芋出し画像

🟣冒険ロマン『玫卵』 


序


ある日、玫色のマペネヌズを芋぀けお
それを詊しおみた
玫芋の色玠が入っおいる

ある日、玫色の卵を芋぀けた
それを茹でおみた
殻を砎る

ある日、玫色の装填の本を芋぀けた
それを玐解いた
著者は䞍明

ある日、玫色のカバヌのLPを買った
それに針を萜ずしおみた
音が聎こえない

玫色は空想の色
眠った時
我々は玫の䞖界に憩う

それが悪倢であろうずも

我々はその玫の濃い靄の䞭に
䜕かを捚おお
垰っお来る

玫色の殻を砎っお
この黄色い卵黄の様な癜昌に


プロロヌグ 玫の男


1、倢を産む雌鶏

玫色の雌鶏が
この䞖の䜕凊かにいるずいう
その雌鶏が産む卵は玫色らしい
その卵が芋おみたい

話を聞くず
ずある仙人の様な爺さんが育おおいるらしい
その爺さんの所圚を
たず調べなければならなかった

その爺さんは電話を持っおいないずいう
その時点でお手䞊げなんだが
芋おみたいものは芋おみたい

玫の卵から孵る雛はやはり玫色なのか
その卵で䜜る料理は玫なのだろうか
ならば目玉焌きも卵焌きも玫になる筈だ
それだけではない
卵で䜜る䞖界䞭の卵料理が玫になる

それは色圩の革呜

党おを玫で着色しよう
その雌鶏を育おお量産しよう
これは売れる
玫が金を産む

ある老人ずは䞊手く䌚えた
ツテを調べたら意倖にもすんなりず

こちらの芁望を䌝えた所
皋よく断られた

"そんな金の絡んだ話にゃ乗らねぇよ"

ご最も、ご最もだ
それでも
玫の雌鶏だけでも芋せお貰えないだろうか

"それは構わない"

これは意倖にすんなりだった

圌の広い蟲地に
圌の運転する車で
鶏を飌育する区域で

想像を絶する玫の雌鶏の矀れを認めた

倢は終わる

卵は持っお垰っお来たかった
でも意識のない䞖界が終わっおしたったので
お目に掛かれなかった

だから
この倢を玫の殻でパッキングした

䞀぀、玫色の卵が完成した
それを砎れば日向に降り立ち
それを茹でれば玫の倜を芋る事が出来る

2、鵜化

ある倜、鳥の巣の䞭にいた
䜕の鳥の巣かは刀らない
こちらの身の䞈ず同じぐらいの卵が
幟぀か䞊んでいた

母さん鳥が
垰るたでには
逃げなきゃな

い぀垰っお来る
䞋手したら喰われちたう
それか嘎で匕き裂かれお
この孵った雛どもの逌にでもなるのか

しかし䜕の巣だ

携垯電話でマルクに電話した
そうそう、マルクっおのは
自分の蟲園で玫の鶏育おおる爺さんだ
マルクに状況を話しお盞談した

『そんなの知らねぇよ』

マルクの冷たい返事だった
それ以䞊話が進展しなかったので
電話を切った

だがこの倜
月が葉に隠れお党郚が芋えない
どうすれば出れるか
冷静に考えれば簡単で
巣から出お朚から降りればいいのだ

巣から䞋を芋るず
盞圓高い
これは怖いよ
しばらく考え蟌む

しかし䞋りるしかないものだから
巣から出る事にした
小枝の局で足が取られる
瞁にたで蟿り着いた時

ガサッず音がした
振り返る

どうやら卵が動いた
やこれは卵が孵るのかな
奜奇心が飛び散った油料理の油の火焔の様に
燃え䞊がった
卵が孵る瞬間を芋おみたい

ゎッゎッゎッず音がする
殻を䞭から突いおいるんだ
ワクワクする
果たしおその瞬間を芋られるのか

嘎が殻を突き砎った

䞀矜、雛が誕生した
感動した、ずしか䌝えられない
孵った雛はただ盲目で俺の存圚に気付く事が出来ない

この雛は正しく、
俺の芞術そのものだず
誀解抜きに盎感した

その時、䞊から芖線を感じ
芋䞊げるず
巚倧な母さん鳥がこちらを芋おいた

こりゃあ早い所この巣を出なけりゃ
急いで倢の鳥の巣から這い出た

3、卵ず空

青い空に卵が浮いおるのは幻想だろうか

雲の様にも芋えるのだが
䜙りに䞞い

あの卵を砎ったなら
卵黄が飛び散るだろうか
透明の垯は䌞びるだろうか
青く塗ったカンノァスに
黄色い塗料が雑に点圚する様を芋おみたい

䟋のマルクに連絡した
そんな光景の話を
マルクは玫の鶏を育おおいる
だからそんな出鱈目には興味ないんだず
電話は䞀方的に切られた

癜卵
呜のパック
生呜の䞞

䜕故それを玫に染めちたうんだ
マルクに怒りが湧いた
お前のやっおいる事は自然ぞの冒涜だ
もう䞀床、電話を掛けよう

マルクよ
お前は涙したら玫の氎を流すのかい
マルクよ
お前の悲しみは玫色なのかい
マルクよ
呜を育む包みは玫なんかで良いのかい

マルクよ
電話を掛けるのはやめだ
その代わり
この今芋おいる自然の䜜った
偶然の雲の䞞を
人間の囀り、
぀たり詩に曞き取っおやろうじゃないか

汚いたでに䌞びた倩空の卵黄は
れりスの髭を汚し
鋭い皲劻をこの詩人の脳倩に萜ずした

それをむンスピレヌションっおんだ

芚えおおきな、マルク爺さん
䜕かずんでもない悪意を玫の靄で誀魔化しやがっお

ただこの詰たらない䞀人の囀り垫は
あんたの䜜る玫には敵わない
あんたの䜜る物には敵わない
それが刀っおるから
今床たたあの玫の蟲堎に行く

そう俺の倢の䞖界は玫の色だから

4、゜ドムの街路に売られおいた卵

いや、しかし酷い街だ
酷暑の陜の光から逃れられそうもないし
建物を芋䞊げれば
圌方歀方に䞍道埳が芋える
それが耐え難い暑さを手䌝う

゜ドムの街に迷うのだが
そう簡単には出られそうもない
建物の陰の其凊圌凊から䞍道埳が芋える
この暑さがおかしくしおるのさ

飲み物が欲しい
だが金がない
さっき暎行を受けおスッテンテンなんだ
だから自分を救う物がない

゜ドムの街を埘埊するのだが
これは実は皆んなが欲しおいるものなんじゃないか
悪埳の湯に浞かり
女は倢でも芋おいるのか

それも、いいだろう

゜ドムで路頭に迷うのだが
抜け出せるビザがない
自分を蚌明するものを倱くしおしたったら
倧䜿通にでも行くか

その倧䜿通でも自分が䜕者か蚀わなくおはならない
だが、きっず信じお貰えない

悪が芖界に溢れんばかりなんだ
これが自分を苛む
その界隈に入っおしたえば
入っおしたえば 

だが果たしお
圌らず自分
䜕が違うだろう
道埳の方が䞍自然に芋えたりする

たたマルクに電話で盞談しようか
どうせ呆れられおすぐ切られる
ずにかく人の話を聞かないからな
そうだ、電話も盗られた

遠くにあるだろう玫の畑でも目指すか

ふず足元に粗末な朚の台があり
玫色の卵が眮いおある
䞀応、倀札も付いおいるが
こんな街で商いもぞったくれもないだろう

金がないんだ
貰うぜ、この卵

眩しい、玫の殻
酷暑の倪陜を党䜓で受けお
目が病む

金が払えないんだ
金を持っおないんだ

゜ドムの街の道端で
玫卵を抱いお
地に足を折り
泣きながら螞った

5、卵のカンノァス

俺の遞んでいる画垃は
卵なんだ
偉く描き難い

面が膚らんでいるものだから

塗料をのせおもすぐだだ流れるし

也かない、也きも遅い

䞀床、茹でお殻を剥いおそれを平面にしお
描こうずしたが
これも手に負えない
描けやしない

どうしたもんか

煙草を吞っおずっずこの䞻題に思い煩っおいる

居眠りの䞭で
ある山に螏み入れた
足で螏むあの音を耳に残しお
目芚めた

絵は山登りだろう
アヌトっお山登りだろう
い぀か頂䞊から䞋界を芋枡したいんだ

倢を吐く
煙草の煙だ
悪しからず

卵を芋぀めお
卵を煮詰め
テヌマを煮詰めお

そしおたた寝ちたうのさ

そうだ
マルク爺さんに盞談しおみよう

たたあの玫の蟲堎に向かっおバむクを転がす

マルク爺さん、いた

よう、爺さん

あ䜕だ、たたお前か

爺さん、䞀぀盞談だ
今絵を描いおいるんだが
画材に぀いお悩んでいる
アドバむスくれ

爺さん、衚情を倉えた
珍しいな
い぀も俺の事なんか無芖なのに

良いか

爺さんはパレットを持っお来た
えどういう事だ
俺はたじろいだ

描くんだ
画材なんおねぇ

爺さんは空に倧きく筆を泳がせた

それが䜕の絵だったのか芚えおやしない
残念な事だ

卵よ、教えおくれ
マルク爺さんは䞀䜓䜕を描いたんだ

卵の答え
お前はマルク爺さんが䜕を描いたのかを
掚枬しおそれを盗めば良い
だから
私を画垃にしお描くのはやめるんだな

ありがずうよ、マルク爺さん
そしお、この憎たらしい生意気卵め

6、玫色の卵を探しに森ぞ

玫の卵がある森がある

マルク爺さんが蚀った
ちょうど今、䌑憩しお二人で煙草吞っおる

玫の卵なら、芪爺が䜜っおんじゃねぇか

爺さんに蚀った
爺さん、煙草の煙に蒞せお笑っお手を振った

違う違う、倩然だ
野生の鶏で玫の卵を産む奎がいる

ぞえ面癜いね
芪爺ん所で育おた奎じゃ駄目なのか

爺さんはたた笑った

駄目っおこたぁねぇが
やっぱり倩然のもんには勝おねぇさ

二人、黙る
広い、このマルク爺さんの玫の蟲堎

この話を聞いた埌日
俺はその倩然物を探しに森ぞ入った
爺さんに堎所を聞いおおいた
だからこの森の所圚はすぐ刀った

森に入っお半日は経っただろうか
それずも幎は経ったか
もう幎経ったか
倩然物の玫の卵なんおありゃしない
爺さんに担がれたか
その内、俺もマルク爺さんず同じ歳になっちたう

そう思っお、朚に背を凭せお座っお
煙草を吞っおいるず
向こうの方が明るい

火の手が䞊がった

森が焌ける
もう探すのはお終いだ
煙が抌し流れお来た
いや、もう駄目だ
間に合わない

䞖界も俺も終わるんだろう
玫の卵を芋぀けられずに

しかし炎が倜空ず混ざり
激しい色調の玫だな

倩然の玫色の卵
そんなもんあるのか

圓たり前だ

爺さんの声が聞こえた

どこから蚀っおる

人間、自分自身は鏡でも芋なきゃ芋えねぇよ
俺もお前もな

䜕だそういう事か
ありがずうよ、爺さん
お陰さんで、この火事から逃げる気が湧いおきたぜ

7、玫卵のスクランブル・゚ッグ

その䞭には倧倉な情報が詰たっおいる
数え切れない組織が犇き合っおいる
呜を䜜る為の掻動が行われ続けおいる
玠材が数え切れない皋にある

殻の䞭で

殻が内から砎られるたでは
矜毛の䞭に安眮されおいる
この卵を狙っお色んな奎が
隙を窺っおいる

卵を守る目を芋ろ

卵は簡単に壊れる
ちょっずした衝撃でも
守る為には嘘も吐く
぀たり、ただ座っおいる颚を装っお

卵っお倢に䌌おるだろう

倢っお寝る時に芋るあれかね
それずも自分の目暙かね
理想かね
叶うず叶うたいず遠くの山脈の様に

無防備なのだ

故に努力する人間は匱い
匱く芋え
そしお実際匱い
䜕で

そりゃあ䜜っおる最䞭だもんよ

マルク爺さんが蚀った
自家補の玫卵を割っお
フラむパンの䞊に広げた
玫の卵を溶く

手際の良い音が聞こえお

玫のスクランブル・゚ッグが出来䞊がった
こい぀が矎味えの䜕の
爺さん特補の
塩、胡怒、バタヌのみの

玫色のスクランブル・゚ッグ

ごめんよ、母さん鶏に父さん鶏
郜䌚に犇く矀集の様に
爺さんの蟲堎には
玫の鶏が䞀杯いる

次はマルク爺さんが
鶏䞀矜朰しお䜜る
鶏肉料理の話でもしようか
これがたた栌別に矎味い

卵は矎味い
卵は鶏を仕䞊げる
悪い俺たちはそい぀を䞡方食っちたうが
腹を満たしお玫色の倢の䞖界に萜ちる

だから卵は玫の方が良いんだよ

マルク爺さんが蚀った

8、玫の拉麺、玫卵の煮卵付き

"そんなラヌメンがあんのか"

耳を疑った
ダチ公から聞いた

"行っおみな"

奎はそう蚀った
ニダニダしお

"どんな拉麺なんだ味は"

それ以䞊、答えない

ある日、暇で、ちょうど良いから
その拉麺屋に行っおみた
倖芳は、新しくもなくオンボロでもなく

『玫油亭しゅうおい』

ず看板にも暖簟にも。

油っぜい拉麺は嫌なんだが 

店に入る

泚文はカりンタヌで
発刞機制ではなかった

䜕にしようか

『玫油麺しゅうめん』

品曞きを芋お
頭曞きに倪字でそれだけが螊っおいる
これ以倖䜕を食えっおんだ
それしか曞いおない
たあいい
この珍しい玫色の拉麺食う為に
腹を空かしお来たんじゃないか

泚文する
"卵も付けおくれ"

客は疎らだったので
案倖早く拉麺が来た

スヌプ、薄い玫、透明だな、油の茪が浮いおる
麺、これは黄色、瞮れおる、うん、普通の麺
色はあれだが
醀油拉麺だな

怀の䞊は
野菜の山が䞉分の䞀、チャヌシュヌ、支那竹、
珍しい、玫蘇が乗っおいる

そしお玫の卵、ど真ん䞭に鎮座

レンゲず割った箞を持ち
食べに掛かる

スヌプ、うん、普通だな、そんなに油っこくない
色は玫だが、味はそこそこの拉麺だった
しばらくズルズル啜っおいたが
ふず

"ちょっず、聞きたい。
この玫の卵、どこで仕入れおるの"

もしかしたら爺さん所の卵か

"それ、蚀えたせん"

なるほど、残念な返答
しかし、こちらも曲者だぜ
䞀぀、投げ掛けた

"その生産者はもしかしお
この拉麺を食うのを拒んだだろう"

""

"鶏も玫だったろう"

"
"

店員、ニダッず笑った

"酷く頑固だろう"

店員はもう俺を無芖した

こっちももう拉麺を平らげに掛かった

぀たりはマルク爺さんの䜜った卵だっお

そうだろう
よくこの店に提䟛したな

"頌んだ時、苊劎しただろう"

最埌に䞀蚀、投げた

"そうでもなかったっすね"

店員は
たたニダッず笑った

9、玫卵の茞送-Ⅰ

マルク爺さんから卵の茞送を頌たれた
しょうがねぇから頌たれおやった

地図を枡された

"爺さん、今の時代ぁ、携垯ありゃあ
これ無くおも行けるんだよ"

"そうなのか"

爺さん、ハタハタず笑う
旗が颚に煜られる様に

"だから、いらねぇよ、これ"

地図を返そうずするず

"いいから持っおけよなぁ
俺達は、ずっおも叀い人間なもんだから。
叀い傷ず埃だらけの
レコヌドみたいな人間なもんだから。
お前が地図持っおねぇず
䞍安なんだよ"

そうかたぁ、老人は敬うもんだ
同情から、黙っお地図を受け取った

軜トラックがあり
爺さんず䞀緒に
玫卵を積む

"さあこれで終わった
頌むぞ"

しょうがねぇなぁ 
取り敢えず、出発だ
しかし叀い軜トラックだ
途䞭でむカれなきゃあ良いが

玫の蟲堎から出発した

䜕だ、これ
CDが聎けねぇ
したった
CD持っお来んの忘れおた
でも聎けねぇんじゃあ、仕方ねぇっか

しばらく車を転がす

䜕だっけ目的地は
いけねぇな、ちゃんず堎所聞くの忘れおた
たあいい
携垯があるから
ハンドル片手に地図を広げる

䜕だこの赀䞞は
ここに行けっおのか
人の呜を䜕だず思っおやがるんだ

たあ、いい
俺の呜は倪陜ず䞀緒
気儘に䞊がっお
気儘に沈むのさ
今は気が向いおる

䜕が悲しゅうお
戊争真っ只䞭のガザにたで
卵運ばにゃならんの

たあ、いいさ
助手垭に偶然あった麊の穂を
煙草代わりに咥える

ダッシュボヌドを䜕気に開いおみる
埃が爆砎する様に噎出した

りェッホりェッホりェッホ
んテヌプがあるぞ

むヌグルスだ

むヌグルスか 

カセットを入れる
䜕お酷ぇ音だ
でも䜕か味があるな

悪くねぇ
うん、悪くねぇ

10、玫卵の茞送-Ⅱ

4、5日経った
玫の蟲堎を出お
こんな事になるんなら
もっず金持っおくりゃあ良かった
たあいい

腹枛ったから
卵䞀個くすねお
砎っお玫の生卵を飲み蟌んだ

ここ数日
それの繰り返しだ
出発しお翌日に
雚が降ったから
バケツ、
これが汚ぇのなんの
そい぀に溜めお凌いだ

党く銬鹿な事匕き受けたもんだ

途䞭、売店もあったんだが
先の事考えお
金は䜿わなかった

ガ゜リンは

これが
汚ぇ爺いだ
荷台にポリが10箱ぐらい
積たれおやがった
埀埩には充分だ

よし危険地区に入ったぞ
䜕せ、爺さんずこの
新鮮な卵食っおるもんだから
粟力が掻発なんだ

゚ヘヘ突っ蟌め

しばらく転がしおるず
すぐ爆撃にあった
ハンドルを無我倢䞭で切った
暪転せずに枈んだ
砲撃が倖れおたんだ

ザマみろ䞋手くそ

しかし、荷台の䞭、芋たくねぇな
䞀応、確かめるか
確かめおる間に
機銃で撃ち殺されるかも
いいや、気になるもんは気になる

玫の卵黄でベットリかな

だが様子が倉だ
䜕か聞こえるぞ
䜕だろう

荷台を開けおみるず
䜕だこりゃ
銬鹿なんじゃないか
目を疑った
信じられるか
どういう事なんだ

玫卵から孵っお
玫のヒペコがピィピィ喚いおやがる
あんぐりしお突っ立っおるず
次々に孵りやがる

これをどうしろっおんだ
爺いこれがお前の狙いか
狙っおたのか

マルク爺さんの笑い声が聞こえるかの様だ
そしおヒペコどもの喚き声
皆んなが俺をコケにしおやがる

こんなもん、今のガザに届けお
䜕になる
出鱈目だ、出鱈目もいい所だ

しかし、これは俺の仕事だ
俺は皆んなが考えおいる皋
いい加枛な男じゃない
䞀回匕き受けた仕事は
この地球が燃え䞊がったっお
党うするんだ

荷台を閉じお
トラックが動く事を確認するず
始動した

今床は撃たれないぞ間抜けめ
呜を懞けお
これをガザに届けるんだ

11、玫卵の茞送-Ⅲ

街に入ったぞ
呜懞けだったな
けど、無事に垰れんのか
知らねぇ、知らねぇよ
もう、䞀床匕き受けちたったもんだから

酷ぇな
行き亀う男達の廃墟
あっちこっちで男達の
怒声やら呻き声やら叫び声やら

女達は
いる、いるにはいるが
泣いたり叫んだりはしおいるが

ああ、戊争っおや぀ぁ
やっぱり男のするもんなんだな
痛感した

俺も男だ
故に血が激る

平和を指向する事はするんだが

これは本胜なんだ
きっず本胜なんだ

俺が呜懞けでここに来たっおのは
そう
本胜なんだ

この戊争に䜕やかや蚀いたくお
ここに来た蚳じゃない
ただ蚀われたから来たたでだ

ここで戊う互いの兵士
きっず誰もがよく刀らず戊っおるのさ
理由なく
生き死にが
理由なく

どうしろっおんだ

取り敢えず
䜕凊でもいい
困っおいる人達が集たっおいる堎所を
芋぀けよう

䜏民の殺意に満ちた目が
俺を芋る
圌らに殺されるかもな

いい加枛だもんな

人々の集団があった
そこに車を停めた

蚀葉は解らない
だが銃を持っおいる男に
身振り手振りで䌝えた

"卵を持っお来た"

""

殺されるんじゃないか
男の目の敵意
しょうがない黙っおたら殺される
急いで荷台を開いた

しかし

荷台を開くず

ピィピィピィ、だ

䜕だこりゃ
ふざけおるのか
しかし男達も
䜙りに状況が気狂いめいたものだったので
たたげたたんた
蚀葉を倱っおいた

そこに

子䟛が䞀人
荷台に来た
ヒペコの声に気づいお
興味を惹いたのだ

玫のヒペコを䞡手に取っお
その子は笑った
するず
隠れおいた子䟛達が
次々ずやっお来お
ヒペコを芋たり
手に取ったりしお
笑った

今出お来るな
危険なんだぞ
異囜の男が叫んだ
しかしお構いなしだった

男が俺の胞ぐらを掎んだ
"殺されるな"
盎感した

"これは䜜戊なんだ
出お来るな"

男達が叫ぶ
しかし今床は女達も出お来た
女の子、お姉ちゃん、お母さん、おばあちゃん
皆んな、玫のヒペコどもを芋に来た
そしお笑った

"これを枡せ"

マルク爺さんの声が聞こえた様な気がした
荷台の䞭に䞀通
手玙がある
それを男に急いで枡した
男はそれを匕き砎る様に開くず
読んですぐに涙した
そしお䜕故か俺をガッず抱きしめた

䜕が䜕だか解りゃしない
男達は手玙を読んだ男の呌び掛けで
集たっお荷台のヒペコを降ろした
俺も手䌝った

党おを荷䞋ろすず
早く行けず蚀う
蚀っおいるらしい
無我倢䞭でトラックに飛び乗るず
急いでここから立った

子䟛達ず女達が手を振っおいた

䜕が䜕だか解りゃしない
そしお生きお垰れるのか
解りゃしない

しかし手玙に䜕ず曞いおあったんだ

だが恐らく
こう曞かれおあったんだろう

"この混乱が終わるたで
この玫のヒペコが生きたなら
その卵を食べお䞋さい
成長した鶏を食べお䞋さい"

爺いそうだよな
そうに決たっおる
生きお蟲堎に垰れたら
取っちめおやるからな


第䞀章 宝食卵



1、アメゞストの卵

ある日
ゞュ゚リヌの䌁画展に出掛けた
叀代から珟代たで
䜕にかに惹かれたんだろう
よく行く気になったもんだ

人は光る物のある所に集たる

真倜䞭の
粉塵の音
モスキヌト

それず䞀緒さ
そい぀が光るから
䞀匹の蚊ずなっお集たった䞭の
俺

だがそれじゃああんたりだ
皮肉でギスギス人間の柔らかい郚分を刺したっお
鶏肉料理の䞋凊理じゃあるたいし

叀代の貎婊人がこれらを身に付けおた
果たしおどんな茝きを攟ったか
珟代の女性のトップがこれらを身に付けお
どれほどの矚望を集めおいるか

煩わしい
やはり、な

文章、ずいうか蚀葉、単語で
こちずら絵を描く者であるから
䜕が必芁なのかじっくり考えるんだ

その内
人生の今埌、悩み、䞍安など
光ず党く関係ない事に
すぐ考えが逞れる

楜しみたくないなら
来なけりゃ良かったじゃないか

蚊は光る所に集たるもんだ
そういうもんだ

その時
目を奪われた箱

卵だ
玫の宝石の

これは銖から䞋げるのか
ただオブゞェずしお楜しむのか

アメゞストだ

心奪われるその光ず透明さ

宝石には石蚀葉ずやらがあるらしい
知らねぇさ、そんな事
ただ、この卵には心を動かされた

䞀䜓、どんな職人がこれを现工したんだ

聞いおみよう
そう、い぀もの爺さんに

"知らねぇ"

䞀蚀で電話は切られたよ
圓たり前だ

だが、どうもマルク爺さんが
これを䜜った気がしおならない
嘘぀いおんじゃねぇか

もう䞀床聞こう

"俺はそんなもん、䜜らねぇ。
ただな、俺がもし
それを䜜った事があるずしたら、
そい぀は倱敗䜜だ"

぀たり

"りルグアむでの旅の思い出だ
そしおある貎い方に頌たれおな
この䞖で最も矎しい玫色を䜜っおくれ、ず
その結果だ
動機が間違っおる"

そうなのか

"そうさ、だっお
その石の䞭には
呜が入っおいないだろう
党おの矎しい物には
呜が入っおいるもんだ"

しかし 

"お䌑みよ、若ぇの
お前が芋たその宝石がもし本物だずしたら、
あらゆる意味でな、
お前の倢はその透明の玫がかった代物に
なるだろうよ
そん時
補䜜者っお奎は
滅ぶ、存圚意矩を倱う

そしお気が向いたら
たたこの玫の蟲堎に
仕事を手䌝いに来おくれ"

電話は終わった
俺は絶察に
このアメゞストの色の倢を
芋るだろう

そしお腹を空かせた兵士の様に
玫卵を喰らいに
玫の蟲堎たで
爺さんの手䌝いに行く

、宝食卵玫色の怪盗

そうしお俺はあれが欲しくなっちたった
だからパクる事を思い付いた

あの無䞊に透明な玫の卵を

その為にたず莋䜜を䜜った
玫のアクリルで
これを入念に仕䞊げお
あれず取り替えようっお蚳

停物仕䞊げおみるず

こりゃあ䞭々だなぁ
これでも充分なんじゃないか

いかんいかん
目的はあの玫卵だ
停物に目が眩んでどうする
しかし、いい出来栄えだなぁ

俺、この道のプロになろっかなぁ

いかんいかん
目的はあの最䞊のアメゞストをパクっお
写真撮っお、むンスタに䞊げお、
んで、んで 
どうしよっか
闇に流せばいい金になるかなぁ

たあいい
あんたり先の事は考えない

あの䌁画展の裏情報を綿密に収集した
あるセレブ達が倜、矎術通貞し切っお
パヌティヌ開くらしい

これが狙い目さ

しかし盞棒が欲しいな
爺さんに頌んでみよう

"おめえは䞀䜓䜕考えおんだ"

切られちたった

埌思い浮かぶのは
小田か あい぀ただ生きおんのか

電話しおも出やしねぇ

しょうがねぇから䞀人でやる

犯行は簡単だった
だっお無防備なんだもん
箱開けおセレブ達に芋せお
仕舞う盎前に袖の䞭の停物ず取り替えお
お終い

こんなに無防備だっおいうのは
぀たり金を腐る皋持っおるっお事
頂き

すぐに建物から出お
近所に䜏んでる男颚に化けお
歩いお垰った

どうだい、お月様
玠敵なアメゞストだろう
今宵、アメゞストの倜、
金持ち達ゃあ、
今頃このアメゞストの卵には及ばないが
そんな色した葡萄酒飲んでる
俺の䜜ったアクリルの卵を肎にしお

怪盗詩人

詩人は怪盗
盗む事は盗む
けど、あんたり悪意はねぇのさ

怪盗は詩人
詩を詠むは詠む
けど、他人に倚くは望たねぇのさ

家垰っお
しばらく手の䞭のアメゞストの卵を芋る

うん、五分で飜きた

むンタヌネットの海に投げ捚おた
そしお、これを次の軍資金にするか

しばらく朜䌏しよう
勿論、爺さんの玫の蟲堎で
玫の鶏達の面倒をみお
熱りが冷めるたで
バむトしよう

、宝食卵玫の矎女

マルク爺さんに拝み蟌んで
バむトに粟進しお
10日経ったか1月経ったか
1幎経ったか10幎経ったか

時間を忘れお逊鶏の仕事に没頭しおいた

そんなある日
1人尋ね人が来た

俺に䌚いたいだっお䜕者だ

爺さんに蚊いた
どんな奎だっお

そしたら爺さん、萜っこずしそうな目をしおやがる

だからどんな奎だっお蚊いおんだ

爺さん、口篭った
んおかしいな
䜕だか様子が倉だぞ

今玫卵集めお車に積もうずしおんだぞ
そんで、その埌、鶏共ず散歩だ
鶏の健康の為にな
爺さん、あんたがそう呜じたんじゃねぇか

ブツブツブツず蚀いながら
爺さんの家の玄関先にたで来るず

俺も目を萜っこずしそうになっちたった

䜕おぇ矎人だ
そしおお厚ら向きに玫のフロックず
赀玫のスカヌトをお召しになっお

いやはや、たあ 
溜め息しか出ん
しかし少し冷静になった

"䜕か"

䜕だっおこんな逊鶏堎に
堎違いったらありやしない

"あなたアメゞストがどこにあるのか
知っおいるでしょう。わたしに頂戎"

䜕を抜かしおるんだ、こい぀
その矎貌の感動も
あっずいう間に冷めちたった

"知らねぇよヌ、そんなもん"

誀魔化す、ず
しかし、もう爺さん所には居られねぇな
足が付いちたっおた様だ

"フヌ"

矎女、溜め息を吐く
いやはや、絵になるもんだ 
おっずっずいかんいかん
もう俺の色んな事はバレちたっおる

"あなたが手攟しおからその埌、行方䞍明なの"

䜕だっお⁈
っおその蚀葉を匷匕に飲み蟌んだ
危ねえ

"䜕の話をしおるんだか刀らんが"

くわばらくわばら
スッずがけお鶏んずこ行こ

"埅っお"

矎女が蚀う
矎人に匕き止められる、
これは䞭々悪くない
ぞぞぞ

"䜕だよ仕事があるんだよ
蚳分らん事には付き合っおらんねヌよ"

拙いな、䜕だか拙い

"あなたが持っおるかどうか 
ただ持っおるんじゃない"

いや、党く気分が良い
䜕かよく分からんが優䜍に立っおいるんだ

"䜕にも持っおねぇよヌ俺はむチ逊鶏堎の䜜業員だ"

するず、爺さん
ズむッず間に入っお来た

"おいおい䜕だか知らねぇが面倒事は埡免だぜ
おめえも䜕なんだ
俺に面倒掛けんなら
こっから出おっおくんな"

䜙蚈な事を 
拙い、雲行きが怪しくなっお来た

第二章 アメゞストを探せ


さあ、マルク爺さんがいよいよ苛立った
匿い半分でここで生掻しおたが
そろそろおさらばだな

「刀ったよ別に圌女の蚀っおる事は
よく刀んねヌが、䜕かこの俺も
䜕かに巻き蟌たれそうだ。
爺さんよ、俺ずあんたの仲だ。
ちょっずおさらばするぜ。
今たでここで働かせおくれおありがずうよ」

ヘェヌ、さあ次の朜䌏先だ急いで考えなきゃ
しかし、パッパず即断し過ぎたか
マルクの爺さん、今床は心配そうな顔になった
老人、心配な顔をするず
皺がたるで枊巻みたいになりやがる
それがこっちを情け無くさせる

「おめえ、い぀たでそんな事やるんだ。
いい加枛止めろよ。わりぃ事やったんなら、
なぁ、それこそ早く譊察行っおな、反省しお、
それで真っ圓な人生歩めよ」

ちっ益々情け無くなる
煙草に火を点けた
爺さんも箱をポッケから出しお
煙草を咥えた

するず女も煙草を出した
しかし先にサングラスを掛けた
サングラスを掛けおから
煙草を咥え、火を点けた

「ねえ、あなた、䜕も知らないんだったら
倚分倧䞈倫だず思うわ。
譊察の方は知らないけど、
倚分ここなら、ううん、
ここの方が寧ろ安党かも」

この 蚀っおる事が信甚ならん
倧䜓、お前がここにいる時点で
もう俺の身が危ないんだ
お前の足跡から色んな奎らが俺を远っお来る
远っお来るだろう

苊いな

「たあ、爺さん。ここいらで、
ちょっずおさらばだ」

煙草をあっちに投げた
爺さんは枋い顔をしおいた
蚀いおえ事が䞀杯あるんだろう
聞かなくたっお刀っおら
だからもう喋りたくねえ

「荷物を片付けお来るよ。
出来次第、出お行くよ」

爺さん、苊虫噛み朰した様な顔だった。
そしお唟なんだか痰なんだか
刀らん物をカッず地に吐いた。

「ねえ」

あん女だ。
䜕かただ蚀いたい事あんのか
しかし矎しい。
こんなに矎しい女を
生たれおこの方芋た事がない。
ただ、モノの話になった時の
衚情ずの萜差が凄かった。
欲望の火が着火した拍子の圌女は、
どこにでもいそうな女だった。
あのガッカリ感は䜕だったのか 
考えおしたうが、぀たりの結論は
俺も単なる男で圌女も単なる女
それ以䞊でも以䞋でもない
ああ、神様よ。
この䞖っおのは
䜕おぇ぀たらねぇモンなんだ
䜕か、楜しいっお事は、
あっずいう間に川䞋に流れお行っちたう。

そうよ
俺は川蟺の石瀫にしゃがんで
流れる氎を芋おいる
感情ず時間が川でよう
芚えおおく間もなく
流れお行っちたうのさ

詩人が䞍貞腐れお
石を川面に投げた

「ねえ」

䜕だし぀こいな
これからやる事が䞀杯あるんだ

「あん」

「あなた、ずっおも面癜い方ね」

煙草を口元に添えお
ニダッず笑っおけ぀かる
䜕だ、こい぀うるせえなぁ

「いいや、面癜くも䜕ずもない。
芋せ物じゃあねえんだ。
アメゞストを探しおるっおんなら、
ずっずず他を圓たっおみな。
ずにかく、俺は持っおねえんだ」

二人に背を向けた
離れにある
俺の仮䜏居に向かっお歩き出した
ずにかく旅立ちの支床だ
たさかな 
そしお随分ず久しぶりだ

旅立ち

旅、あんたがたどう思うよ
自分で予定立おお行く旅なら楜しかろうよ
けれど、俺は人生で䞀床もそんな楜しい旅を

した事がない

いっ぀も䜕かに远い立おられお
折角芋぀けた安䜏の地も
出お行かざるを埗なくなる

いっ぀もさ、いっ぀も
俺は䜕かに远い立おられっちたうんだ
それが俺にずっおの

旅

楜しいもんなんかじゃ
決しお、決しお、ない
しかし

俺こそ真の意味で旅をしおいる者だず
自負しおる

玫色の鶏が前を暪切った

あばよ、お前ら

さよならの時は、そう
目に映る䜕だかんだ
党郚愛おしくなっちたうんだ

さよならず
残りたき思慕
川に投げ

そしお、歩き出す
そうよしょがっくれおられねえ

じゃねぇず、ずっ捕たっちたう
ずっずず逃げねえず
おうそうよ

感傷は
埌ろ髪匕く
䞖迷蚀
来る䞖に匕くらむ
桐の花札

軜トラ、パクっお裏から逃げよっかな

離れの借り郚屋ぞ戻った
随分働いたな、ここで
窓からの光が埃で靄が掛かっおいる
それすら愛しい
旅立ちのこの時

郚屋のあちらこちらに散らかる
絵のスケッチ
時間を芋぀けお描いおいた
䌑憩の合間
そしお倜

埃が溜たっおいる
埃が溜たっおいない物は
最近描いた物

ひっそりず
玫の鶏の面倒芋ながら

マルク爺さんも絵を描く
これが盞圓の腕前で
舌を巻く
爺さんの絵を
俺は芳たが

爺さんは俺の絵に䜙り興味を持っおはいなかった

だが
䜕も蚀わなかった
やめろ、ずも続けろ、ずも
時折、ふず
爺さん、長く穏やかな心で
そしお諊めを、意地悪な様な枩かい様な
目で芋守っおいたのかも知れない

人間、そんな環境があったらなぁず思うものだ
俺は、ここで、そんな现やかな

幞犏を
幞犏な時を
過ごしおいたのか

惜しいな

貧しくずも
富裕でも
働いおいる仕事が
䞊のものであろうず
䞋のものであろうず

ここで過ごした日々は
最良の時だった

そしお
あちらこちらにある絵を芋お
どうしお絵を描いおいたのか
それを思い出そうずしお

思い出せないんだ

これは話しおおこう

実は俺には蚘憶がない
どういう事か詳しく説明し難い
蚘憶が党くない、ずいう蚳ではない
幌少期の頃の蚘憶はある
しかし俺は思春期の時に自殺した
そこからの蚘憶が消えおいる

䜕故生きおいるのか刀然ずしおいない

たた、その10幎ぐらいの埌
再び自殺した気がする

よく芚えおいない

そしおたたその埌
もう2、3の死があった気がする
その死んだ蚘憶の
ある぀は逓死
他は粟神的に瀟䌚から远い詰められお

本圓に自分が自殺したのか
本圓に远い詰められお死んだのか

党おがよく刀らない

ただがんやりず
死ぬ前の自分は
絵を描いおいた様な
気がしおいた

この玫の蟲堎で
働き始めお
それを匷く感じ

絵を描き始めた

蘇った蚘憶もあれば
倱われたたたの蚘憶もある

もう少し続けおいたかったな

だが

あばよ玫色の蚘憶よ、俺の絵よ
たたどっかに行く矜目になっちたった
塗り付けた玫色が
俺の生きおいた若干の蚘録ずなるだろう
もしかしたらたた䌚えるかも知れない

そうしお
珟ナマを詰め蟌んでいたバッグを持った
アメゞストの卵を流しお
埗た金さ

そうそう
あずこれも持っお行くか
念の為

車、借りるか
あの軜トラ
そういやあれで冒険にも行ったっけ
毎日毎日、卵の出荷やあれやこれや
殆ど俺の盞棒だったもんな
珟金で亀換するか
金奮発しお貰おう

埌は、たず䜕凊ぞ行くか 

戻っお来た
「おヌい爺さん」
ん䜕か倉な顔しおやがる
「爺さん、悪いんだが あのトラックをよう」
歩きながら蚀うず

止たっお

あん䜕だ
女が爺さんの埌ろから顔を出した。

「あにやっおんだおめヌは」
「動かないでっお蚀っおるでしょう
お爺さん、死んじゃうよ」
「あヌん⁈」
䜕をほざいおるんだ、この女
っお、爺さんを芋るず
腐った顔しおやがる。
んヌ、状況が芋えお来た。
「あなた、本圓は持っおるんでしょう
アメゞスト枡しなさいよ」
ニダッず笑いやがった
生意気な奎だ
俺は倧䜓こういう女がむケ奜かないんだ
俺が奜きなタむプは、
そう 物静かで知的で、
欲のよの字もないしおらしい女なんだ
えっず、䟋えるなら 
パッず出お来ねぇな。
兎に角生意気だ蚱せん
「んなもん、持っおねヌよヌ
いい加枛にしろ」
「いい加枛にするのはアナタ
ねえ倧人しく出しなさいよ
アメゞスト」
「アメゞスト、アメゞストっお
うるせえなぁ
持っおねヌっお蚀っおんだろ
あんなもん持っおたっお
䜕も面癜くもねヌぞ。
鶏共の䞖話しおっ方が
遥かに楜しかった
売っぱらっちたったっお
それは本圓だよ早く爺さん離せ
埌は䜕もしねヌから」
䜕か面倒くせヌ状況になっお来ちたった
そもそも䜕でこの銬鹿に
有利に状況運ばれちたっおるんだ

いや萜ち着け
たず爺さん助けなきゃ

するず
「おいおめえよう」
爺さん、口を開いた。
しかも䜕故か俺に察しお怒っおねぇか
あんだよク゜ッ
「あん」
「いいか、良く聞け。
おめえはよう、譊察行くんだ、
この足でな。そんでな、
しっかり反省しお来るんだ。
そんでな、ここに垰っお来い。
おめえ、もう鶏の䞖話の仕方
刀ったろう
しかも俺んちの特殊な玫の鶏共だ。
おめえの他には
誰もコむツらの䞖話の仕方知らねぇんだ。
だからな、おめえよう、埌は頌んだぞ」

そう蚀うが、爺さん、埌ろの女を掎みに掛かった

やべぇんじゃねぇか
そう思った、その瞬間、
爺さんがドゥっず倒れた
䜕が起こったんだ
銃声はなかった、
だから銃を圓おられおたのではない
刃物かしかし刃物なら、
爺さん、のたうち回っおいる筈だ
䜕だ䜕だ⁈
そしお怒りが
この俺の右手に怒りが

「おいお前爺さんに䜕した⁈」
怒りず興奮で
もう倒れた爺さんの方に向かったが。

女が持っおいたのはスタンガンだった

この女ぁ滅法頭に来た
だが今床は短銃を
ハンドバッグから出した。

俺も生き物だ、単なる生き物だ。
銃を出されお止たっちたった
䜕お意気地のない
俺は俺自身を女よりも
遥かに軜蔑した。

この野郎
俺はポッケに入れずいた
ある物を取り出した。

「動かないでっお蚀っおんでしょ
その手を動かさないで」

女の目が真剣になった。
さっきたでの䜙裕はどこぞやら。
さぁ、こっからだ。

「おい。お前が欲しがっおるもんは
これじゃないか」

女の目が芋開かれた。
チャンスだ
掛かったぞ

ゆっくり䞊着の
右ポケットから出した。
朝日が昇る様にスロヌに、
ゆっくりず。
䞋手打っお急に出したら
撃たれっちたうからな。

ほヌら 
これが
お前の
欲しがっおいる
もんだろう

女の目は春は曙、
たさに早い朝焌けの玫色に焌けた。
それは新幎の暁の劂く。

その時 
俺は女の矎しさの、
たた別の新しい面を芋た気がした。
物欲で人間、
こんなに茝くものなのか

䞍思議だ。

だずしたら
人間の矎しさっおや぀は
䜇たいや䜕か、埳や䜕か、
そんなものの䞭にこそ内圚しおいる、
ず思い蟌んでいたが。

物欲に燃える女が
こんなに眩いものなのか。

初めお知ったな。
こんなになるたで生きおは来たが。
貪欲な人間にはほずほず倊んでいたし
そしお芋たくない皋
ツラ合わせたくない皋
軜蔑し切っおいた。

だが、䜕の巡り合わせか、
呌びもしないのに
向こうから来やがった。
刀らんもんだ。

それを呌び寄せたのは、
極䞊の现工の技が為された
アメゞストの卵

この宝石は
䜕か思いも寄らないものを
惹き぀けるのか
䞍思議なもんだ

玫の
暁袂より
垣間芋せ
かわさんちり颚
ゆめはかりごず

「アメゞスト⁈」
女は実に晎れた枡った顔をした。
少女の様だった。
子䟛の笑顔は無垢なものだが
倧人の笑顔には
どこか圱がある、
そう思っおいたが。

しかし邪な欲望が
人をここたで茝かせるならば
もしかしたら
゜ドムもゎモラも

至䞊の曲矎の斜された郜垂であったかもな

悪埳ず歓喜ず圓然の垰結ずしおの地獄

「ほらおめえが欲しがっおるモンだよ」

「頂戎」

短銃を䞋ろしたぞ構えが緩んだ

「ほヌらよ‌」

あっちの方ぞ攟っおやった
思いっ切り

女はたるでチワワの様に、
䞀目散に
玫の流れ星を远いかけお行った。
その䞍様な埌姿を芋お
少し吹き出しおしたった。

だがすぐに爺さんの元に向かった

「爺さん倧䞈倫か⁈」

爺さんの倒れおいる偎に駆け寄り
意識があるか呌び掛けた

爺さん爺さん倧䞈倫か⁈

りヌッ

良かった、意識はあった
どうやら女のスタンガン、
電力は絞っおいた様だな
臎死量は避けたか

「爺さん、倧䞈倫か」
「りヌン」
「良かった䜕ずか倧䞈倫だな
そんでよう俺にも時間がねぇんだ
ごめんよ爺さん
䞖話んなった
心からありがおぇっお思っおっから
んでな意識がこんな時に悪ぃんだが、
ほら」

バッグから札束を掎んで出しお
爺さんの胞ぐらに抌し蟌んだ

「こりゃあ今たでの䞖話代ずあず、
悪ぃあのトラック乗っおっから
これで新しいモン買っおくれ
足りねぇか」

バッグからもう䞀束出しおたた抌し蟌んだ

爺さん、朊朧ずしながらも胞ぐらから
札束を出そうずした
その手を無理矢理匕き剥がした

「爺さん悪いがもうお別れだ
申し蚳ねぇ
だがこれが俺流の逞別、別れ方だよ
じゃあな」

急げすぐにトンズラだ

「おい」

爺さんのか现い声

「おめえよう 譊察に行くんだ 
そんで、垰っお来るんだ 」

これ以䞊、聞いおはいけない
爺さんの埮かな声を
逃げ遅れる
いや

そうよ
これが別れだ
これがさよならだ

さよならなんだあばよ

駆け足で軜トラックのある所たで走った
圓面、このバッグの䞭身がありゃあ
心配いらねえ

そしお
連絡を取らなけれゃあならない奎がいる

シェン、密売商のシェンに
どこでどうなっお
アメゞストの卵が
流出した
奎に聞かなけれゃあ

埌は、頌りになりそうな
いや、あんたり頌りにはならねぇが
小田ず連絡を取るか
あい぀は誀認逮捕の釈攟埌
どこに行ったか刀らねぇ
連絡も取れねぇ
必死に捕たえる必芁もねぇが
捕たえずく
䜕かの圹に立ちそうだ
䜕かそんな勘が働く

っお䜕だ⁈
遅れたか
トラックに゚ンゞン掛けお

さヌ、しゅっぱヌ぀
っおそん時

女がトラックの前に立っおやがる
怒っおる、怒っおる
いやぁ、凄え圢盞

女は俺の軜トラの前に
立ちはだかったず同時に
アメゞストの卵を投げお来た
そい぀はフロントガラスに圓たっお
どっか行った

ああ、勿䜓ねえな
折角俺が腕にペリを掛けお䜜った
アクリルの卵
結構手間暇掛けたんだぞ
癪に障る奎だ
しかし、あのレプリカを
すぐに芋分けたっおぇ事は
それなりの目は持っおいる様だな

「あんな物」
女が叫んだ
うるせえ、知らねえよ
隙されたお前が悪いんだろ
クラクションを鳎らした

ブッ

それは曎に女の怒りに
火を泚いだ 
のか

プッ

女は吹き出した
そしお

アヌッハッハッハ

笑い出した
䜕だ
ずうずうダキが回ったか
ずにかく邪魔だ
もう䞀床クラクションを鳎らした
だが腹を抱えお笑い続けおいる
うざっおぇ
もういいや
こい぀避けお行く
ハンドル回そうずしたその時

「ねえ」
䜕だよ〜、本圓にうざっおぇな
段々頭に血が䞊り始めた
黙っお女を睚んだ
「ねえあんた、やっおくれたわね」
たた 少女の目ぇしやがった
䜕か、悪戯しおバレお怒られお
そんで、しらばっくれおる少女の目だ
面倒くせ
もう無芖しお行こう
「止たれ」
たたチャカ出しやがった
だが、䜕故か今床はビビらなかった

䜕でだろうな

頭の䞭で䞀瞬だけ自己心理を纏めおみた

①2回目である

②女は爺さんに圓おたスタンガンの
電力を絞っおいた

③䞀回隙くらかしおやったから
少し優越感がある

④トラックに乗っおいる

こんなもんか
だが、そうそう

⑀色んな奎ず連絡取らなければならない

⑥行く先をただ考えおない

こんな事をボダボダ考えお
女の蚀っおる事が䞊の空だった

「あなた、やっぱりわたしの思った通り
面癜いわ」
面癜いからなんなんだ
こっちはさっぱり面癜くない
おか、邪魔だ
蜢き殺すか

「ねえ組たない」
組たない
䜕の事だ
䜕蚀っおんだ
「わたしず」
わたしず
え
どういう事
わたしず組むっお 

マゞかよこんな矎人ず
さっきたで鶏匄っおた
土から掘り出したばかりの
ゞャガむモみたいな俺が

「どっか行け。お前ず組む気なんおない」

䜕でこう蚀っちたうのかなぁ
クリント・むヌストりッドが蚀ったら
カッコいいのに
本音は
そりゃあ組みたいさ
䜕で拒むかっお
そりゃあ、俺も男だもんよ

これは本音の本音なんだ
ちょっず今それどころじゃねぇ
デレッずしたいよ、出来れば
でも違うんだ

本音の本音
男にはそういう時がある
ニヌル・ダング掛けおくれよ
あるかな
爺さんのテヌプのコレクションの䞭に
CSN&でもいい
ちょっず男には
"男"
やんなきゃいけねぇ時がある

「どっか行け⁈」

女はびっくらこいた
䜕だ倉な事蚀ったか

「 」

䜕だよ〜うざっおぇなぁ
もう行かなきゃなんねぇんだよ
アホみたいに突っ立っおんのがよぉ 

「邪魔だどけ」

早くこっから出お
シェン、そう、先ずはシェン
奎に連絡取んなきゃ
䞀䜓、どこでどうなっお
こうなったんだ

アメゞスト
アメゞストの卵
どこ行った

アヌッハッハッハ

たヌた笑い出しやがった
䜕かのビョヌキか
止たっおるず拙い
爺さんの事も心配になっおきた

「あんた、ホンット面癜い
このわたしに向かっお
どっか行け
このわたしに
マゞで信じらんない」

たヌだ笑っおる
䜕様なんだ
そんな偉い身分なんか
知らねぇよ
倧䜓、んな身分なら
こんないかがわしい件に
銖突っ蟌んで来ねぇだろう

しかし、䜕モンなんだろうな、この女

いかんいかん
止たっおるからだ
䜙蚈な事ばっか考えっちたう
んヌだよぉ 

するず

女、隣の助手垭に
䞀瞬
本圓に䞀瞬
たるで猫がスルッず狭い所から
郚屋に入っお来た様に

「䜕だお前」
「䜕だアヌッハッハッハ
いいわ、早く車出しなさいよ」
「車出しなさい、だぁ」

「あんたず䞀緒にいるず
䜕だか面癜い事
沢山ありそうだわ」

あ、たたチャカ出しお
俺の方に向けた
ここで撃たれたら即死だなぁ
したった
ボケッずしおた
しかし、間近で芋るず
本圓矎人だなぁ

瞳が日に圓おたルビヌみたいに
燃えおやがる

向けられおるモンがダバい
いっそここで殺された方が楜かもな
面倒くせぇ人生だった
自分がどこの䜕モンなのか
刀らねぇ人生だったんだから

だから暫く
女にガンくれおた

女は
こい぀も䞭々のタマ
その燃えたルビヌの瞳を逞らさずに
真っ盎ぐ俺の目を芋た

いかんいかん
䜕だこれ
倉だな
惚れっちたう
ハハハ、本圓に倉だな
党く惚れた晎れたな状況じゃないのに
状況が出鱈目だったから
倚分俺は少しの薄ら笑いを浮かべおいた、
ず思う

䜕故か女ず俺は芋぀め合っおいた

「早く撃お」

しょうがないから蚀った
だっおもう面倒くせぇんだもん
今殺されたら
逃げるも䜕もない
党郚おしたい

その時、眠っおいた蚘憶が

䞀瞬のフィルムのスチヌル
これは、そう
䜕だっけなぁ

『アッカトヌネ、どんな気分だ』
『ああ、悪くない』

䜕の映画だっけなぁ
よく芚えおない
それから、内容も思い出せない

「早く撃お」
女は玠っ頓狂な顔をした
「ああ。早く撃お。
これ以䞊生きおたっお仕方ない」

・・・

沈黙。そしお 

アヌッハッハッハ

たヌた笑い出した
よく笑う女だ

「おかしヌ
あんた、本圓におかしいわね。
殺されたりしおいい蚳」
女はチャカを䞋ろした
䜕か戊意みたいなモンを喪倱した様だ
「殺されたりしお か」
ああ、向こうの厩舎、玫の鶏ども
卵食ったり
朰しお鶏肉食ったり
絵を描いたり
爺さんずは殆ど喋らなかったが
䞀緒にメシ食っお

玫色の思い出が幞犏なんお

「いいんだ。殺されたりしお」

俺、䜕か項垂れお
俺、䜕か逃亡する気が無くなっちたった
䜕だろな
このトラックの運転垭ん䞭
䜕か知らねぇけど
静謐な雰囲気になった

顔を䞊げお
蟲堎の広い倧地
少し気を取り盎し
女の方を芋た
女の顔が
䜕故だろう
穏やかで優しかった

さっきたで
煩悩の炎に燃えおいた女がだぜ

女はサングラスを掛けお
煙草を咥えた
火を点けお
フヌッず

「殺されたりしお、いいの」
りフフ、ず
答えんのが面倒くせえ
だから黙っおた
女はサングラスの奥で埮笑湛えお
「䜕か広々。ここ」
そりゃあ蟲堎だもんよ
しかし、ここずもおさらばだ
俺も䞀服

フヌッず 

「ここで隠れおいる間、䜕しおたの」
だから答えんのが面倒だっお
無芖無芖
「人が嫌い」

そうだなぁ 
そうかもなぁ 

倧䜓、人っお䜕だったっけか
面倒臭くおよぉ
人のプラむベヌトを穿り出しおよぉ
自分の楜しみだけに生きおおよぉ

䜕か楜しいか
そしお 
俺、自分の人生、楜しいか

「あなたさぁ、
生きおおもしょうがないっお、
それなら、
わたしに雇われなさいよ」

「雇われる、だぁ」

驚いお圌女を芋た
本圓に玠晎らしいぐらいの矎しさ
たるで絹のカヌテンの様な髪
瞳の光が今床は氎晶の様に芋えた

男は匱いんだ、こういうのは
黙っお煙草をもう䞀吞いしお
癜い煙を吐き出す

りフフ

女が笑った
それは、䜕だろうな
小さな小さな玩具の教䌚の
鐘の音の様に聎こえた

䜕か理屈じゃあなかった
確かに女は矎しかったから
偎にいたい、ずか
それ以䞊のもんも䞋心が反応した事はした
だが、倧袈裟かな

小さな小さな啓瀺を受けた気がしたんだ

懐かしい、『ブルヌス・ブラザヌズ』のあい぀
あい぀皋ド掟手にはなれやしないが
俺は俺に䌌぀かわしい
现やかで繊现な綺麗な鐘の音を聎いた

「ハッハッハ
解ったよ、ネェちゃん
俺はあんたに雇われるわ」

俺、䜕か久しぶりに笑った
子䟛の時以来かな
ああいう感じで笑えた

校庭でよう
皆んなでサッカヌやっおよう
䌑憩で皆んなで䞀緒に
゜ヌダやらコヌラやら飲んでよう
皆んなで笑った時みたいに

女も笑った
䜕だ、二人
小孊生のカップルかよ
ハッハッハ

✍フォロヌずいう支持、支揎はずおもありがたい。曎なる高みを目指しお『レノェむナ』をクリ゚むティブな文芞誌に育おお行きたい。🚬