🐉衣装歴史学 其の一、坂本龍馬　七十六

七十六、

高杉と坂本、その江戸遊学期、又はそれぞれの活動期、何とも自由な選択肢を取って進んでいた様な記録。

ただもしかしたら、知られていないだけで、こういう若者も多かった？かも知れない。

二人の共通項として、裕福な家の出であるが、そもそも家が裕福であって藩からも信用がなければ“遊学”は出来ない。

まあ諸国で抜きん出たそれなりの猛者も集まった事も集まっただろうが。ただ冷静に見て江戸への剣術修行、主要な人々は皆、諸藩のエリートだったかな？次世代の藩政を担う若者達への教育投資、と。

そう見ると、これもいつの世代にも起こる首都行脚。子供に期待掛ける親程、頑張って子を江戸に遣った、と。その中に、苦学して藩庁に足繁く通って顔を売って江戸遊学への切符を得たりする者、腕っぷしのみ自慢でそれのみを売りにし、江戸遊学への道筋に己を捩じ込む者、多種多様だったか…

故にその観点で行くと、全てが出自の暗い、恵まれない若者達が維新回転の原動力となった、とは言えない。

その上、大小あるが、皆武家である。

現代もうここ半世紀は、若年層が主体となった現状回転運動は起こっていない。故に親近感も湧き難い向きもあろうが、

維新回転、他“尊王攘夷”、“公武合体”、“開国”、こうしたワードの飛び交う議論が当時のエリートの若者の“流行”だった、と。

“流行”のどのカテゴリーに入ろうか？

“尊王攘夷”、なんだか其方の方が楽しい奴らが一杯いるぞ？と。

だって、“龍馬”も“晋作”もまだまだ若い兄ちゃんだったのだから。

二人とも“攘夷運動”のサークルに加盟だけはしている。加盟だけは…

激動の時代だった、とは言う。

だが、ここは西郷とは違うのだが、相当に当てずっぽうでもある、行動する根拠が。

だが結果が明瞭である事を根拠に行動する人など、殆どいない。もしそういう人がいるなら、寧ろその人は弱い人間だ、と当方思う。“場当たり”とはネガティブなニュアンスだが、人間皆、“場当たり場当たり”して生きている。

結局、ビジョンらしいビジョンもなく、時代に飲まれて行った結果が、“英雄”という後世からの呼称…

と描く事も出来る。

では？

高杉の総決起を呼び掛けた九州演説は？

薩長同盟、大政奉還に掛かる坂本の入念な手回しは？

それはビジョンが明確で、討幕後の新しい世の為の信念と行動だったのでは？

高杉の場合、兎にも角にも喧嘩、喧嘩。藩内保守派が兎角気に食わない、血気が最上昇したフレキシビリティー、か。

その癖、この時期の高杉の演説内容には人より一手二手先を行った物がある。

当時の高杉の演説を聞いた人々はその冷静を欠いた捲し立てに付いて行けない物を皆一様に感じてまともに同意出来なかった、とも。

自分には手に取る様に判る事が、何故他の人間は判らないのか？

そうして嫌になって止める、投げ出す、そして何か他の楽しい事がありそうな方に行く、高杉晋作。

坂本の入念さ、というのは例の“聞き上手”の延長線か？

要するに、色んな、様々な情報が自分の元に集まって来てしまう。“聞き上手”は他人の秘密を守る事に固い事。口のさがない人間に、他人は余り多くを喋らない。まあ乗せられて話してしまう迂闊さもある。あるがしかし、人間だもの。そんな不注意の経験、誰しもある。

入って来た情報、瑣末な矛盾事項、それに調和を取って行った結果が所謂“坂本龍馬”である、とも見れる。

そして結論から彼を見て、その方面に長けていた、とは肯んぜられる。

二人とも、“遊び”が好きな者だから、論理や大義、そうした硬い事象を、“ゲームのプレイヤー”の見地で見れた、か。彼らは行く先々、纏わる人々を楽しませていた事は確かな様だから。