🐉衣装歴史学 其の一、坂本龍馬 六十一〜七十まで

六十一、

ここで中岡慎太郎について踏み込む、というか歴史学者装って資料追究する訳ではない。飽くまで“衣装歴史学的”に直感的邪推を持ってその道を辿るだけだが。

生い立ち、経歴は省略。功山寺の反乱の時、共に都落ちした公卿を守護していた様子だ。何か踏み込み難いのは、まあテーマの坂本にしろ、一つの事に的を絞って活動していたのか、いや違うだろう、と。かなりの量の“副業”的任務をこなしていた、いや、こなし切れていたかも疑問だが、兎に角よく判らない件を一人一人数多く抱えていた事はみて取れる。故に中岡、公卿達の守護のみに当たっていたのか微妙である。恐らく諸説ある。そしてもっと恐らく、功山寺の反乱に参戦していたか。更に更にの恐らくで、多分資料を厳密に追えば90%方参戦している。何と言っても、京の政変劇及び蛤の御門にも半ば長州勢と心中物で参戦していた血気盛んな男だったのだから。

ただ功山寺にのめり込んで参戦し切れてはいなかっただろう、と当筆者の提言。というのは、元を糺せばやはり最重要任務の公卿守護が主であっただろう。徹底抗戦派の精神的支柱の三条公以下、とあれば徳川恭順派に狙われるのは確実だった。命は取らないまでも、この公卿達を保護して京に安全に帰還頂く為に、狙われただろう。それから護らねばならない事、主命である。

功山寺の反乱は徹底抗戦派の勝利で終わる。長州藩政執行部が徹底抗戦一色となる。この時点でも長州、半ば破滅覚悟の舵切りなのだが、兎に角一致した。

ここから、どうも中岡個人の“主命”の様な物が変わった様だ。

歴史後追いの我々から見ると、“薩長同盟”ありきなものだからそっちの方面に八面六臂するんだろう、と疑いなく。しかし見方を変えれば、公卿の守護の重要任務を外された、となる。そしてそれ以上の重い任務が彼に課された、とそう細かく見よう。

この坂本龍馬追いの論考だが、やっとの事、この幕末最大のバディ、坂本・中岡の話に入らねばならない。

しかし冷たくプレ段階を整理する。

この二人は、この時点まで恐らくほぼ接点はなかった。活動のベクトル、個人思想、全く異なる。仲は良かった、とはちらほら散見するが、何せ“人たらし”の坂本龍馬、あまり誰それと仲が悪かった等の話を聞かない。岡田以蔵でさえ知己があったとか何だか、有名な眉唾話、勝のボディガードを岡田に頼んだ、なる物まであるぐらいで。

坂本は瑞山とは仲が良かった、つまり上下もなく、同輩であった、と。しかし、これは当時の土佐では非常に特殊な事で、坂本以外の男達皆“武市先生”、“瑞山先生”と呼びその教えと思想的指導を拝聴させて頂きありがたやありがたや、な物だった様だ。

“何でこいつが瑞山先生と屈託なく話せるのか？”

皆、そう思っていたらしい。恐らく、中岡も。

中岡は瑞山心酔の若者、そして更にその格上の長州の久坂儀助の心酔者、更に純粋攘夷思想の体現者、真木泉へと、尊王攘夷の道まっしぐらに疾走していた。

それに比して坂本のキャリア…何をやっているのか…勝の所にいたと思えば幕府の海軍操練所に在籍していたり。まあ、容堂主導の土佐一国海軍・海運業強化の流れはあった事はあっただろうが。中岡に坂本の行動を理解・把握する事は無理だった筈だ。

そして年齢も意外に結構離れている。かなり坂本の年下の中岡。

大雑把に考えて、功山寺の反乱が接点の遠いこの二人を結び付けた。薩摩抱えで運用は長州の微妙な闇貿易の船に、“あいつ”がいた。つまり武器の流れの最中に中岡もいた。公卿警護を離れて。

“おんし、何故ここにおるが？饅頭屋はよ？”

“饅頭屋は死んだがよ”

“死んだ？”

“おう、腹かっ捌いて果てた。せんかたなくあしがこん船、預かっちょる”

“そうか…”

小説にしてはならないので、今回ここまで。

六十二、

現代で言う“人事異動”なのか？あまり定かではない中岡の異動。まあこれもきっちり調べればあるにはあるだろう。しかし筆者の邪推推測として、同伴公卿から相当信頼のあった中岡を外す、というのは…首を捻る。こういう人は外さずにぴったり殿上人に付けて安心させて然るべき。という事は三条公及び同輩も中岡を側から外す事に同意した、と見なければ。何のどういった理由で？信頼厚い中岡を離してまで、彼にやって貰うべき件が発生した？それは公卿にとっても長州にとっても、利なる事大な事柄？更に進もう。

功山寺の反乱後、いや成功後、一気に躍進した人物。これも多く意見はあろうが、ここでは桂小五郎とする。聞多なども飛躍出世した口であろうが、ある意味桂もここで“桂小五郎”になったとして異論なかろう。ここまでの長州の若い集の“顔”と言えば儀助だったが、選手交代が成された。ちょっと逸れて、“長州の顔と言ったら晋作以外いねぇじゃねえか！”と来そうだ。まあ筆者も晋作が好きだからそれでもいいが、一歩冷静に控えて。高杉という男は本当に“遊び人”だ。ちょっと経歴調べればすぐ判る。兎角、責任職を嫌いすぐバッくれる。人気、カリスマ性、それは段違いで高杉にある。だが本人、“顔役”になる事にサラサラ関心がなく、いや寧ろ嫌がっていた様だから。奇兵隊（というより徹底抗戦派軍、俗に言われていた“正義派”軍の総称として）の総督になる気もなかったという…しょうがない奴だ。

桂の役職的上昇、そして第二期の徳川からの懲罰戦。相当に桂への負担が掛かった事間違いなく。

筆者個人の幕末期人評。
幕末期第一の人物は桂小五郎である。
知勇兼備。容姿端麗。非の打ち所がない。
御一新後、その命が長くなかったのが残念である。

吉田塾には正式には在籍していなかったらしいが出入りはしていた様子だ。松蔭と言えば弟子の人物評。まあ結構偏っているのと恣意的（思い込みか）であるとは思うが、後世我々、当時の長州人士の性格（キャラクター）を探るには結構な資料だ。有名な、ほぼ長州の志士のほぼキャッチフレーズとして通った物と言えば

吉田塾の双璧
久坂と高杉

では在塾籍なき桂に対する物はあったのか？あるのだが、最高の評価である。まあ寸評であるので調べてみて読んでみるに時間は取らないので、関心の湧いた方には勧める。まあこの情愛の深い指導者、教職的平衡感覚で評の仕方に非常に行間に複雑な物が垣間見えるが、桂の評に関しては極めて冷静。儀助、晋作に対しては“もそっとこうであれば…”が豊潤に詰まっているのだが、桂に対しては“百点満点。非の打ち所がない”という感興が淡々と綴られている。

人物評、の点で少し逸れる。
まあ所謂『幕末期』。英雄乱立で歴史好事家各人思いが分かれる所だ。生きていれば生き残ったのとは比べ物にならない者がかなりいた、と熱くなるのが常である。例えば、橋本左内など。

その中で一人。
長井雅楽…

後、ほぼ新政権の最高権力者格となる岩倉をして

“長井は、あれは大久保や桂なんぞ比べ物にならんぞよ”

と言ったとか何だか。
功山寺の反乱後、自決する。この理由が不明瞭。徹底抗戦派の山縣、赤禰等からはほぼ殺意を持たれていたらしい（晋作は微妙）が、客観的に死んで責任取る様な役職的絡れはなかったとか何だか。長州志士の英雄伝説中、相当な悪役として置かれるが、これも調べてみてその“衣装”が剥がれた次第を報告。

今段の本懐に戻り、中岡の異動、これに桂の役職出世を絡める事を臭わせて〆る。まあしつこいが、聞多の出世上昇もある。このまま筆を進めたくもあるが、“バディ”としての坂本、それに対して中岡・桂の関係は“縦”、実質“上司と部下”に当たるか？
次稿まで待たれい。

六十三、

功山寺の反乱で藩の意志がほぼ統一した長州が所謂“第二次長州征討”へと進む。ほぼ滅亡覚悟、御家取り潰し、幕府にとって危険活動家も負けたら命はない。ただ負けない為の凡ゆる努力は為されていた。後から見る歴史ではなく、同時代性“コンタンポレーヌ”に歴史を見る。故に所謂“薩長同盟”は長州延命の四方八方、手に触れる物ならばなんでも、の中の一策として、そこに土佐の一団の地下活動が見え隠れ、徳川執行部から見れば土佐脱藩者の小さな一団の活動など目に入らなかっただろう。

しかし第二次長州征討の機、長州の執行部の活動のフレキシブルさは特筆物である。時間がある方はざっと長州側の兵力の数を見てみるといい、各部隊10から100の話にならない小兵隊の寄せ集めだ。そして数値的な物から目を離して文章による記録に関心を移せば、執行部内のガタガタさえなければ戦としては問題になり様がない“袋叩き”状態。

確認で留意点として、所謂“薩長同盟”はこの征討戦の後にオフィシャルに成立する。

桂は第一次期及び功山寺期は自国ではなく近隣各国に潜伏していた様子だ。これは恐らく歴史家ははっきり明示し得ないだろう。何処そこにいた、とは見受けられるが恐らく本国にも頻繁に出入りした筈で、“いた”というよりかは一時滞在の記録。まあ桂のみならず高杉、俊輔、各人北九州にいた長崎にいた九州全土を回っていた四国にいた、収集付けようがない。またの恐らくの邪推で本人達も自分が一体何処にいて何をする為に生きてるのか、判らぬままただ無我夢中で“生きていた”のでは？“青春”であるな。

晋作、俊輔の兄弟分は置いて、狂介・桂はちとニュアンスが違うだろう。“青春”では“生きて”いなかったかと。山縣などはこの時期のお膝元の実戦に於いてほぼ前線で指揮を採っている。桂は…

江戸川乱歩の有名な創作アイコン・フィギュール

『明智小五郎』

これは桂小五郎がモデル
こんな事は歴史好事家の方に付言説明する事、烏滸がましく、申し訳ない。

京都の政変・蛤御門の乱後、都内及び周辺に散った同志達を潜伏的に救命行動を採っていた、という。信じ難い勇気と腕力と知力だ。筆者個人的に晋作の方が好きだが、この責任感・使命感・正義感には遥かに桂に軍配が上がる。ほぼ少年マンガの主人公然、ど真ん中の正義感。それをフィクションではなく地でやっていたのだから。まあちょっと穿って、何とか残党を集めて本国に帰還させ幕府との戦いの兵力に当てる、との目論見もあっただろうが。

桂と中岡

故に、中岡慎太郎とは桂の表舞台登場・役職的躍進がなければ所謂“中岡慎太郎”にならなかった、と思うのだ。“故に”、の前が抜けている？では取り付けよう。三条実美と同輩公卿の都落ちに同伴していた中岡。そして純粋尊王攘夷思想の真木と共に戦っていた中岡。桂には“下”から見る視点も養われていた。

人の真の努力と本懐は、その人の背中を見ている人に、言葉ではなく直感で感知される。

その人を助けず、応援もせず、寧ろ反対に凡ゆる意地の悪い遮りをしようとも、そんな輩にすら、うっすらその努力と本懐は無意識下に映像として録られている。

薩長間の秘密裏の闇交易、藩内の動乱、土佐脱藩者側の頭目の近藤の自決、藩の執行部の交代・若手の躍進、その中で聞多もこの密貿易の件に掛ける比重が減ったか？聞多は聞多で七面六臂している。ここに誰かを当てて置かねば薩摩経由の武器が滞る恐れがある…

『中岡君！』

呼び掛けたその背中に、真木、来島、そして…
振り返ったその瞳に、儀助、そして…

“この土佐の男の魂には僕達の同志の魂が宿っている”

一石、公卿随伴から中岡を離したのは実質的に桂だろう。

六十四、

かなり活動家としても有力な若き土佐脱藩者の中でも中岡が“ここ”を実質担当する。長州側の窓口としての顔となったのは前稿に臭わせた様な理由か。まあおさらいで、聞多の過重労働、桂の躍進、中岡の信用等で上手く嵌った、と。そしてもう一点おさらいで、この時期の近藤の変、自死による欠員、と。この近藤の欠が、薩摩ー長州の密貿易の商売的ニュアンスから変貌したのではないか？というのは、近藤存命で密貿易が継続していたならば、と仮定せば何となく伝わるか？と。恐らくは現代におけるここまでの活劇調の物語としては伝わってはいない。“熱さ”よりクールなビジネス色の“記述事項”としてしか伝わっていないだろう。

時代を超えて伝わるには、“熱”、人の心を熱くする“熱”が必要なのだ

中岡が立ち、いや立てられ、この件にその“熱”が、冷たいビジネス・武器の密輸という死の商売に“義”の炎が当てられ加熱した、か？

大体、この純粋尊王攘夷思想活動家の中岡にこの入り組んだ“ビジネス”が務まるのだろうか？

これは桂の“賭け”だっただろうな…
よっぽど“男”として見込んだのだろうな…

他方、あまり聞多のバイオグラフィーは押さえていないが、功山寺ー第二次長州征討と多忙を極めている。体が一つでは足りないぐらい働いている。蛇足で、ちょっと目を離すと兄貴の高杉・兄弟分の俊輔がイギリスに遊びに（バックれ？）行こうとするから目を離せなかったろうし。薩摩との貿易の件は、聞多の性格から絶対自分が関知していたかっただろう。アガリがデカいから。ただ藩の窮状からさすがの“カネの聞多”も個人のアガリを考慮する隙間がなかったのだろう。

長州側に中岡が立ち
薩摩側は？
我らが“坂本龍馬”か？

読者をがっかりさせてしまうか？この点は微妙である、と推測する。まあ資料上、中岡及び関係者との裏交渉は重ねていた様だが…注意喚起として、この男は“ホラ吹き”で有名であった。そして、これは証言でもある様に男としての傾向が高杉と似ていた。まあ、坂本の方が高杉より年上だが。

何が言いたいかと言えば、この密貿易に本当に誠心誠意関心を持って働いたかどうか、甚だ怪しいのである。彼、坂本の関心を動かす、と言えば…

船であろう？
船は船でも蒸気船

“ありゃあ？こりゃ饅頭屋から預かった船じゃけんど、あし、こん船、動かせるじゃないがか”

操練所で培った航海術
習った事が活かせる

これは人間にとって最も嬉しい機会ではなかろうか？

それ以前（ごく短い操練所閉鎖〜薩摩保護下期）の間でも、船に携わる機会はあったにはあったろう。ただ一隻、責任職となる、それは例えオフィシャルなものでなくとも、事実上役職的付与・上昇で普通の人なら嬉しいものだ。ただこの男は晋作と一緒で普通ではないので、責任職自体嫌だった可能性もある。しかし“我の為す事、我のみぞ知る”の彼氏なんだから、本心追求はここまで。

“薩摩の下に坂本君か…近藤君は実に惜しかったが。だがあのスケベな話の好きな坂本がいるのか。色々聞き易いな”

話し上手に聞き上手。桂の脳裏に奴の顔が過った。

六十五、

桂は第二次の戦に入る前に、どうやら四国各地潜伏していた、とも。ただ、この時のこの男である。明日明後日どこにいるのか、自分でも想像付かなかっただろう。蛇足で、著名な江戸川乱歩のアイコン・明智小五郎であるが、変装の名人。そして言わずもがな、桂小五郎も、いや桂小五郎が変装の名人。いや、実在の人物桂小五郎の変装の冴えが伝説的であったからこそ、“明智小五郎”が生まれたのだろう。逸れた、次。

第二次の戦でその名を日本史上に輝かせた人物といえば…

大村益次郎、であるな。

曰く“活劇・明治維新”では長州征討といえばもう一に高杉、ニに高杉、三に高杉…と主人公になってしまう。絵になるから仕方ない。足しとして、高杉は下関海峡を主戦場とした戦を担当した様で、高杉的見地からは（というよりも半ば一般的にも）この時期の戦を“四境戦争”と。幕府側の九州諸藩VS長州一藩という…相当に無理のある戦い。この海戦及び九州上陸戦は、まあ言うまでもなく相当に苦戦を強いられたという。大村担当は西征進軍してくる幕府陸軍、と。大枠ではそうか。

この戦の伝説的な逆転劇、それはしかし“活劇・明治維新”でも大村に誉れを与える事は端折らない。

この大村の登場（キャリア躍進）に、坂本のキャリアが若干触るのも触る、といえば触る。

宇和島の大村を招聘したのは、実質桂だろうな。でなければ四国に潜伏していなかっただろう。地下で大村と直談判していた…なんぞ簡易な空想も働く。

大村もよく長州への招致に乗ったものだ。半ば死にに行く様なものだ。全てが逆転した結果になったものだから、“大村益次郎”なのではあるが。

だが、“軍神・大村”。勝ちの見込みがなければ動かなかっただろう。ただでさえ、宇和島の四賢公の一角伊達宗城に重用されていたのだから、そのままポストに鎮座していれば自動的にキャリア上昇する事疑いもなく。それ以上の将来性を確信した、か。

しかし彼を動かしたのは…？
彼の勝算とは…？

長州征討招致は大村にとって最大のギャンブル、賭けでありヤマを張って、当てた。

押さえたい点の挙示。

後世の我々から見ると、どれも戦上手の列士ではあるが、西郷はじめ、ほぼ戦の経験のないまま戦争に突入して功を上げキャリアを築いている事。

他者からの評（※証言はあり）も高い戦上手、といえば西郷に高杉。だが我々は彼らを例えば昼夜問わず戦に明け暮れた中世期の人物とは比べてはいけないだろう。

西郷、高杉に戦の上手さがあったとすれば、それは“求心力”がモノをいったのだろう。カリスマ性というか。隊伍を組む上で纏まり、一体感が強かった。そしてその作戦に兵が素直に従い命令実行する事に澱みが少なく、側から見て“これは戦上手”、と。

編集柳井の見た所、この時期で最も実戦を積んでいたのは山縣有朋なので、戦の上手下手ではなく“戦”の辛酸・習わしを体で覚え込んでいたのは、西郷・高杉ではなく彼だっただろう。しかも戦った敵はヨーロッパ連合、そして時の権力“徳川”と。大村の輝かしさに比べて、山縣への評価というものは実に…これも傍に置く。

大村が長州に客分でしかも軍の統率の執行部に当てられたのは、今でいう“学歴”か。軍事研究及び欧米製の軍備に関する“知識”と“歴”の“前評”のみの判断。選んだのは桂か？まあ便宜上桂としよう、この人的チョイスも多分に危険で“賭け”である。大体が、このファナティックの長州人士が“余所者”の大村の言う事などよく聞いたな…と。この人事に賭けた桂か？聞多か？それとも？、兎角相当な勇気と根性のいる人選ではある。

勝算…

この誰がどう見ても勝ち筋の一条も見えない戦に“勝算”を見出すならば…

兵の士気が昂い事
武器が豊富にある事
最後に、いや？最終的に…

相手方の情報をどれだけ押さえているか

兵の意気は盛んである
小兵でも怯まぬ

武器の量は？
そして、徳川はどれだけの強さなのか？
どういう手を打って来る？

赴任した間もない大村が見るとすれば、幕府の内情に通じてる人物は…貴重であるな。欧米式の武器をこちらに流入させるルートと仲介人は貴重であるな。それが薩摩に近い人物ならば尚一層、押さえたい人間では、あるな。

六十六、

大村ー坂本、と。直接的な関わりは？そして何故この点に評者として介入するのか？というに…

①第二次の征討を覆した手品の種明かし

②薩長密貿易から事実上軍事同盟への道程

に挑戦したいからで。

ほぼ軍の全権を任された（正確に言うとそうでもない）大村としては、そしてこの手のタイプの人間はまず数的に自分の担当する範囲に何がどれだけあるかを押さえる、押さえただろう。大村ー坂本、というよりかは想像するに容易いのは桂か聞多だろう。もっと突っ込んで、桂よりかは聞多だったろう。何と言ってもカネの聞多、物資調達、交渉事、それに辣腕奮っていた、とは周知の通り。

幕府軍が西上する速度、これを鑑み余り猶予も無かった事だろうから、“坂本龍馬”なるよく知れぬ素性の者と大村が交渉を密にしていたかは信憑取るに危うい。危ういが、聞多とは交渉が多かった事だろう。何せ、客分の大村。例えに出して少々気が引けるが、で例えば歴戦の勇士の山縣、赤禰など、一筋縄で、おいそれと言う事聞く訳がない。ない所を通す為、余り評価はしないがこの時期の聞多の働きには頭が下がる。

もっと手に負えないのは、言うまでもなくカリスマ“高杉晋作”だっただろうが、これは海峡の戦に当たった（誰が晋作をここに当てたか…本人ではなかっただろう、恐らく。イギリスに遊びに行きたかったのに聞多に説得されて止めさせられて本人余りモチは高くなかった説…）ので、接点は現実的に少なく見積もれる。（簡単に言えば、第一次大戦期のドイツに似て、東部戦線と西部戦線でほぼ別物の指揮系統を持った軍が戦っていた）

坂本龍馬、これは高杉晋作とは昵懇だった。では大村は？坂本のコネ、というか縦の繋がりというか、グラバーに見られるイギリス商会界隈及び薩摩の小松閥。この時期語られる所謂"新式銃"、これのイギリス経由ー薩摩ー便宜上土佐脱藩組の“社中”ー長州の各戦線、といった入念で入り組んだルートには、近藤長次郎亡き後の頭目としては介在してはいた事はいただろう。

東部戦線の指揮系統の一翼を担う大村としては、新式銃が必要なだけ揃えば揃ったでそれ以上はなかったろう。（揃うか揃わないかが、まあ最大の問題ではあるが）

武器のルートの確実な踏み固めは、当連載で可能なだけ追ってはみた。小松、五代ー近藤ー聞多間で既に樋は堅かった。そこに坂本がどうのこうの余り介在する余地がない。近藤没後の二名の頭目として坂本、中岡と。しかしここで示唆させて頂きたく、上文を朱線で引く。

朱線の理由。この軍事上の物資の流れに関われば、江戸幕府側からは危険人物指定されるのは当然。つまり、この時代的な点より、“我らの坂本龍馬”はここにて謂わば“反体制人物”指定視されたと帰結出来る。青年期の江戸の青春時代の晴れやかさから、ぐっと趣きを変えて、政治犯“坂本龍馬”へと脱皮する。

故に、幕府側の認知している限りの情報は長州に伝えていた事だろう。悪い響きの言葉で、タレコんでいた、そうであろう？少々苦味がきついか？

六十七、

大村が、まあ数歩譲って坂本を幕府軍情報のタレコミ屋として見た、と仮説立てるのは苦しい物がある。というのは、幕府軍の内情に、この一脱藩浪人が通じていたか？と問うてもそこまで知ってはいなかった、海運の操練所にいたぐらいなのだから、と。ただまあ、薩摩の西郷の側にはあった事はあったので西郷出本の内部機密はある程度…苦しいか。大村はより精緻な情報を求めていただろうから。

軍需品の出元は？準備出来る量は？これは聞多。100%で聞多。聞多でなかったら聞多の息のかかったのだ。だから余り坂本が介在しない。桂ー聞多ー大村で戦の下準備が運んだ、だろうな。恐らくこのトップ以外にもっと人間が動いていた筈。その大移動的運動の中での土佐脱藩組、中継点に中岡と坂本がいた、と付点を置ける。

先に大村の“神懸り”とまで評される、東部戦線の勝利の種明かしをしたい。

何の事はない、幕府軍の情報がダダ漏れだったのだろう。

所謂、“活劇・長州征討”では“坂本”達による武器の闇斡旋、新式の武器と旧式の武器で差を付けた、大村の天才的軍略…まあ、爽快である。これから“活劇”の派手な色調を取る。

新型の武器を得ても、軍はそれに練兵されていなければ弱い。長州側の戦意、モチベーションは高かったが、いかんせん兵力の差は埋め難く。そして余り考慮されてはいないが、幕府軍にもこの時期の最新の武具はあり寧ろ練兵もある程度為されていた訳で。

つまり武器の新旧はどっこいどっこいだった、とみる事の方が客観的で冷静か？

曰く、旧式武装の幕府軍…とこれは大分前の稿で推測したが、応援寄越した藩からの半ば嫌がらせ、か？こんな戦いに本気で参加したくはないわな、と。日和見日和見。そんなのは論じるのも無駄なので次へ急ぐ。

正面衝突、一触即発、とは来るが、大村益次郎を好きな方には申し訳ないが、この軍略家は恐らく幕府軍の機密情報を全て、強調したい、全て掴んでいた、と。相手がどう来るか、を全て掴んでいたなら小兵でも確実に近い戦法を打てる。そしてそうなった。天才でなくともそこそこ兵学に造詣があれば、神業とはいかず、それなら勝てるよな、で。

大村としてのネックは、どれだけ長州兵が自分の打ち出す戦法に従ってくれるか、いや従うかが最大の懸念で。これは現在の一般の会社や団体にも通じる所、上が指示出しても下が動かなければ死に体、レームダックだ。この辺り、やはり桂、聞多と現場との中継で骨身削っていただろう。逆によくも山縣達がこの新指揮官に素直に従ったものだ。普通は言う事を聞かない。それが普通じゃなく言う事聞いたものだから、当たった。まあ山縣は西部戦線、曰く“四境戦争”を主戦場にしていた、か？ちと怪しい。

ざっくり本質突いて、桂が軍事上の庶務雑務を取り仕切り、花は大村に持たせたか。軍事理論は大村の知を最大限に発揮させ、同志との折衝・武器の手配は自分の責務、と。

この戦の前後で人の躍進もそれぞれ華々しいものではある。ならば、と来るに我らの坂本、そして中岡と…坂本は長州埒外ではあるが中岡の起用・転職的移動、と。という事は…

この戦の後に正式に締結される所謂、“薩長同盟”。小松スクールは薩摩の意志、では長州側は？推測の暴走で、桂の敷いたレールがあった？そのレール上の、中岡が“駒”だったとしたら？

大村の神話的な大勝利の内情を実は実質上桂の手とすれば？当時ではまさか！の逆転劇の筋書きの作者は…桂小五郎、と。薩摩経由の欧米製武器の発注・購入・用意。桂視点で見ると、坂本も一つの駒。しかし全てが繋がっていないといけない、大変に危うくもキナ臭い闇ルート。大村の神話は、そんな闇の雲の上に鎮座している、と大層仰々しいが定義して、種明かしの紛いの今回は結ぶ。

六十八、

長州征討が本格化した、という事は本気で物流が始まった、という事。つまりは土佐脱藩組の出番！と、ここは活劇調でも差し支えないと。緊密かつ内密的煙幕に覆われた武器の物流。まあ冷静に、第一次期の征討や功山寺の紛争で既に武器の物流の基盤は出来上がってはいただろうが。ただ第一次期征討はほぼ不発の戦争案件、功山寺は混迷しただろうが、飽くまで“内輪揉め”。思想違いの同郷人志の殺し合いもあっただろうが（※意外と晋作が他国同郷問わずの思想違いの筋から命を狙われてスレスレに渡っている。俊輔も。けど何か危機一髪の所で逃されている、スルーして“貰ってる”…）、幕府による多国籍編成軍と一藩の衝突であるから、武器の入り用も桁が違う。

近藤長次郎がいない…

ここに来て、商才のあった近藤がいなかった事は相当にルートの流れ上不安であった事だろう、長州及び薩摩の幹部。

強調点。

坂本にも中岡にも、“商い”の経験は未知に近いものだった。

ただ坂本は、“ほぼ商家”な武家の御家柄ではある。
中岡は貧しい下級武家の生まれ。

近藤の略歴など検索して見て貰いたいが、この男は勉学に励み、チャンスを貪欲に欲し、それを掴み、“饅頭屋”と半ば揶揄（内輪の気の置けない戯れとも言えるが）されていた所以の幼い頃からの算盤弾きの修養豊富な“人間的地盤”があった。

薩摩ー坂本
長州ー中岡

後のキャリアをゼロにして考えると、客観的に見て、相当危なっかしい。

プレ・戦況というか前線にいる方、例えば大村辺り、もう土佐の者がどうのこうの無かっただろうな。精々聞多が“OK！OK！”言ってたらそれで。

大村は東部戦線で…西部戦線は？というと我らが高杉、そして歴戦の勇士の山縣など…何だか西部戦線の方が人的にワクワクするが、それは置いて、西部戦線、所謂“四境戦争”の長州的テーマは北九州からの連合軍との海陸対決、下関ー長崎の海運ルートの死守等…これだけではなかっただろうが、まあザッと。晋作的には“もういいよー。後は狂介一統でやれよー。指揮が二人も三人もいたらやり難いだろうが…”かな？イギリス行きたかったから。

さておき

薩摩側は坂本、これは…航海術に覚えが少しあるぞ、また小松による（？）薩摩藩主導の列島規模の事業展開に少し携わっているぞ…薩摩首脳的見地から見て、結局五代（？）が実質上取り仕切れば後はその指示に従えばいい面子で充分やっど…かな？

長州は？
何故、中岡？
大分前の稿で少し触った。
桂、聞多から見ての中岡慎太郎、とは？
何か旨味があった？
長州にとって…
この純粋国粋主義者。
こういった輩にはパッと考えても商業は向かないが。

何故、中岡慎太郎を長州側の“顔”と、立てたのか？

桂の目論見は？
絶対的な判定は付けられない。
故にここからは全て、また例の如く評者の勝手な推測となる。

そこに進む前に一点喚起。
この点、いつもの当稿とは逆に、“結果論”、後ろ見て考えてみたい。要するに…

征討後に、薩摩と長州は盟約を正式に締結した。
そしてこれが大いなる呼び水となって御一新まで雄藩が突き進めた。この盟約動議の、水面下であろうとも携わった者には“誉れ”が付いて遜色ない。

つまり、中岡の着任が誰なのか彼なのか、それを桂と仮定して、その人事が正しい人選だったという事が証明が出来る。

大村、中岡、と。それだけではない量の人事的動きが急かつ激しかったこの時。人選をギャンブルとすれば、この時の長州はギャンブルに全て当たった。これも断言出来る歴史上の事実である。

六十九、

長州征討の第二期

桂小五郎ー薩摩藩

いつからの下地なのか…

京で激しく両藩ぶつかり合っている

というのは、双方に死傷者があった訳で

有名な話、長州の物は草履の裏に“薩奸”と書いて踏んで歩いていた、とも

御所関係では討ち払われていたが、下関では陸から薩摩船を砲撃、駆逐していたとも

仲が悪い？

その割に…

薩摩の小松と俊輔・聞多他は昵懇だったとも

桂は？

山縣と西郷は、ちょっと前に流行った言葉で、“朋友”だった…？

土佐組は？

土佐の者は？

第二期の征討でやはり、キーポイントとなるのは西郷が幕府軍から離れた事。

そして何故か…西郷が薩摩側の顔となる、所。

征討の西部戦線は四境、長州一藩で対抗。

冷静に…勝てる訳がない

これがよく判らない形になったのは、九州諸藩が戦に全く消極的だった事。諸藩連合、として立ってはいたが丸で動く気配がなかった様子で。長州の主眼は小倉。何故というに、この小倉が九州に於ける江戸徳川の衛星地。故に…書くのもなんだか阿呆らしいが、九州諸藩にとってこの衛星地が長州によって落とされれば、もう俺たちは幕府の言う事なんか聞かなくてもいい、と。とっとと落とされろ、小倉なんか…と。

少し遡って、功山寺期、晋作・俊輔は四国のみならず、いや寧ろ九州での地下活動に執心して、いや尽力していた。単なる不穏分子として認識されていたなら、直ぐに消されていただろうが、遊説出来る余地があって諸地回っていただろうから…

要するに、九州全域で、この時期、江戸徳川に従属する気が無かったのだ。

そう考えると、普く日本史的に、雄藩連合、薩長土肥、とはあるが、列島規模で西東分断状態であるな、ポリティック・パワー図。

大村の計算…

桂の外交的目論見…

京を境に、いや？京すらも、それより東の数藩しか徳川に従属していないじゃないか、実際の所。

西側諸藩の大連合が結成されれば、徳川に上回る力が得られる。

桂の苦渋…いや桂のみならず執行部…

如何に自国の士を納得せしめるか？

何と言っても、同郷の者が幾多、殺されている

そこの中間点に、中岡慎太郎が収まる。

誰が指名したのか…

薩摩側ではなく、長州側として

大村の起用も冷静に見るとかなり無謀乱暴

中岡の配置、これは冷静に見なくとも無謀乱暴

長州統の純粋攘夷思想の塊で

まともに薩摩と交渉出来る？

と、出来る訳がない

そこに薩摩側の顔として

坂本龍馬がいた

ここの人間関係上の化学変化まで桂が計算したか？

してないだろう

故に偶然だ

坂本を過剰評価する者ではない、当方

ただ人との交渉上、この男は“広く聞き、己が主張に走る事少ない”男ではあった、と。

経歴も特殊。徳川の海運士訓練学校にいた、今は薩摩抱え、御国の土佐は脱藩、長州・薩摩にはどうやら数度回遊していた、尊王攘夷であるのかないのか、その割に武市瑞山べったりでもなかった…

今は、ちょっと乱暴な言い方ではあるが、近藤の残した船の実質的所有者…

西郷に近いらしい…

小松・五代とも…

まあ、連絡係としてはいいかな？二名とも。中岡君が少し心配だが…

要するに、薩摩の意向（正直な所をオフレコで）知る事

こっち（長州）の意向を弱い所突かせずに伝えられて…と

近藤君が生きてれば…もっと闇・地下レベルで事が運べたものの…

しかし…時がないな、もう…

だが…

“僕は中岡君を育てなければならない

冷静な計算ではなく

感情

出来る出来ない
向き不向き
それではない

背負える男だ
僕らの同郷志士の死を見て来た
そしてその魂を宿した男だ
僕は彼らの分
彼らにして上げられなかった事を
中岡君にしてあげなければならない

中岡君を一端の男に
しなければならない”

桂にこの様な感情的な何かがあったとしなければ、例の有名な中岡の失敗劇と登用継続の理由が、判らない。

七十、

戦の準備で大顕だったのか、何なのか？
そして…どこのどの辺りから、このバディ“坂本・中岡”が始まったのか…

大枠、というかマクロというか、ドラマなり活劇系の物なり一色単に語られるのが“長州征討”と薩長同盟”。だが薩長同盟は長州征討の後に成立する。故に、我々は今後もっと限定的に見た方が良い。ザク切りすると…

長州征討は実質上、長州一藩で勝った戦
薩長同盟は名を上げた長州と力を蓄えていた薩摩の強国同盟

長州征討時の長州側の勝利に薩摩の貢献大としたい後世の者の恣意、しかもその“恣意”が人々の支持を集めるものだから、もうそう流れる。

大体明治維新の物語が好きな者は…

龍馬も好き
晋作も好き
西郷も好き

三者を応援する側の三者三様帳尻合う様に物語こさえた方が良いのだ、喜ばれるには。

話題を帰して、征討は長州一藩で徳川連合軍を跳ね返した。裏の密約で主に薩摩経由の欧米武器、それはあっただろう。だがこの第二期で既に絶命していた商売上手の近藤が、得意先を薩摩-長州のみに限っていたとは考え難い。長州に売る為に、恐らく諸藩の算盤所と繋がって利を得る事ぐらいはお手の物だった筈だ。薩摩ルートが固く利益が大であったと考えられるのは、小松がイニシアティブを握っていたからだろう、あくまでも裏で。

故に、限定的に…第二期の征討期、中岡と坂本は、実質的に何をやっていた…？

何をやっていた？の疑問符が付く時、それは資料的に曖昧である時期である事の証左。

中岡が三条公達の護衛を外され、下関に…という事は晋作・山縣の指揮下、四境に参戦する目論見だった？プレ・中岡の人間的形ならその方がスッと納得出来る。後ろから見る歴史上の中岡慎太郎から考えると、納得するのに違和感が生じる。

一方、坂本はこの時期は薩摩の居候で間違っても薩摩の意に介さない活動は出来なかった筈だ。結論するに容易なのは、“間違っても長州の息のかかってる者”と思われてはならなかっただろう事。まあ小松と繋がっていれば、そこそこ、長州と繋がりが散見されてもマークはされなかっただろう。元々、土佐脱藩の浮浪志士なのだから。

中岡の視点では勿論、“薩奸”であった事は疑いない。何故と言って、同志を殺されているから、京都の変で。憎しみしかなかった、と考えても誇張でない。プレ・中岡の心情察するに、四境迎撃に命を賭けてたか？何と言っても上官があの“高杉晋作”と“山縣有朋”で。心から長州の一員となって戦える。若しくは…死ねる。思いのまま戦って死ねる、と。

“日本の夜明け…”と坂本が言ったとか言わないとか…

この時のそれぞれの心情を慮ると、征討戦で勝てると思っていたのはそんなにいなかっただろう。そして自分が新しい世を見れる、と甘く思うだけで、皆死を覚悟していただろう。生きる率の方が極小だった。故に…

この時期の、特に土佐脱藩組など、半ば死場所を求めて時代の激流に流されるままだったに違いない。

ただでさえ、二十代〜三十代の若者達だったのだから。

まあポイントとして、言わずもがな、ではあるが第一期の征討と異なり第二期は薩摩が手を引いていた事。第二期の戦には超然姿勢で。

終始、長州容赦に気を配っていた西郷が、列島中央から西にその鎮座位置を変える。この時、既にその動向が日本国全藩に注視される迄に躍進した西郷が。