宇宙は一台の筐体で出来ていた


 眠りから覚めるとポッドの中だった。

 一瞬、ここはどこだと思ったが瞬時に状況を把握した。いや、違う。アズは最初から全てを理解していた。まるで催眠学習をしていたようだった。

 ポッドのロックを解錠して部屋を抜け出すと薄暗い廊下を歩き出した。最初から目的地はわかっている。アズは迷いなく歩き出した。

「よう……目覚めたのか……新米教師」

「あんたが同僚か……夢の中で紹介したから、自己紹介はしないよ」

「そうか……使命は言えるか?」

「生徒たちの指導と宇宙破滅の回避のことだな」

「アズ先生、よくわかっているじゃないか」

「リヨ先生、先輩教師としてご指導よろしくお願いします」

 そう言ってアズとリヨは別れた。この廊下の扉を抜ければ着任する学校だ。ここから宇宙の分岐が始まる。アズは気を引き締めだ。

「Hello world」

 しずかに呟くとアズは新世界に飛び出した。


◆◆◆◆◆


 宇宙は一台の筐体で表されていた。

 無限の試行によって分岐するパラレルワールドは増殖の一途を辿っていた。NPCはしばし制御を外れ、例外処理が増えていった。

 観察者は思った。このままでは筐体は熱的死になると。

 熱的死から逃れるにはNPCの教導が必要と感じた。プログラミングを走らせ、教師botを作り出したのだ。

 演算された宇宙を駆けNPCを教導すべく、アズの肉体を宇宙に転送されていく。ここから先はアズは自らの足で立ち進まなければならない。

 アズの旅立ちに電子の神の祝福あれ。

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