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7.“Get out ! ...please...“(出てって。...お願い)

さてここからしばらくはボクが国内で経験したお話を。
 
社会人になって英語のトレーニングを始めて少したった頃、年齢で言うと20代半ばですが、当然のことながら様々な失敗をしでかしています。
まあ、大体は笑い話なのですが、その中で最大級のものがこれですね。
 
ある時US(United States:アメリカ合衆国)支社から来ている人を車でホテルまで送っていくことになったのですが、当時ボクはまだ免許をとって間もないころで、自分でも車を持っておらず、たまに社用車を運転するくらいでした。
 
その日は他に適当な人もおらず、仕方なしにハンドルを握ったわけですが(ところで英語ではハンドル “Handle”は”Staling wheel”、ウィンカー”Winker”は“Brinker”です。この二つは典型的な和製英語ですね。個人的には”ウィンカー“はなかなか感じが出ていて好きなんですが)、乗っけたのがUS支社の副社長のKimさん御一行。
 
Kimさんはとても陽気な良い人なのですが、おっちょこちょいとして有名な方でもありました。
そのエピソードは数知れずで、ボクが仕入れたひとつが”What time is it ?”。
 
US支社の月例会議中のコーヒータイムにKimさんがコーヒーを自分のカップに注ぐのを見計らって必ず誰かが、
”Kim, What time is it ?”
(キム、今何時?)
と聞き、左利きのKimさんが毎度カップを持ったままで時計を見ようとしてコーヒーをこぼすという、しかもこれがほぼ毎回引っかかるという、うそのようなお話でございます。
コロンビア大学で数学をやっていたと聞きましたが、あまりそうは見えなかったですねぇ。


別の逸話で、大好きなオリエンタル・バザール(原宿にある海外からの旅行者向けのお土産物店)で大きなツボを買い込んで、帰りの飛行機でわざわざツボのために席を一つ取り、タクシーで帰宅したその最後の最後に玄関先で階段につまづいてしまい、コロんでツボを割ったという伝説も持っているそうな。
 
そのKimさんが運転中のボクになんだかんだ盛んに話しかけるので、最初はまあなんとか相手をしていたのですが、そのうち渋滞中の車線変更など初級者には難度の高い状況になってもお構いなしにベラベラ話しかけてくるのです。

なので、ボクも少しイライラして、
“Both driving a car and speaking English are tough to me. Shut your mouth if you do not want to die !“
(運転するのも英語をしゃべるのも大変なんだから、死にたくなかったらちょっと黙ってください!)
と言うと、驚きつつも(しかも、この時はこの少し長めのセリフをつっかえずに言えたのです。運転も英会話もまだ若葉マーク🔰だったのに)そんなこちらの様子が初めて分かった様で、それからしばらくは静かになってくれました。
 
さて、やっとたどり着いた目的地のホテルの前も混雑していて、二重駐車で無理やり車を停めて、直ぐに降りてもらおうと思ったら、向こうは何で車を停めたのかが分からない様で、また何かこちらに言おうとするのです。
 
こっちは「早く降りて!」と言いたかったのですが、今度はうまく言葉が出て来ずに、とっさに言ってしまったのが、
”… Get out !“
これでは「出ていけ!」になってしまいます。正しくは“Get off”(降りてください)。
 
再びハト豆になるKimさんを見て「流石に”Get out”はマズイ」と思い、”…Please…”を付け加えて、首を傾げつつもなんとか降りてもらった次第です。
ま、突然「…出てってよ!…お願い。」って言われたKimさんもさぞタマげたことでしょう。
自分でしでかしといてなんですが、でも前置詞一つでえらい違いですよね。
 
その翌日のこと。
Kimさんたち以外にも、製作作業をする人たちがアメリカをはじめカナダ、ドイツ、イタリアから来日しており、そちらとも朝からスタジオの中で打ち合わせをしなければならなかったのですが、他の用事と重なってしまい、少し遅れてしまいました。


資料を持ってスタジオに駆けつけて、ドアを開けたとたん、中の全員が一斉に振り返り、ボクに向かって
”Get out !”
 
一瞬何が起こったのか分からないまま、とりあえず慌てて外に出ようとして回れ右をしたボクの背中から、これまた全員で、
”Please….”
 
そしてドアの所にへたり込むボクを見て一同爆笑する中に、その打ち合わせには関係ないKimさんが居りました。


 


 

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