ファントム・キャリッジ(4)

4. ワン・ナイト・ヘル・カーニバル

 唸りを上げるエンジン音! ブルータル・ベルセルク・ゾクのアジト前広場は、クラシカル・バイカー・スタイルのブルータル・ベルセルク・ゾクの構成員がひしめき合い、キリングオーラに満ち溢れていた! 拡声器を持ったトビカワが大声でがなり立てる。

「ハイウェイの掟をナメ腐りやがったスカムアーバンレジェンドに引導を渡す時がきた! 今日という日が来るのを死んだダチ公どもは冥界で待ち望んでいる!」

 湧き上がる鬨の声!

「この日のためにキギザキがハッカーを調達してくれた! テメェらキギザキに感謝しろよな! 」

 声にならない叫び声が夜空に反響する!

「殺せ!」

「「「殺せ!」」」

「殺せ!」

「「「殺せ!」」」

「スカムアーバンレジェンドを殺せ!」

「「「スカムアーバンレジェンドを殺せ!」」」

「狩れ!」

「「「狩れ!」」」

「狩れ!」

「「「狩れ!」」」

「スカムアーバンレジェンドを狩れ!」

「「「スカムアーバンレジェンドを狩れ!」」」

 恐るべきファントム・キャリッジに対する殺意溢れるチャントでブルータル・ベルセルク・ゾクの士気はぐんぐん上昇していき、対照的に煽情的トレーラーの助手席に収まったサクラバの顔が青ざめていく!

「ヒェッ……ファントム・キャリッジを狩らないと僕は確実に殺される……」

 震える手でサクラバは端末のキーボードを生存のためにタイピングし始めた。

「ブルータル・ベルセルク・ゾク出撃だ!」

「「「ウオーッ!」」」

 ブルータル・ベルセルク・ゾクがファントム・キャリッジを狩るためにアルテミス・サーキュラー・ウェイへ出撃する!

 ……アルテミス・ハイウェイを護送車がアルテミス・エンタープライズ社に向けて走っている。そして護送車を運転するウィルバーは浮かない顔をしている。その原因は何か? それは護送対象である不気味な雰囲気をもつ男……デビルレイである。

「フヒヒ……ハッカーは大抵海が好きだ……その理由を知っているか……?」
「囚人番号019号……護送中に私語は慎め」
「それは……インターネットと海は限りなく近い成分でできているからだ……フヒヒ……」

 ウィルバーは気分を紛らせるためにコーヒーガムを噛みながら運転をしている。物事に無関心なドライバーを装うことでデビルレイの放つ雰囲気から逃れようとしていた。

(早くアルテミス・エンタープライズ社に到着しないと俺の頭はおかしくなりそうだぜ……)

「なぁ……運転手さん……アンタ勘が鋭い方だろ?……オレはすぐわかる性質なんだ……」
「アイエ!?」
「囚人番号019号! 護送中に私語は慎めといっているだろう! 」

 ウィルバーは精神的動揺を悟られないように笑顔で取り繕いながら、バックミラー越しにデビルレイを見る。デビルレイはいたってシリアスな顔でバックミラー越しにウィルバーを見つめ返した。

「フヒヒ……これからアルテミス・サーキュラー・ウェイで凶事が起きる……生き残りたかったらオレの言うことを聞いた方が生き残る確率が上がるかもしれないぜ……少なくとも神様に祈るよりはマシだ……」

 アルテミス・サーキュラー・ウェイでの凶事……ウィルバーの中で悪い予感が再びメリーゴーランドめいて加速していく。奇妙な汗がウィルバーの体を伝ったことを感じた。

【続く】

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