トーキョー王(サヤ-11)

【サヤ-11】
 渋谷で私たちを襲った男たちと、クルマに細工をして運転手さんに怪我をさせた犯人はつながっていた。スーツおじさんの報告を聞くとサエ姉さんは、たいして興味もなさそうにうなずきながら、そんで私らどうしたらええのと彼に訊いた。

 全焼か、それとも丸焼けか、と爪を磨きながら訊くその様子は、なんだか悪の親玉みたいだと私は思った。こういう興味なさげな態度のサエ姉さんは、とても怒っている。

 全焼も丸焼けも同じなのはサエ姉さんの冗談だったが、スーツおじさんはいつもよりさらに硬い顔で、犯人グループが自分たちの「子会社」の一つだったことを告白した。中国と提携したところ、なにやらそそのかされて私たちを襲ったらしい。スーツおじさんたち「親会社」の面子は丸つぶれだった。

 サエ姉さんは相変わらず興味なさそうな顔をして、ふぅんヤーさん業界もグローバル化の時代やねえと、誰に云うふうでもない。だけど私には、中国と聞いて姉さんが昂ぶっているのがわかる。クルマの細工で事故を起こさせようとして失敗した彼らは、おそらく「提携先」に追い込まれて渋谷で大胆な(というか大雑把な)襲撃に出たのだ。

 そしてそこに現れた犬の群れ――《獣使い》の仕業に違いなかった。やつが中国マフィアと結託して日本のヤクザを動かし、私たちを亡きものにしようとしているのだった。スーツおじさんは云いにくそうに、「子会社」の不始末は自分たちで落とし前をつけるので、直々のお出ましは勘弁してほしいと頭を下げた。

 かまへんよ、とサエ姉さんはスーツおじさんにうすく笑った。あんたらには世話になってるし、スポンサーの顔を潰すのも申し訳ないしな、と云って、しかしすぐに表情を変えた。けど「提携先」になんかあったとしても、それはあんたらやスポンサーには無関係や、そうやろ?

 スーツおじさんの表情が強張った。姉さんは私のほうを向くと、にやりと笑った――こないだのぼたん鍋はお気に召さへんかったみたいや。今度はもうちょっと印象に残るように、趣向を凝らした贈り物をせなあかんな?

*Tokyoking*

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