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全恋、ありがとう。

エピローグ読み通して、スッと白紙に到達して心に穴が空いた。

読了後、暫く、脳裏がひりついて思考停止して、動けなかった。
感動とか感想とか共感とか。どれもハマらず、無になっていた。


女に生まれたことを呪うこと多き日々だった。
ずぶ濡れの私は、全恋の手のひらに掬いあげられた。
女に生まれて良かったじゃん、全恋、全身で愛せたから。

幸せな恋愛を掴めるかどうか?

そもそも恋や愛って掴むものだろうかと考える、生い立ちや両親、特に父親からの影響は無視できない。
「幼少」「一周」で分身と対話していた、擂り下ろして沈めていた感覚が、皮膚の下まで上がってくる。


──── 例えば、誓いの言葉「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

──── 嘘だね。
少なくとも私は、一生普通の恋愛なんて出来ないと知ってしまった。

大学試験の前夜のこと。田舎から街へ、父と前泊で出てきた私はラブホテルのベッドの上で、背後から父に抱かれ身動きができずにいた。尻に挟まれる勃起物の感触、それ以外どう寝て起きたか覚えていない。翌日、試験のデッサンお題は漁港にある大きなガラスの浮き玉とクシャクシャに丸められたアルミホイルだった石膏像じゃないんだ?不合格だったら家業を継ぐ約束だった。家を出てやるんだ、意思を筆圧に込め皮肉にも上出来に仕上がった。結果合格し入学と同時に家を出て一人暮らしを始め、奔放ぶってみたり、誠実に守られた恋はしてみたけれど逃げてばかりだった。
一生、私は心から安心して女にはなれず、恋愛は出来ないのだろう。

物語のファンになっていた

「忘年会」「夜のコール」あたりが読み始めで強烈パンチを食らった。"性の暴走機関車" そんな生優しい形容じゃ表し尽くせない、怒りを封じた性への心情描写は…

錆で溶接したパンドラの箱、開けた。渇望とか肉欲とか、皮膚の下に封じた重たい蓋をスライドして覗けば、涙の枯れきった18歳の私がいた。
ごめんよ、長い長いあいだ閉じ籠めていたね...その後も日曜興奮更新を毎週嗜む度胸なく。尻目で読む日々、でも日曜興奮更新の女性たち、ぐいぐいと私の腕を引っ張る。

本と本の間を旅するように

同じ頃「カウボーイ・サマー 」を読了した。心の氷河は決壊した。カウボーイの営みから人間としての根源、自然、家族、与えられた生き方との共存。過去ごと人生を癒そう、私にはそんな描写本だった。

「全部を賭けない恋がはじまれば」も「カウボーイ・サマー」も、繋がりの始まりは、ひろのぶと株式会社だった。

更に辿れば、地球始皇帝に即位した田中泰延さんの連載【ひろのぶ雑記】を読んでいた頃からで「読みたいことを、書けばいい。」読了から弾丸出版記念イベントへ北海道から馳せ参じて底知れぬ元気を頂いた。しかし翌年早々、感染症の渦に巻き込まれて仕事は絶望的な激減でどう生きようかの頃「0メートルの旅」を布団の上で正座して一気読み、旅への渇望が仕事に結果として出始めた頃「会って、話すこと。」に着岸した。この3冊は、編集者今野氏という共通点で、私にとってセット本である。文字が私をここまで連れてきた、過言ではない。

ひろのぶと株式会社 出版までふりかえり

昨年12月9日、田所敦嗣さんのnoteが、ひろのぶと株式会社から出版されると僕たちは会って話してなに考えてるの?で告知された。当時、ホテル関連のデザイン業務が消失しイベント業務も先が見えない不安な日々にあり、ずぶ濡れ鼠で敦嗣さんのnoteを読んでいた。読むことで旅の景色、実存する人の優しさと出逢い、生きる渇望を得ていた。

ひろのぶと株式会社が、株式投資型クラウドファンディング募集するまでの流れは記憶にも新しいところである。正直、投資は迷っていた。資本主義のハードルが高かったし参加できる資格がないと思っていた。しかし募集開始の数日前、「紙の本しか勝たん。」とひろのぶさんがつぶやいた。

心は決まった。私は、紙の本が生き残る世界の住人でありたい。今世諦めていた資本主義について勉強し(参加権を得るまでは少しだけ苦労があった)いざ株式募集は、開始27分で上限4千万円に到達し募集終了。目標達成率、800%。投資家、337名。キャンセル待ち、300名以上。あの27分をモニタで見守っていた現象を、私も一生忘れない。


8月6日に行われた【第1回 ひろのぶと株式会社株主ミーティング】終盤、刊行予定著者:稲田万里さん、田所敦嗣さん、田口茂樹さんと編集者・廣瀬翼さんによるトークショーにて「スローシャッター」タイトルが発表された瞬間、旅とは生きることの景色、空港などnoteの写真がシャッター音と共に、瞳の奥で走馬灯スロー再生されて涙がスッと流れた。

10月27日、予約販売開始と共に表紙デザインも公開された。フォーカス強めの写真と思ったら違った、ここでも涙だった。書店予約の他、Hironobu&Co. ONLINE STOREでも購入したいので告知待機です。

3冊目ひろのぶと株式会社から出版される田口さんのnoteは、息子から母への距離感と心情を寄せた「母という恋人」が好き。出版については執筆に入っているあたりかビジネス書らしい、私にとって予測つかない新たな開拓になりそう、こちらも告知待機、待つ間も愉しんでいます。

ひろのぶと株式会社のロゴデザインに込められた思い、デザイナー上田 豪さんについては勝手に心のデザイン師匠につき憧れと愛が強すぎるここまで2288文字、恐らく倍の文字数を要するので泣く泣く割愛します…

全恋読了した現在交差点


エピローグ読み通して、スッと白紙に到達して心に穴が空いたままだ。


父親を「父」だったり「彼」に置き換わる秘めた残酷さ、気に入っているよ。女性に産まれ堕ちて最初に対峙する異性であり、全女性の生い立ちが幸せであることを願いたいが、現実そうはいかない。複雑な現象と心理が絡み合って、突如、大人の女性として社会に放り出される無防備さよ。


全恋の若い女性たち、抱きしめたいくらい可愛い
哀しいくせに、純粋じゃないふり強がりの健気で
逃げてもいい、幸せを拾えると信じ続けてほしい


幸せを拾える日は、突如来るから。
若さから熟成?した年齢に達した私だから言おう。拾っていた幸せに気づく日が来るのだ。今、私は心から安心できて、逢えない時も寄り添い合う人がいる。そんな感情に出逢えるなんて見当もつかなかった。人生頑張ったご褒美かもしれない。

ひろのぶと株式会社から出版される本を愛でることが、結果として自ら人生のレールを敷く。そんな本の読み方って知らなかったよ。リアルに生きる作家を応援した先に、人生あり。本と本、繋がっていく家系図のようである。


ひろのぶと株式会社から出版された、永遠の1冊目の本である本書を読了し、感慨無量であり、心から感謝を述べたい。

写真では伝えきれない指触りの装丁です♡


──── 表紙を見つめる。潤んだピンクの唇に映る性の優しさ・柔らかさ・哀しさ..人生の全てに恋を賭けることは出来ない、そもそも全てを賭ける現象を知らない。刹那出現するどこまでも広く深い恋より育てよ愛、を掲げて私も生きる。


パンドラの箱を開けてくれてありがとう、全恋。


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