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トーキョー王/Tokyoking

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空想魔術Plag小説「トーキョー王<キング>」の集積所。まあせっかくだから。
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2019年4月の記事一覧

トーキョー王(アキウ-16)

 大沢さんと僕とが訪問し、なんだか異様な気配を感じていたあの団地――その異変に「事務所」が気づいたのは、週刊誌に記事が出る直前のことだった。

 あの団地では何人もの失踪者が出ていて、なのに団地の人々はそのことについて口を閉ざしているのだという。団地に住む子の同級生の発言として「ちょっと変な感じの、警備員みたいなことをするオジサンたちがいて怖かった」と書いて、「閉ざされたコミュニティの中で何が」的

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トーキョー王(スリン-17)

 ――さあ、一座の始まりだ。
 〈察知と通信〉の男は宣言した。
 彼らが荒川区の自動車修理工場に構えたアジトは、〈隠蔽と遮断〉の力に守られていた。若い隊員は自分にはたいした力がない、と云っていたが、その力は攻撃的でないというだけだった。
 一座という言葉に、何か演劇でも始めるのだろうかとスリンは訝ったが、その意味はすぐにわかった。

 彼らの〈プランB〉は、荒川区に住む一人の少女だった。私立小学校

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トーキョー王(サヤ-11)

【サヤ-11】
 渋谷で私たちを襲った男たちと、クルマに細工をして運転手さんに怪我をさせた犯人はつながっていた。スーツおじさんの報告を聞くとサエ姉さんは、たいして興味もなさそうにうなずきながら、そんで私らどうしたらええのと彼に訊いた。

 全焼か、それとも丸焼けか、と爪を磨きながら訊くその様子は、なんだか悪の親玉みたいだと私は思った。こういう興味なさげな態度のサエ姉さんは、とても怒っている。

 

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トーキョー王(アキウ-15)

【アキウ-15】

 幸いなことに、僕たちのストックしておいた魔力--実際にはそれらを宿した御札やら鏡やらといったアイテム類だけど、それらに高井さんたちが手をつけた形跡はなかった。

 もともと高井さんたちのチームは姫ちゃんに近かったけれど、大沢さんや僕のような意味では「姫ちゃん陣営」ではなく、ちょっと遠ざけられていたんだ。なんというか、姫ちゃんを大切に思うのはいいんだけど、どうにもそれが行き過ぎ

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トーキョー王(アキウ-14)

【アキウ-14】

 事務所あてに送られてきたURLへアクセスすると、高井さんとそのチームの皆さんが映った動画だった。

 なぜか全員アフロ…というか、なんか焦げたみたいにアタマがチリチリになっている。

 それぞれスマホの画面をのぞいていた大沢さんと僕は、目をあげて顔を見合せた。なんだこりゃ、という大沢さんの片頬がひきつっている。イメチェンですかね、と僕は吹き出しそうになるのをこらえながら云った

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「トーキョー王」 バックステージ#9

・ずいぶん時間が経ってしまいました。
・その間にPlagはSolaと名を変え、2019年4月10日、ついにその4年にわたるサービスを終了しました。
・「空想魔術Plag小説」と銘打って、物語のどの断片がどういった順番で届くかわからないという、Plagのアーキテクチャを利用した表現形態だったのですが、サービス中にきちんと完結させることができず残念です。
・サービス終了の直前ではありましたが、最後のカ

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トーキョー王 #9

【CJ-22】
金髪の少女は床の「少年王」――もはや「元・少年王」と云ったほうがよいかもしれない彼にもう一度、恥を知りなさいと厳しく云った。暴力の論理を支持する者たちに暴力で応じてはあなた自身が、その論理を支持する者になりますのよ。

英語が通じるようではなかったが、彼女も期待はしていないようだった。云うだけ云うと興味を失ったように踵を返し、このような者の力は喜んであなたがたに差し

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