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小説抵牾(もどき) {みんなおなじ #2}

あらすじ

電車を待っている間に老人と出会った俺は
老人のせいで電車に乗り遅れ、面接の時間に間に合わなくなる。
「おいジジィ!どうしてくれるんだよ!」

1章 ジジィの能力

「もしもし?儂じゃが。」

「此の後、面接をする予定の――」
「お主、名は何といったかな?」

「…八意…八意 幽生…」

「――八意君じゃが、面接は明日にしてくれぬか?」
「おお、有難い。また、後で連絡する。」

「ジジィ、面接の日程をずらしてまでして、俺に何がしたいんだ?」

「お主は、あのようにはなりたくないんじゃろ?」
ジジィは、電車を待っている屍――のような会社員を指した。

(なりたくなんかねぇよ!)
(でも、ああなるしかないんだよ!)
(ああやって働かなきゃ生きていけないんだよ!)

「その考えは間違っておる。」
「だから、お主に『屍にならずに生きる方法』を教えたいんじゃ。」

「さっきから思うんだが、なんで、俺の考えてることがわかるんだ?」
「まさか、長年の勘ってやつか?」

「儂には、生まれつき『人の心が読める』能力があるんじゃ。」
「お主の考えとることくらい、事細かにわかるんじゃ。」
「お主は信じるかのぉ?」
「儂の話を聞いてくれるかのぉ?」

(自分は騙されているかもしれない。)
(でも、屍のように毎日生活するのは…)
(まあ、暇だし、面接明日だし、聞いてやるか。)

「わかった。あんたの話を聞く。」
「あと…ジジィなんて言って悪かった…」
「立ったまま話すのも疲れるだろ。」
「喫茶店でも行って話さないか?」

(気の利く若者じゃのぉ。)

俺と爺さんはゆっくり歩き出した。

to be continued…

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