「ちっちゃい天国」と「かくれ里」(DollGal millna ~ 白洲正子)
いつのまにか、夢は追うものではなくて、逃げ込むものになっていた。
"Shelter from the storm~"
みんなは、どうなんだろう。
まるで自分自身を守るように、最近、夢が、守るべきものになってきた気がするんです。
とにかく最高で美しいドールギャルのmillnaちゃんが、「ちっちゃい天国」をつくっていこうと言ってました。現実は地獄だし、天国があったとしてもそれは私たちにフィットするものではないだろう、と。なら、リアルで、自分たちのための王国をつくってしまおう、と。
わかる。
わかる、って思いました。
そうして彼女は、自分を天使に、自分の部屋を天国に変えて、BIG LOVEな商体系とカワイイカルトの会合を作り上げています。YouTubeも音楽も最高of最高。
今の世の中、生きる場所が少なすぎる、っておもう。どんどん、狭くなってきてる。それがなぜなのか的確には示せないけれど、何か空気に似た厭な瓦斯のようなものが、徐々に社会や日常の現場を覆って、人の、心の領域を侵略し始めてる。
僕たちは、それらから自分の心を守らなければならなくなってきていて。
人は、それぞれ夢の領土をもっている。
夢の領土は、種が現実的に運営している社会体系と相反しながら、相補的に存在する。ある意味では、社会体系内の生命というか、動きを生み出す動力源になっているともいえるが、夢もまたその動力源が産み出した幻想か蜃気楼のようなものであり、かつ、夢はそれらとは全く別に、即自的に存在してもいる。
誰が、夢を統制できるだろう。
現代ーー、思考や体験が共時的に放流されて、一瞬で他者の目に晒す。晒される。誰かが見る。誰かが、自分になる。無闇に返された言葉が、もとの言葉を侵食して、変形する。言葉で社会が回転し始めると、渦が生まれる。流れの筋に、回収されていく。
自分の好きなものや言葉が、点景でしかなくなっていく感覚。
水野しずさんが言ってたんですが、「発話し、説明しないと、存在できない」
それどころか、最近は発語したところで、存在できなくなっている感じがします。
いや、存在なんてわざわざする必要ないのかもしれないけど、存在、あるいは正論でさえ、地域限定的に社会を支配する思想という、言葉の渦に飲み込まれて、流れの筋の外側にあれば、見えなくなってしまう。
規制し、変質させようとしてくる抑圧的な言説に、細かな傷をつけられて、血を抜かれ、しかしその血も彼らの口の端から顎を伝って土を汚し、結局、誰の養分にもならない。
傷つける者にも、傷つけられるものにも、見えるのは苦しむ顔ばかりで、嗜虐的な笑いさえも聴こえてこない。
誰が笑ってるんだろう。
誰もー。
そう、本当はそんなこと、どうでもいいんだよね。
延々と脱線して、どこが本題でどこが脱線かもわからないんですが、尊敬する白洲正子さんが「かくれ里」の必要性を話しておられました。
「かくれ里からはまったく別の風景が見える」
また、それを受けて河合隼雄先生は、
「かくれ里というのは現代人にとってものすごく大事なことですね。いま、各人がどれだけそれをもっているか。みんな明るいほうがいいとおもうから、どこもかしこもあかあかと照らしてしまう。かくれ里なんてトイレぐらいしか残ってない。」
「いまの患者のものすごくかわいそうなのは、まったく隠れるところのないところに入れられていることです。いつも明るくて、誰かがずっと監視している。みんなが見てくれることになっているけれども、本人は隠れ場所をもたない。」
明治に生まれたお年寄りたちも、病院で、畳よりもベッドがいいと答えていたそうです。ベッドなら自分の定位置があって、管理されきらない。
それとともに「すい場」という京都の子供言葉を出しています。子分格の子供にだけ教える、トンボがよくとれる場所などをいうそう。
あるいは、鶴見俊輔さんの言う。
「ホノ吉さんが『自分で丹精した畑に、こんなきれいな花が咲いた。極楽に行った気分ですよ』。そういいながら、煙管をぽんとはたいた。ーーそれがかくれ里なんだ。」
大体のイメージがまとまってきたところで、「神を創造することが、日本のかくれ里のパターンである」という話から、木地師と惟喬親王、流された天皇の話に向かいますが、人生の過剰露出、という言葉が思いつきます。
あるいは、かくれ里の中で生きてきて、社会に出たとたん、言葉が通じなければいけない、社会内コミュニケーションができることが是とされる環境に晒されて、自分の大切な領域をないがしろにしかけている。
とにかく、僕が思うのは、存在することは徹底して「局所的」である、ということ。
存在して、存在させましょう。
Bob Dylan"Shelter from the storm"
白洲正子・河合隼雄「縁は異なもの」
millna https://youtu.be/-llXnzVu6fc
水野しずhttps://youtu.be/pvCgvuzwgIc
田島ハルコhttps://youtu.be/OwaEHTgZv88