【短編】LTEのハロウィンマーチ
空気がもったりと湿度を含んでいた頃が信じられないほど、乾いた風の吹く夕方だった。雑誌やテレビを見て急いで厚着を始めたような人以外にとって、その日は薄ら寒くて居心地が悪かった。暗くて陽の光の少ない季節が迫ってくると思うと憂鬱だった。気軽に外で本を読めなくなるな。僕は窓から刺す弱弱しい西日に目を細めながらそう思った。窓ガラス越しにノイズのような振動音が聞こえる。
いや。凍える闇の中で孤独に珈琲を啜るのだって悪くない、とも思う。1年にせめて1度くらいは闇夜の不満足が必要な気もする