🟣冒険ロマン『紫卵』第三章 アメジストを追え②

26、宝飾卵:アメジストを追え②

「ねえ、車変えない?」

何だい、藪から棒に

「車、だあ?」

このトラックに何か不満があんのか?
あるよな
埃っぽくてよぉ、
何だか鶏の糞やら何やらの臭い
お嬢ちゃんには耐えられまい

「わたしの乗って来たので行きましょ」

わたしの乗って来たの、ねえ
どんなのに乗って来たよ?
気になるね
だが俺はあんまり車の事詳しくねえんだ

「わたしの乗って来たの、ねえ」

煙草を吸おうとした

「あなたさ、
のんびり構えてる暇ある?
わたしにはないんだけど。
それでさぁ、あなたさ、
もうわたしの家来なんだから
四の五の言ってないで従いなさいよ」

怖っ
結構跳ねっ返り
しかも顔の作りがほぼ美術品なもんだから
怒った顔が
綺麗なんやら、鋭いんか
そのハーモニーというか
怖いねぇ、美人は
何か一々幻惑されるんだよなぁ
それがうざったい、面倒臭い
全く妙なのと連む事んなっちまった

「アイアイサー」

やる気はねぇよ、勿論
でもとっとと逃げなきゃならねぇ事は
光ちゃんの言う通りなんだ

二人、トラックを降りて
光ちゃんの車の所に走った

「何だよー!これー!」

目ん玉おっことしそうになった!

蛍光紫の高級車だぞ!

ハァーッ!
カッコいい!
生まれてこの方、こんな高級車
見た事ねぇ!

「光ちゃん!こいつは一体⁈」

パニックだね、パニック
パニック起こしたよ

「フフン」

ご機嫌の光ちゃん

「おいおいー!
俺はこんなん乗るの勘弁だよぉ!
トラックで逃げてぇなぁ!」

本音
だってその方が俺に合ってるもん
きったねぇトラックで逃げるのさ
記憶喪失のコソ泥がよう!

「あなた…って言うか、
あなた名前決めないと、面倒ね。
呼ぶ時。
好きな俳優とか有名人とかいない?」

ニヤニヤする光ちゃん。
全くつまんねぇ宝石盗んじまったもんだ
そのおまけにこんな面倒臭ぇ美人が
やいのやいの言って来やがる
この俺の自由に対して!

「えー?俳優?そうだなぁ。
ピーター・フォンダ」

「ピーター・フォンダ?」

「知らねぇか?
『イージー・ライダー』の主人公だよ」

「『イージー・ライダー』?
あのバイクのヤツ?」

「そうそう。バイクのヤツ」

光ちゃん、ちょっと思案

「本田…うん、本田がいいわ。
今日からあなた、本田ね」

ニコッと光ちゃん
今度はマーガレットみたいな笑顔になった。
カワイイとこあるじゃん
おっと!いかんいかん!

「本田ぁ?」

「本田、本田…
下はどうでもいっか。
翔太とか翔平とか」

ケタケタ笑う光ちゃん

「翔平、は勘弁してくれ。
分かったよ。
今日から俺、本田な。
本田翔太」

エヘヘ、何だよー、このママごとは!
でも満更でもない
楽しー
ヘヘヘッ

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