🟣冒険ロマン『紫卵』第三章　アメジストを追え⑤

29、アメジストを追え⑤

「それじゃあ光ちゃん。
電話貸して」

「自分の使いなさいよ」

「いや、その、持ってねーんだ」

「はあ？」

「持ってねーの！電話を！
あんな養鶏場で
電話なんか要らなかったの！」

「はあ？」

「いいから早く貸せよ！」

「あんたさ、何？
その口のきき方」

「あのよう、光ちゃん。
マゴマゴおままごと
やってる場合じゃないの！
とっとと貸せ！」

「…あんた、車降りて」

「はあ？」

「もういいわ。
あなた解雇。
要らなーい。
早く降りて」

「はあ？面倒くせぇ女だな！
早く電話貸せよ！」

「降りろって言ってるでしょ！
早く車停めてよ！」

「ヘッヘッヘ。光ちゃんよう、
今ハンドル握ってんのは俺なの。
生憎様。
早ぇとこ言う事聞かねーと…」

ハンドルをおーきく、こう…

「ちょっとちょっとちょっと！
止めて！何考えてんの！
あなた！ちょっと止めて！」

「だーから、こう…
ヘッヘッヘ、早く電話貸せ」

「あーったま来る！
何？このトーヘンボク！」

やっと素直に電話を俺に渡す光ちゃん。
チョロいもんだね、へへへ。
でもしまった。
運転しながらスマホ、弄れねー。
いいや、一回停まるか。

車停めると…

「あなたちょっと調子乗り過ぎ」

光ちゃん、短銃出す。
ああ、またか。はいはい。

「ああそう？はいはい」

撃てば？撃ちたきゃ。
もういいや、面倒くせぇ。
ピッポッパ。

「ああ、もしもし？原田だけど」

うるせぇ光を無視して電話する。

「原田？」

光ちゃん、鸚鵡返し。
んで、ちょっと興味そそったみたい。
エヘヘ、ザマみろ。

「ああ、原田だ」

…

「そう、原田だ」

電話を切る。

そしてまたピッポッパ。

「もしもし、ああ、松田だ」

…

「もしもし？松田だ」

…

「そう、松田だ」

電話切る。

んでまたピッポッパ。

「もしもし？水谷だ」

…

「そう、水谷だ」

「ねえ、何やってんの？」

「うるせぇな！
黙ってろ！
あ、すまん！こっちの事だ。
女がうるさい」

「女がうるさい？」

光ちゃん、クキーッ。
へへへ、でも好奇心には勝てないらしい。
黙った。カワイイねえ。

「すまんすまん。水谷だ」

…

「おっと、またすまん。
書く物用意させてくれ。
光ちゃん、何か書くもんある？」

「えっ？」

光ちゃん、ハンドバックをゴソゴソ。

「はい。これでいい？」

「ああ、充分充分。
ありがとよ。
えっ？あ、すまんすまん。
オッケーよ。
うん。うん。うん…」

サラサラサラ…と。
何々？“萩原”ね。よし。

そんで、えっと、
この番号をピッポッパ、と。

「ああ、もしもし？萩原だ」

『沢田さん⁈』

「シェン！生きてたか！」

ほーら繋がった！
良かった！
シェン、生きてたんだな！
ちょっと光ちゃん見ると、
ちょっと驚いてる。
ちょっと本田ちゃん、優越感。

『大丈夫だよー！
生きてるよー！
何⁈沢田さんこそ、大丈夫なの⁈』

「俺はその、あれよ」

『“タラタラ生きててもしょうがない”、か？』

「ヘッヘッヘ！そうかもな」

「シェン！とにかく安心した！
けどよう、早速なんだがよう」

『こっちも話したい事沢山あるよー！
沢田さん、今どこ？』

「どこ？」

えっと…ここどこなんだ？
んで、何でこんな車に乗って、
こんな偉いかわい子ちゃん
乗せて走ってんだろ？俺。