ファントム・キャリッジ(2)

2. スピードデーモン:ファントムキャリッジ
 恐るべきスピードデーモン、ファントム・キャリッジがアルテミス・サーキュラー・ウェイに出現したのは春先の事だった。恐るべき走行性能を誇る黒ずくめでフルスモークのスーパーカーがモーター・ゾクの連中に次々喧嘩を売り、喧嘩を買ったモーター・ゾクは次々と無惨なクラッシュという敗北で終了したという鮮烈な走りぶりを披露したのだ。
 モーター・ゾク界隈は震撼が走り、ファントム・キャリッジに懸賞金をかけたが、ことごとく腕利きのモーター・ゾクはファントム・キャリッジに敗北を喫するのであった。
 そのうちにモーター・ゾクはファントム・キャリッジを恐れるようになった。得体のしれないモンスターに関わるほどモーター・ゾクは暇ではないのだ。しかし、ブルータル・ベルセルク・ゾクだけは違った。クラシカル・バイカー・スタイルを貫き通す古典主義者の集まりであるブルータル・ベルセルク・ゾクはハイウェイの掟をナメ腐ったファントム・キャリッジを許せないのだ。それ故にファントム・キャリッジを狩るために動員をかけ敗北したのだ。

 ブルータル・ベルセルク・ゾクのアジトの扉が乱暴に開かれ副官の下半身サイバネのスキンヘッドの男、キギザキが現れる。その両指にはゴールドリングが8本はめており、危険な空気を醸し出す男だった。その後ろから手錠をはめられた男がおずおずとおびえた様子でキギザキに従う。

「トビカワ、ご所望のハッカーを連れてきたぜ」
「キギザキ、予想より早いじゃないか? これでスカムアーバンレジェンド狩りが捗るぜ! 」
「あぁ、女で釣ればチョロいもんだぜ、少し挨拶しろよ! オラ!」
「ひぃ……サクラバです! 初めまして!」
 トビカワは笑顔でサクラバの肩を叩いた。
「お前に今回の狩りの責任がかかってんだ。しっかりキバれよ?」
「……はい、わかりました」

 サクラバは震えながら自らの運命を悟った。ファントム・キャリッジを絶対に狩らなければ自らの命を保証はないということを。

「これで準備が整った! ブルータル・ベルセルク・ゾクの兵隊を集めろ! 今夜、あのスカムアーバンレジェンドの化けの皮を剥がす! 楽しい狩りの始まりだ!」

【続く】

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