🟣冒険ロマン『紫卵』第三章 アメジストを追え⑥

30、アメジストを追え⑥

「えっとぉ、今ぁ…
よく判らんとこにいる」

だって本当に判んねぇんだもん

『判らない?へへへ、
言いたくなきゃいいよー!
ワタシはね、うーん…
ワタシも今言いたくない場所よー』

「声が明るいねぇ、シェン!
本当に無事で良かった」

『へへへ、でもそんなに安全でもない。
エージェントに、例のあれ、
アメジストを探して来いって!
見つけられなかったら殺されるよー!』

「殺されるってお前、
そんなにカラッと
言うもんじゃねぇよー」

『へへへ、あなたに言われたくないねー。
生きてても死んでてもあんまり変わんないって
あなたの口癖じゃない!
ところで沢田さん、
ウチのエージェントの人間
来なかったか?』

「えっ…」

光を見る
光、俺を見つめてる
こいつ、狙ってんのかどうなのか
落ちちまうじゃねぇかようってぐらい
綺麗な顔
とっとっと
違う違う、
こいつは果たして…
その筋の人間なのか?
でも関係なさそうな。
言葉の端々が…
うーん…

「光ちゃんよう。
あんた密売商の筋の人なの?」

“正直に訊いてみる事だ”

確かデニス・ホッパーが
映画の中で言ってたセリフ

「ふふふ…」

ほらー!始まった!
絶対こう来ると思った!
人が知りたがってる事は
はぐらかした方がいい
って身に染みついてけつかる
これだから女はよう!

『ん?何話してるの?沢田さん』

「いや!こっちの事だ!」

拙い、シェンに不信感与えちまう

“正直に言う事だ”

ホッパーのセリフが宙に舞う

「今拾った女に確認してみただけだ。
そこら辺で金で引っ掛けた女だ。
俺たちが何話してるか判りゃしねぇ。
大丈夫」

「そこら辺で?引っ掛けた?金で?」

光ちゃん、眉毛がごちゃごちゃ!

「アーッハッハッハ!」

光ちゃん爆笑。
もういいや、ほっとこう。

『何か元気な女の子だね!』

「シェンよう、困ってるんだよ。
マジでよう。
まあいいや。とにかく会おうや」

『いや!沢田さん!』

「ん?」

『うっかりしてた!
ワタシも会いたいんだけど会えないんだ!
ワタシも命が危ないんだよー!
だから電話だけだ!
しばらくは!」

「そうか…」

『そう!ごめんねー!
えっと、そうそう!沢田さんねー』

「何だよ?」

『エージェントの人間来てないか?
来てたら申し訳ないって思ってた。
でも来てないんだろ?』

「ああ、それらしいのは…
ただ来そうな気配が…」

光を見た
ニコニコしてけつかる
5歳ぐらいの少女みたいに

「あったからよう、場所変えるんだ。
潜伏場所をよう」

『そうか!でもね、沢田さん。
多分来ないと思うんだよー
沢田さんの所には』

「ん?何でだ?」

怪訝だな…
光も同じ様に怪訝そうな顔をした
あれ?何だよ
いつの間にか光ちゃんも仲間になっちゃった?
もういいや、勝手にしやがれ

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