defying gravity
海はいつも遠い存在だった。海街育ちの私にとって海は目の前に広がっているのに、近づいてはいけないと小さな頃から言い聞かされてきたせいかもしれない。海の中の世界を想しながら砂浜にしゃがみ込んで指で模様を描いたり、小さな貝殻を集めたりする方が性に合っていた。
初めて海で泳いだのは、大学生になってからのことだ。見知らぬ国の、見知らぬ海。誰も私のことを知らない場所で、初めて海水に身を浸した。あれ以来、海はわたしにとって特別な場所になった。何か苦しいことがあると足を運んでしまうのは、あ