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「持続可能な発展」と連帯の必要性

国際環境法の発展の上で、ストックホルム宣言が、発展途上国における環境問題の大部分が低開発に起因すること、発展途上国の発展の重要性および発展政策が環境保全と両立すべきこと、途上国の環境保全のために援助が供与されるべきこと、を指摘・強調している点は、現在でも重要である。 その後、リオ宣言では、共通に有しているが差異のある責任が規定され、そこから二つの帰結が導かれた。一つは、途上国には先進国と比べてより緩やかな環境基準を適用する「二重基準」の採用である。もう一つは、先進国が「地球

    • 「子どもの最善の利益」

      子どもの権利条約の主たる目的は、子どもを権利主体として捉え、子どもの権利を定めることにある。しかし、子どもは、常に成長を続ける存在であり、保護の視点が欠かせない。条約は、その視点として、「子どもの最善の利益」を置いている。 国は、子どもに関係するすべての措置(不作為を含む)において、子どもの最善の利益を主として考慮しなければならず、子どもに影響を及ぼす活動や事業(公私の施設や私企業を含む)に関するすべての立法、行政、司法手続において、この原則を適用する義務を負う。 子ども

      • アニマルウェルフェアと「五つの自由」

        EUの基本原則となるアムステルダム条約(1999年5月1日施行)では、締約国に「動物保護の改善とアニマルウェルフェアに対する配慮」を求めている。「動物は意識ある存在」であり、アニマルウェルフェアに配慮するという倫理を、法律による規制へと具現することに、欧州各国は合意したのである。 畜産におけるEUや各国の法令の土台となった原則がある。1960年代に英国で生まれた動物の福祉のための「五つの自由」である。 ①空腹および渇きからの自由(健康と活力を維持させるため、新鮮な水および

        • 作詩・「DAY TO DAY」

          BLUE SKY。雲払って、ダンスすれば。 風が、肩たたく。束の間の日差し。 渡り鳥のように、海を羽ばたいて。 陸を見つけたら、羽を休めて。 バックパッカーのように、今を生きよう。 同じ毎日で、新しい発見を。 BLUE SKY。露払って、影を踏めば。 風が背中を押す。束の間の癒し。 白い雲のように、空とたわむれて。 風をつかんだら、形を変えて。 バックパッカーのように、明日を生きよう。 同じ街並みで、新しい創作を。

        「持続可能な発展」と連帯の必要性

          「女性差別」の撤廃と「ジェンダー平等」

          異常気象の激しさと頻度は増し、世界中の女性と少女は、食糧不安や貧困と暴力のリスクなど、より一層困難な状況におかれている。家事、子ども、病人、高齢者の世話などにおいて、女性に対するジェンダー不平等が顕著に表れており、女性や少女たちは、家庭や地域を支えているかけがえのない存在である。 その意味で女性と少女は、常に気候変動、貧困撲滅、健康促進などへの取り組みの最前線におり、先住民や農村部、若者の視点を含め、ユニークな知識や専門性を有しているのである。持続可能な開発目標(SDGs)

          「女性差別」の撤廃と「ジェンダー平等」

          「世界法の理念」に向かって

          「世界法の理念」 世界社会は、地球上の人間の理念における連帯を基礎とする。この理念は、各人を目的追求主体として承認すると同時に、人間を目的自体としても承認する。それゆえ、各人は、人間を目的自体として承認し行動することが求められ、人間を単なる手段としてのみ扱うことは、禁止される。 立法者は、あらゆる人間を目的自体として尊重することを原則とし、法定立の基本にこの原則をすえた上で、さらに公益的な観点から、政策的な配慮を組み入れて、基本原則に則ると同時に、最善の効果が期待できる法

          「世界法の理念」に向かって

          「カント法哲学の研究ノート」

          1. カントにおける「自律」と「善意志」 カントによれば、道徳的価値は、義務を義務として尊重し、それに基づいて為される行為にのみ、見いだされる。そして、善い意志は、ただ意志することによって善いという。それは義務に基づいて行為することを意志する意志である。その際、われわれが義務として従うべき法則が、カントの「道徳法則」である。 わたしは、カントの「普遍的法則」を、基本的に定言命法の「目的自体(人間性)の方式」で理解しており、「汝の人格のうちにもあらゆる他人の人格

          「カント法哲学の研究ノート」

          国際社会の「保護する責任」

          オーロラ船団隊員:「アリョーシャさん、国際社会の保護する責任のレポートです。」 アリョーシャ:「ありがとう。助かるよ。」 ***** 国内避難民担当事務総長代表であるフランシス・デンは、国家主権を再定義し、「責任ある主権」を提唱した。国家は、対外的には他国の主権を尊重する責任を持ち、対内的には国内にいるすべての人の尊厳と基本的権利を尊重する責任があるとされた。さらに、国家が、国内のあらゆる人の尊厳と基本的権利を確保する責任を、果たす意思や能力がないか、国家自身が犯罪や残

          国際社会の「保護する責任」

          立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

          われわれは、日本国憲法が、人類の長い経験と叡智の蓄積の表象である立憲主義の展開の「現代の到達点」というべきものを具現していることを、明確に認識し理解する必要がある。グローバル化する世界にあって、日本が過度に内向きになることなく、相互的比較を通じて対話し、自らを高めていく確かな基盤・土台を有することの意義は、長期的にみて限りなく大きい。 憲法の制定過程においては、戦前の厳しく徹底した思想・言論などの弾圧体制が基本的に除去され、選挙権が従来の25歳以上から20歳以上に引き下げら

          立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

          短編・「オアシス」

          飛行機が不時着した。砂漠のど真ん中に。 ぼくはそこで、不思議な少年に出会った。 王子さま:「こんにちは」 飛行士:「君はこんなとこでなにしてるんだ!」 王子さま:「どこから来たの?」 飛行士:「飛行機が不時着したんだ。」 王子さま:「空から来たんだね。同じだね。どこの星?」 飛行士:「なんだって?」 キツネ:「こんにちは。君の髪、キレイだね。」 王子さま:「やあ、こんにちは」 キツネ:「お願い。ぼくをなつかせて。」 王子さま:「ぼくあまり時間がなくて。」

          短編・「オアシス」

          「学校給食のチ・カ・ラ」

          WFPのパンフレットを読んで ******* 学校給食が変えるものって、何だろう。給食の力を考えてみたい。 国連WFPは、紛争や自然災害の現場における「緊急食料支援」に力を注ぎつつ、途上国や紛争地での「学校給食支援」にも取り組んでいる。給食には、広く人びとや社会を動かし、地域や国の未来を、明るい方向へ変えていく力がある。 まず、空腹な子どもたちが、必ず一食たべられる。紛争によって仕事を失った親にとって、子どもを食べさせていくことは容易ではない。学校で食べる温かい給食が

          「学校給食のチ・カ・ラ」

          基本的権利としての「水と衛生への権利」

          政府は、健康、教育、暮らしを支えるのは、清潔な水と適切なトイレ、そして、正しい衛生習慣であることを確認し、国家の優先課題として、人間としての基本的権利である水への権利を確保しなければならない。国連総会では、「水と衛生への権利」が、相当な生活水準・健康への権利・生命や尊厳への権利に密接に関連するものであると同時に、独立した対応が必要とされている。すなわち、自由権と社会権の基本的権利に不可欠なものとして、「水と衛生への権利」が尊重されることを要するのである。 とりわけ、公平性の

          基本的権利としての「水と衛生への権利」

          「Season's Call」

          春。朝日とともに、桜を迎えに、公園へ。 風が走れ、と、オレを誘う。 小鳥が、自慢げに、頭上を舞う。 夏。一面のひまわり畑。 北海道の、家族との思い出。 写真の中の、姉が笑う。 ブリストルで開いた、手紙の中で。 冬。片耳に、イヤホンつける朝。 かっこつけて、キャップを選び、 庭の雪を、吹っ飛ばす。 人生の終わりに、実りの秋。

          「Season's Call」

          「じゅういちぶんのいち」

          前半に0ー3で、3点入れられて後半に挑む。 ぼくの半生はそんなもんだった。 今、後半戦に向けて、気持ちを入れかえてる。 ぼくは、この試合を勝たなきゃいけない。 もし負けても、次に挑む覚悟はある。 未来は蜃気楼のように、遠くにぼんやり浮かぶくらいでいい。 大事なのは、地に足が着くこと。 今ここに集中し、どんなプレーができるか。 最高のじゅういちぶんのいちを夢見て。

          「じゅういちぶんのいち」

          人権の中核としての「人種差別」の禁止

          基本的人権という観念は、一八世紀の啓蒙期自然法思想から導かれたものであって、国内における君主や貴族と一般庶民とが階級的に厳然と差別される中で、君主の絶対支配に抵抗し、平等な人間としての権利が主張された。田畑茂二郎によれば、平等の主張といっても、それは同質的な白人社会内での平等の主張であり、白人と他の人種との間の平等とか、人種間の差別の撤廃とかいった問題は、視野の外におかれた。 戦後、状況は大きく変わり、人々の平等という場合、対象領域は国内から世界的な規模に大きく広げられ、人

          人権の中核としての「人種差別」の禁止

          国際法上の「自決権」

          人権規約は、A規約、B規約のいずれにおいても、第一条一項において、自決権について規定し、「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」としている。 第二次世界大戦後、非植民地化の過程で実定法となっていく自決権は、植民地人民を中心とする、外国支配下におかれた従属人民の独立達成の権利であり、「外的自決権」を意味した。独立国の一部を構成する少数者などに自決権を認めることは

          国際法上の「自決権」