中には、Twitter上で多くの方から、他県の大会の様子を始め多くのインスピレーション受け、参考にさせていただく部分も多くありました。この場をお借りして感謝申し上げます。

また、この"迷問"を契機として、科学の甲子園の作問のあり方を見直され、公平・公正でさらに楽しめるような大会になることを強く望みます。

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