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スローシャッター感傷【6】

「責任」とは、なんだろうか。

せき - にん【責任】攻めを負ってなさなければならない任務。引き受けてしなければならない義務。

辞書には、そうとだけ書かれている。
それは、子供の頃は必要が無かったのに、歳を取るごとに積み重なっていくものだ。任務や義務の多くは仕事から生まれ、人々は今日も世界でそれぞれの責任を果たしていく。厳しくつらい役割の中にも、人の温かさがある。

149p - フェイの仕事

「アンディさん、フェイの仕事が好きと言っていましたが、どこが好きですか?」

2月3日、ひろのぶと株主優待イベント終了後のこと。Twitterでnoteで「フェイが好き」と発信していた。敦嗣さんに直接聞かれたのだった。

「フェイの笑顔、ラストが笑顔に集約されていくところが好きです。」

彼女は今まで仕事で厳しく接してきたことを詫び、この先は貴方達が思い描く、貴方達自身の仕事を作り上げてほしい、これは最後の職務命令だと言った。

そして、私には、可愛い孫達との生活が待っていると照れくさそうに言い、スピーチを終えた。

皆、笑いながら泣いていた。その中には、新しくQCのサブリーダーとして働くことになった、あの若い女性の姿もあった。

158P - フェイの仕事

あの若い女性の姿とは、かつて仕事を辞めたい、とフェイに相談していた女性。フェイには一人娘がおり、学生の頃、口論になってその娘が家出をしたことがあった。その時の娘と、件の若い女性ワーカーが重なり、不思議と優しい気持ちになったと。

半分答えて、その続きを言えなかったこと。

「私には、可愛い孫たちとの生活が待っている」と、笑みを溢すフェイが、母親と重なったのである。そうあればと願った。

私はどうしようもない反抗娘だった。母は、父や姑である祖母の言いなりで農家の嫁として不自由な生き方、農家の嫁には絶対なりたくない!とさえ言った。一浪した兄と大学受験が重なり、受験そのものを諦めてほしいと言われたが聞く耳もたずだった。志望校は道内のデザイン大学、推薦入試一本狙いでデッサンに明け暮れ試験は無事合格し、貯金や春休みのバイト代は全て入学諸費用へ、奨学金も借り返済には36歳までかかった。だがそれはほんの一部のお金にすぎず、両親の経済的な覚悟と支援があってできたこと。意気揚々で身勝手だったことに痛感したのは、、、ここ近年のこと。

いざ、息子娘達の進学にあたり、大学という選択肢を経済的に与えてあげられない。無計画に結婚し離婚した私は、母の当時の、私と同じ頃の母の苦悩を今更知ったところで、親孝行もできていない有様である‥.

2月4日、文喫六本木にいた。

大型のデザイン年鑑、画集、イラスト集、過去調べ物など。仕事のイラストを進めたり。そうしたら、不意に、母親から「ちょっと相談がある」と電話がくる、滅多に相談の電話はないので、なんだろう胸が騒ぎ、通話エリアに出てすぐ折り返す。

母からの電話内容は、長女の件だった。
来年の進学までに、学費を貯めているが、免許も取得したいと通信制高校の空いた時間をバイトに当てている件について。最近の悩みは、母子ともに成人式の準備どうしよう?であった。早い子はもう今から着物の予約をしていて、分かってる、ただ私には、下に続く次女もいるから現実問題全て希望を叶えるのは難しい。母に、従姉妹が成人式に着た袴は残っていないか、確認していたのだった。

母は「免許代、私が払うから◯◯(長女の名前)には、その貯金分で成人式好きな着物を選ばせてあげなさい…この先、結婚したとして結婚式はしないかもしれない。そうしたら、一生で一度の着物になるかもしれないよ。」と… そんなふうに考えてくれてて、独りで六本木に居たからだろうか、どっと気持ちが押し寄せてしまった。「私、親孝行できてない、ごめん。」と本音が溢れて「受験の頃お母さんの仕事は一生したくないって言ってごめん、子ども育ててわかった、お母さんの仕事も生き方も世界で一番尊敬してる(泣)」と‥
電話口の母は笑っていた「私も親孝行したかったけど、急で何も出来なかった。あなたの親孝行は、3人の子ども達を育てること」

フェイが最後見せた笑顔を、万感の思いを、母に達成させてあげたい。その思いがあるから、「フェイの仕事」が好きなんです…って長すぎて簡潔な感想を、言えなかった。

本編には「ターミナル」「オリジナル」「デルタ航空296便」に凝縮された男の魂を感じ嫉妬すらする話も好きだ。仕事で、アツシのように在るべきだと思うシーンも、多くて静かに語りかけてくる。

スローシャッターには、仕事を通して、働くことを通して家族との繋がりが見える。そこが、とてもあたたかい気持ちになる。もっと、優しい生き方ができる筈なのに現実そうはいかなくて、でも、身勝手に生きた心を融かして地球の向こうのスローシャッターな人が無事でありますように、等しく、私と私の家族が幸せに生きることを大切にしなければならない。

家族というものに寄せた好きなシーンを。

「ベトナムの男は、人前で泣いたりしないんじゃなかったっけ?」
そう言うと、彼は笑いながら僕の背中を軽く叩いて、静かに下を向いた。

111P - メコンデルタの花嫁

「私のチケットでよければ、使ってくれ」

208P - デルタ空港296便

彼は、育ててくれた父親と同じように優しく大きな家族をつくるため、あた
たかいホセの家を旅立った。

239P - ホセという男


ちょっと、今日は、想定外に嬉しい報告があって、嬉しくて、泣いていて、完結できません。と言う出来事が、ありました。

ひろのぶさんの後書きに寄せた

この本は、「私たちの仕事」に、なっているかな?

について。今回、言及したかったのにできていない。

コロナになって、長女の不登校に合わせて、ホテルリゾート関連のデザイン業がなくなったこと。仕事を失い、そのとき何を頼りに、何を信じ、仕事を得て、本から何に導かれるように、旅を伴う仕事を得たかを。

本に書かれた文字が、装幀デザインが、私をどこへ連れて行くのか。
誰と共有したいのか。

次回、スローシャッター感傷【7】ひろのぶさんの後書きに答えて、最終。
(おわらんのかい!!!)

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