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小説牴牾(もどき) {みんなおなじ #3}

あらすじ

駅で出会った老人には、生まれつき心を読む能力があった。
彼は俺に話したいことがあると言って面接の日程をずらしてしまった。
俺は、少し心を開き、喫茶店に行くことを提案した。

2章 道中~爺さんの過去~
***

「爺さん。何で俺に話したいと思ったんだ?」

「お主が…儂の息子に似ててだな…」
「つい…話したいと…助けたいと…」

――悲壮――

とは、このことだろう。
爺さんは強かに、悲しんでいた。

「何か息子さんにあったのか…?」

「倅は…」
「就活生だった頃…」
「さっきのお主のように…」
「屍になりたくない…」
「と、考えておった。」

「・・・」
「今、息子さんはどこに…」

「冥界じゃ…」
「就職してから…」
「たったの1ヶ月後に…」
「生死の境を超えた…」
「倅は…」
「会社に…」
「殺されたようなもんじゃ…」

「・・・」
「もしかして…」
「息子さんも…」
「爺さんと同じように…」
「心を読む能力があったのか…?」

「ああ…」
「そのせいで死んだと言っても…」
「過言では…ない。」

もう、爺さんは、悲愴の域に入っていた。

「悪いな…嫌なこと思い出させて…」

「倅は…」
「この能力のお蔭で…」
「人間関係に困ることは無かった。」

「・・・」

「じゃが、相手のために…尽くしすぎたんじゃ。」
「相手の望むことなら…何でもした…」
「見事なまでに…会社の…犬になった…」
「そのまま…衰弱し…て…」

爺さんの歩みが止まった。

「過労死した…と…」

――過労死

それは社畜先進国『日本』が産み出した

負の産物

今や海外でも『Karoshi』は通じるらしい

***

喫茶店につくまで
俺は世界が灰色に見えていた…

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