燃えよ英傑! 本能寺の変の結末とは!?

きっとこの物語はフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。 by note放送協会

(前回までのあらすじ:明智光秀が前触れもなく乱心し、本能寺に向けて進軍を開始した! その裏では織田体制を快く思わない邪悪な妖術師、苛心居士の陰謀があった!光秀は苛心居士により光秀の中に眠っている鬼の血を目覚めさせられたのだ!これが本能寺の変だ!そして最新AIのディープラーニングは天下分け目の天王山決戦の真実を導きだそうとしていた!)

6. 百華組見参! 聖少女ガラシャの祈り!

一方その頃、細河屋敷では苛心居士の式神と目される大蜘蛛との激闘が続いていた!主に戦っているのは細河家当主細河忠興と杜蘭丸の二人だ!
「蘭丸!弾幕が薄いぞ!」
「忠興様!申し訳ありません!あの大蜘蛛がこんなにも大量だと一匹一匹当てるのも大変なんです!」
 忠興と蘭丸の戦いは数の暴力で迫る大蜘蛛によって徐々に押され気味になった!
「このままではガラシャが危ない! 誰でもいいから救援に来てくれれば!」
 その時!廊下の天井から何者かが降りてきたのだ!
「忠興様!蘭丸様! 姫様の命により参上仕りました!百華組です!大蜘蛛退治はわたくしめにお任せください!」
 それは織田忍軍百華組だった! 忍者は秘密主義なので正体は不明だが忠興と蘭丸にとっては心強い味方だ!
「これは百華組とはなんて心強い!我々は一旦スタミナ回復のために戻らせてもらう!」
「忠興様!ボクはまだ戦えます!」
「蘭丸よ!そう言うな!ここは一旦退却してスタミナの回復を重視するべきだ! それができる男が真の将の器だ!」
 蘭丸は不服そうだったが忠興に諭され一旦ガラシャの部屋に退いた!流石は名門細河家当主である!

ガラシャがいる部屋に戻ってきた忠興と蘭丸であったが、そこで待っていたのは一心不乱に祈るガラシャの姿であった!
「ガラシャ、集中中に済まない。さっき百華組が来て曲者を引き受けてくれたのだ……我々はスタミナ回復を重点しなければならない」
 忠興は優しくガラシャに声をかける。
「あ、 忠興様!祈りに集中して時間を忘れてしまいましたわ」
 ガラシャは忠興の姿を認めバツの悪そうに笑う。
(本当に中に入ってきてよかったのかな?)
 蘭丸は二人の間に入ることを気にしていた。
「あら、蘭丸様も来てくださったのですね……茶菓子は出す暇がありませんがしばしの間英気を養ってくださいませ」
 ガラシャの寛大な申し出に蘭丸は胸をなでおろししばらくスタミナを充電することになった。

一方百華組は大蜘蛛を順調に駆逐していた!
 正確な手裏剣射撃と斬撃で大蜘蛛を倒す!
「忍法乱れかまいたち!」
忍法が得意な百華組組員が風刃の波状攻撃で次々と大蜘蛛を倒していった!
 みるみるうちに大蜘蛛は数を減らし平穏が戻るかと思った矢先の出来事だった! 本能寺方面がにわかに光り出したのであった!
「これは一体!?」
百華組の面々は訳も分からず大蜘蛛を捌きながら首をかしげるのであった!
忠興と蘭丸、そしてガラシャも本能寺方面の光を感じ取った。そして部屋の中からチリィン鈴の音が響いたのであった。
「鈴の音? こんな非常時に鈴を鳴らすとは非常識ですね」
 蘭丸は呆れたような声でつぶやいた。
「これはわたくしが父上に持たされた土鬼家に伝わる鈴の音ですわ」
とガラシャは鈴を蘭丸と忠興に見せてみた。確かに鈴の音の大元はこれに間違いはないようだった。
「しかし不思議ですわね……普段は少し振ってみても全然鳴りませんことよ」
 その時、忠興は何かを閃いた!
「ガラシャ、今から本能寺に向かうぞ! 蘭丸もついてまいれ!」
「忠興様!突然本能寺に向かうとはどういう風の吹きまわしですか!」
「鳴らずの鈴と光秀様の乱心が何らかの形でつながっているのではないか……私の第六感がそう叫んでいるのだ……」
「でも大蜘蛛はどうするのですか!」
「どうやらラスボスが現れたようだ」
そう叫ぶと百華組が扉を破砕しながら飛び込んできた! その視線の先には大蜘蛛の下半身に上半身が人間の怪物の姿があった。
「忠興様!わたしたち百華組が相手の注意を引き受けます!安心して歌仙兼定を抜き放ってください!」
 百華組の心強い申し出に忠興の心は気合が入った!忠興はその場で歌仙兼定を抜き放った!漆黒のオーラが妖刀、歌戦兼定から迸る!
「仏に会っては仏を斬る……魔に会っては魔を斬る……歌仙兼定奥義!魔刃斬り!」
 漆黒のオーラから放たれる会心の一撃が大蜘蛛の怪物を捉えた!強力無比な一撃に大蜘蛛の怪物はたまらない!
「ウゴゴゴ……ウギャー!」
断末魔めいた悲鳴を上げて消滅した!そして残されたのは紙人形だけだった!
「ふぅ……魔刃斬りはいつ使っても心臓に悪い……」
 そう言うと忠興は煙管を取り出して一服した。一仕事終えた武将の余裕だ。
 忠興、蘭丸、ガラシャ一行は真実を確かめるために本能寺へと向かう! そしてこの物語は天王山に突入する!

7. 本能寺崩壊! 英傑は遅れてやって来る!

羽島秀吉一行は全速力で丘矢間から京都まで勢いよく戻ってきた! あまりの速さに知らぬものにはまるで亡霊のように見えただろう。秀吉はみゃーみゃー言いながら早馬を走らせたのだ!そこまでしてたどり着いた夜明け前の本能寺は崩壊していた!
「こんなに立派だった本能寺が崩壊しているみゃー!?」
 見るも無残なガレキ類が散乱している本能寺跡地に生きている人間は一人も存在しないように思えた! 秀吉が思わず嘆くのも無理はなかった!信長は、光秀は一体どこに行ってしまったのか!?
「秀吉様、私のサイコメトリーで本能寺に何があったのか探ってみましょう」
「半兵衛、ここはお前のサイコメトリーだけが頼りだみゃー! 是非やってくれ!」
 武中半兵衛はサイコメトリーを使えるのだ!半兵衛は意識を集中し本能寺のガレキに残る残留思念を読み取ろうとしていた!

「ウォーッ!」
「ウォーッ!」
 超自然の獄炎を鎧のように纏った明智光秀と、黄金のオーラを取り込み第六天魔王化した織田信長がぶつかり合った!鬼と魔王の二つのエネルギーの奔流が激しいせめぎ合いを起こす!そして本能寺がじわりじわりとダメージを食らう!
「ノブナガ!コノテイドノダイロクテンマオウカデハ、ワタシヲタオスニハホドトオイゾ!」
 光秀は勝ち誇るように鬼の力はいかに強大かを示した!信長はやや不利か!
「ワシは光秀の目を覚ましてやるんじゃ! ここで退いては覚悟を決めて立ちはだかった長可たちの面目が立たん!ウォーッ!気合入れろ!」
 信長はなおもまだ第六天魔王化を解かず気合で黄金のオーラを取り込もうとする。恐るべき天下人としての覚悟と意志の力だ!まさに天下人の器!
「ニンゲンゴトキガ、チジョウノハシャタルオニニカテルワケナイダロウ! コレデモクラエ! ゴクエンキコクホウ!」
 見るからにヤバい漆黒のオーラと超自然の獄炎のカクテルを凝縮して信長に射出した!信長は本能的に回避! 本能寺に命中! 本能寺に大ダメージだ!
「光秀! なんて恐ろしい力じゃ! これが鬼の力か!? それでもワシは光秀を止めることに関しては決して譲れん!人として光秀を止めて見せるのじゃ!」
 獄炎鬼哭砲を食らえば信長は即死していたことだろう……だが生き残ったことでチャンスが生まれるはずだ。信長はそう信じていた!
「ホンキノヒャッキヒャクレツケンヲミセテヤロウ! ミンチニナッテモシランガナ!」
「ワシも百鬼百裂拳に対抗して天魔百裂拳をお見舞いしてやろう!ワシと光秀どちらの拳圧の正確無比さを競うのも悪くないわな!」
「ウォーッ!」
「ウォーッ!」
 信長と光秀は同時にパンチのラッシュを開始した!いつ終わるとも知れぬラッシュの比べあいに本能寺はじわじわとダメージを食らい本能寺各所に亀裂が入っていく!
「ウォーッ!」
「ウォーッ!」
気合を入れて百裂拳同士がぶつかり合い相殺していく姿はどんな戦でも見たことがない世界最上位の強者しか出せない戦いだ!
(孫呉・良平先生! ワシの前を通り過ぎていったヒノモト各地の強者たちよ!いまここだけはワシに力を貸してくれ!)
 黄金のオーラをどんどん取り込んでいく信長!このままでは人間の枠を逸脱してしまうぞ!そうなったら天下人の称号も返上だ!だが信長の強い意志の力が黄金のオーラを取り込むことをやめない!
「ウォーッ!」
「ウォーッ!」
そしてその拳圧は爆発的なエネルギーを引き起こし!次の瞬間!本能寺は爆発炎上した!
KABOOM!ものすごい光が本能寺を包み込む! そして宇宙じみた静寂が本能寺を包み込んだ!
だが最後に立っていたのは明智光秀だ!織田信長は自爆したのか!?
「ノブナガヨ、ワタシノカチダナ! ソノツヨイイシノチカラモジバクシテシマエバイミガナイ……」
 だが光秀の肉体もボロボロだ!
「ムハハハハ!ワタシガテンカビトダ!」
 光秀の勝利宣言!これも苛心居士の計画通りか!
「光秀殿、見事な勝利でしたなぁ……某もまさか信長が爆発してしまうとは思ってもいませんでしたぞ!流石は天下の大うつけですなぁ……」
噂をすれば苛心居士が姿を現した!どこまでも底知れぬ男!
「しかし、この激戦では光秀殿も少し休養が必要ですねぇ……弥馬崎あたりの山中にいい隠れ家がありましてな……そこで英気を養うことにいたしましょうか」
 そう嘯くと苛心居士は妖術で光秀を連れて姿を消したのであった。

 半兵衛はサイコメトリーの情報に立ち眩みを起こし倒れこんだ素早く玄田官兵衛は半兵衛を支える!迅速な対応!
「半兵衛は体力が低いのに辛い役割をさせてごめんみゃー」
 秀吉も半兵衛にねぎらいの言葉をかける!
「本能寺が崩壊している……なんてすさまじい戦いの爪痕なんだ」
そこに忠興、蘭丸、ガラシャ一行が本能寺跡地にやってきた!
「お主らは杜蘭丸、細河忠興、ガラシャではないか! 本能寺跡地に何しに参った」
「これはこれは玄田官兵衛殿に武中半兵衛殿、羽島軍の二大巨頭がずいぶんと早い到着で……大変苦労しましたか」
 忠興が京都在住らしい早い到着への労いの言葉をかけた!
「丘矢間の地から全速力で早馬を駆けましたみゃー、なんとか一日で京都に戻ってこれたみゃー」
 秀吉はえへんと胸を張る!
「それで信長様はどうなったんですか!生死は確かなんですか!」
 蘭丸は半兵衛に詰め寄る!信長の安否が不安で仕方がないのだ!
「蘭丸くん、落ち着いて聞いてください」
 半兵衛は覚悟を決めて蘭丸の目を見据えて言葉を紡ぐ。蘭丸も半兵衛の態度に覚悟を決めて半兵衛の言葉を待つ。
「信長様は第六天魔王力の過剰取り込みで自爆して果ててしまいました!しかし光秀も少なくない大ダメージを与えて弥馬崎に撤退することは成功しました!」
 その言葉を聞いた瞬間、杜蘭丸は膝から崩れ落ちた!
「泣かないでください蘭丸くん! 信長様は未来に希望を託して倒れたのです! そんなに泣かないで!」
織田信長の突然の別れに蘭丸の感情はもうグチャグチャになっていた。蘭丸も本当は信じたくなかった。しかし相手はサイコメトリー能力を持つ武中半兵衛だ。恐らくは嘘はついていないだろう。忠興、秀吉、官兵衛、ガラシャはただ蘭丸を見守るしかなかった。

8. 失意の細河屋敷! 光秀攻略の鍵を握るあの男

 忠興一行は一旦、細河屋敷に戻って対応を協議することになった。なお蘭丸は心を落ち着けるため別室で待機してもらった。ガラシャが傍についている。
「細河屋敷に待機してもらった百華組に使いを出し、鳴らずの鈴の出自を調べさせるため土鬼氏の出自たる御濃に向かわせた」
 忠興は努めて冷静な言動に務めていた。忠興も内心では信長の死に動揺しているのだろう。その声色には若干の震えがあった。
「流石、細河家当主だみゃー、抜かりない対応だみゃー」
 忠興の冷静な行動に秀吉は感嘆した。
「弥馬崎山中にある苛心居士の隠れ家に光秀は隠棲しているとのことだが、吾輩は見つけ出すのは難しいと思うぞ! それに巧妙な罠を仕掛けているに違いない。これは骨が折れますなぁ。忠興殿、山狩りでもしますかね?」
 玄田官兵衛は苛心居士の居場所を探し出す困難性を指摘し大げさに嘆く素振りをした。
「私のサイコメトリー能力で居場所を割り出すのは可能ですが丘矢間からの早馬と本能寺でのサイコメトリーで私の体力は限界です。不甲斐ないところを見せて申し訳ありません。」
武中半兵衛は陳謝した。体力が低いことを気にしているのだろう。羽島軍の両腕たる両兵衛ですら苛心居士のアジトを探すことの困難性を訴える!
本当に底知れぬ男だ、苛心居士!
 その途方もなさににこのまま諦めかけたその時!

「みんな!我が弟、蘭丸が悲観に暮れていると聞きこの鬼武蔵、慰めに現れた!」
 その姿は紛れもない、鬼武蔵こと杜長可の姿だった!
「長可殿! お前生きていたのみゃー!」
 秀吉が突然現れた長可の姿に思わず驚いた!
「まぁ、俺様は彼岸に締め出しを食らわされたからな!」
 そう嘯くと長可は豪快に笑った! まるで昨夜の敗戦がなかったかのようだ!
「武人ジョークはいい……長可、なぜウチの屋敷に現れたのだ? 」
「単刀直入に言うぜ……明智光秀は鬼と化したがまだ人としての心が残っているんだ!まだチャンスがある!」
「「「なんだってー!」」」
 突然の杜長可の爆弾発言に忠興一同は衝撃を隠せない!
「俺様渾身の錠前砕きと光秀の鬼哭砲が正面からぶつかり合った結果、わずかに鬼哭砲が上回り吹き飛ばされてしまった。さすがに俺様は死を覚悟した。しかし! その結果はこの通りよ!人間無骨は折れちまったが俺様は五体満足だ!その事実が光秀に人の心が残っている証拠だ!」
 長可がその根拠を自らの体験に絡めて説明した!
「ちょっと待ってください……長可くん。ただ光秀が本能寺攻略を急いでいるだけでとどめを刺さなかっただけではないですか?」
半兵衛が当然の疑問を呈した。言われてみれば長可の勝手な勘違いの可能性も否定できない!
「そこだよ!半兵衛! 鬼哭砲の威力はとても強かった! だがその鬼哭砲の威力は本来の威力じゃない!本来の鬼哭砲をまともに食らってしまえば俺様の体に大きな風穴を開けて果てていた……わかるか? この物理学の問題がよ?」
 ざわざわ……ざわざわ……杜長可の理論武装に思わずざわついてしまう一同!
「……確かに私がサイコメトリーで見た獄炎鬼哭砲は信長様が第六天魔王化してなければ一瞬で消し炭になっていたことでしょう。超自然の獄炎を抜いたあの鬼哭砲が本来の威力だとしたら? 長可くんの体験した鬼哭砲は無意識のうちに光秀が手加減した結果したということになります」
 エウレカ! 半兵衛が長可の指摘を高速演算した。その結果、光秀に人としての心が残っているという結論に至った!
「それなら光秀に日吉拳が使えるするみゃー!」
 秀吉は安堵した!暗いアトモスフィアに包まれていた細河屋敷にわずかな希望の光が見えてきた!明智光秀に人の心を取り戻すための戦いの準備が始まろうとしている!


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