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YCombinator W21 DemoDayに登場したアフリカスタートアップ10社まとめ

UNCOVERED FUNDの寺久保です。先日YCombinatorが開催したW21 Virtual DemoDayに参加したアフリカスタートアップ10社をまとめてみました。YCombinatorはアフリカスタートアップへの投資も積極的に行っており、過去YCバッチには累計47社のスタートアップが参加しています。代表的なスタートアップとしては、先日$170Mを調達しユニコーンとなったFlatterwaveや、昨年Stripeに$200MでM&AされたPaystack等が存在します。

年々アフリカスタートアップへの投資額は急成長していますが、世界的にはまだまだ投資家が不足している状況下で、YCombinatorの存在はUSを中心した世界の投資家の資本をアフリカスタートアップにアクセスさせる大きな役割を担っていることは事実です。弊社支援先の企業もYCバッチを卒業し、シリコンバレーの投資家からの大型調達等大きな貢献をしてもらっています。

今回W21のバッチには10社のアフリカスタートアップが採択されており、せっかくの機会なので各社の取組みを簡単にまとめてみました。

1. Mono(Nigeria🇳🇬)

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ナイジェリアを拠点に活動するMonoは、元Paystackのプロダクトマネージャーを務めたAbdulhamid Hassan氏によって創業された金融APIを提供するスタートアップです。APIを利用して、口座情報の確認、銀行取引明細書の取得、口座からの引き落としなどを行うほか、KYCや信用調査などをスムーズに行うことを支援しています。

例えば最近Monoはナイジェリアのデジタルレンディングサービスの1つであるCarbonとの提携を発表しました。Carbonは2016年に創業し、さまざまな所得レベルのナイジェリア人がクレジットにアクセスする際の障壁を減らすことをミッションに活動しています。ユーザーは、スマートフォンさえあれば、書類の作成や担保の提供なしに数分で融資を受けることができ、5年間で総融資額は$700Mを超えています。とはいえアフリカにおいては、信用スコアやクレジット・ヒストリー、銀行口座すら保有していない人々が多く存在します。そのため、融資ニーズが高い一方で、先進国のような与信モデルを実施することは簡単ではありません。

実際に与信がない顧客や一定金額を超える融資を行う際には、顧客の過去のファイナンス情報等を申告してもらい時間をかけて融資判断する必要がありました。一定の実際にCarbonはMonoのAPIを活用することで、顧客の銀行明細書を入手するスピードが向上し、査定プロセスや融資決定を迅速に行えるようになっています。また、顧客の収入レベルに合った適切な融資をパーソナライズすることで、顧客満足度が向上し、融資件数が増加し収益拡大につながる可能性を示唆しています。

アフリカにおいて金融領域の課題はまだまだ大きく、様々なスタートアップが送金、決済、貯蓄、投資等の現地課題解決に挑戦しています。Monoはそんなアフリカスタートアップのデジタル金融領域を裏側から支えるインフラとなるべく成長しています。

2. Djamo(Ivory Coast🇨🇮)

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コートジボワールを拠点に活動するDjamoは、フランコフォンアフリカと呼ばれる旧フランス領の西アフリカ地域を対象にしたモバイルベースの金融プラットフォームを提供するスタートアップです。この地域では銀行口座を持つ成人は25%にも満たず、適切な金融へアクセスできていないのが現状である一方、2025年には携帯保有者の70%がスマートフォンを持ち、一人当たりのデータ利用量が1.1GB(2018年)→8.5GB(2025年)と数年で7倍に成長する今のタイミングだからこそ、西アフリカの消費者にとって銀行アクセスがモバイルファーストで作られていくことを主張しています。

特にUEMOA(西アフリカ経済通貨同盟)、CEMAC(中央アフリカ経済通貨同盟)に加盟する14ヵ国では、価値がEUROに紐づけられたCFA Francという共通通貨が発行されており、アフリカで起こりえるスーパーインフレなどのリスクが低いことが特徴です。DjamoはUEMOA・CEMAC加盟国の3億人をターゲットとし、まずはUEMOAに加盟する8ヵ国をターゲットに事業を展開し、9万人のユーザーと月次$2Mを超えるトランザクションを有しています。複数国をまたいで事業を拡大するアフリカスタートアップにとって、CFA Francの存在はその複数国への事業参入ハードルを下げ、東アフリカに比べて横展開の障壁が低い利点があります。

シリアルアントレプレナーのHassan Bourgi氏は過去にコロンビアやペルーを拠点としたBusportalというスタートアップを創業し、南アフリカの投資会社Naspersへ事業譲渡した経験を持ちます。アフリカ最大の通信会社MTNで複数のモバイルマネープロジェクトを率いていたRégis Bamba氏と出会いコートジボワールで2回目のスタートアップにチャレンジしています。


3. Kidato(Kenya🇰🇪)

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Kidatoは幼稚園児から12年生までを対象としたオンラインスクールで、成長を続けるアフリカの中流階級の人々に、高品質で手頃な価格の教育を提供しています。教師の数が不足しているケニアでは生徒と教師の比率が50対1にもなる公立学校か、高額な授業料を支払う私立学校のどちらかを選ばなければなりません。Kidatoのクラスは生徒と教師の比率が5:1となっており、生徒一人当たりに私立学校と比較して安価に教育を受けることができるのが特徴です。現在400人の登録があり教育を提供しています。

4. VendEase(Nigeria🇳🇬)

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Vendeaseはナイジェリアのホテルやレストランを対象に食材の仕入れを支援するマーケットプレイスを提供しています。レストランのためのAmazon Primeをキーワードに、農場や食品メーカーとホテル・レストランを直接繋ぎ安価で購入できることから、注文して24時間以内の配送までを支援しています。飲食店の食材仕入れと在庫管理のプロセスをデジタル化・自動化するプラットフォームを提供し、物流、倉庫管理、品質管理のトラッキング、レストランが商品を購入後、後払いできるようにするための融資も提供しています。

5. NowPay(Egypt🇪🇬)

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NowPayはエジプトを拠点に給与の前払いを可能にする企業向けサービスを提供しています。NowPayと提携している企業の従業員は、モバイルアプリを通じて毎月いつでも給与の一部を請求することが可能になります。現在エジプト国内の上場企業、外資系企業、新興企業などを含む70以上の企業に利用され$100M以上の給与を管理しています。貯蓄が少ないアフリカでは、例えば子供が体調を崩し急遽高額の医療費を払わなくてはならない等、突発的な支出により家庭のキャッシュフローが苦しくなることが頻繁に起こります。そのような時、現状では高金利のレンダーからの融資に頼らなくてはならなく、高額の金利返済に追われ負のスパイラルに陥ってしまうことが大きな問題になっています。

NowPayを導入している企業の従業員は、アプリを通じて給与の前払いを申請するとNowPayから従業員に直接お金が振り込まれます。企業側は給与支払い時に給与から前払い金と手数料を差し引き、それを直接NowPayに支払うだけでよいので、企業側のキャッシュフローに変化はなく、雇用している従業員の生活の安定や企業に対するロイヤルティを高める効果があります。

6. Prospa(Nigeria🇳🇬)

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ProspaはSMEsと呼ばれる中小企業のビジネス口座開設・運用を支援するサービスを提供しています。ナイジェリア法人のビジネス口座開設が5分で完了し、全てのナイジェリア国内銀行へ送金や、ケニア・ガーナ・英国への海外可能になり、取引先企業への請求書の作成から送付、会計から税務のサポートを支援し、アフリカ中小企業の生産性向上を支えています。日本でいうと楽天銀行とマネーフォワードがセットになっているイメージでしょうか。

7. SendBox(Nigeria🇳🇬)

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アフリカではfacebookやInstagramを通じて小売店や特定の個人が商品を販売しているケースがあります。特に家電やスマホ、洋服から、高額なものでは車から家等が二次流通で売買されることがよくあります。しかし既存のSNSはコマース利用としては最適化されていないため、個人間や小売店との取引においてトラブルが頻発しています。Sendboxは、Instagram、Facebook、WhatsAppなどのソーシャルチャネルを利用してEコマース取引を行う事業者に、在庫管理、配送、エスクロー決済等のフルフィルメント事業を提供しています。

8. Flextock(Egypt)

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ECを通じて商品を販売する事業者を対象にフルフィルメントサービスを提供しています。Flextockが倉庫や物流、配送、集金などのオペレーションを一括管理し事業者の業務を軽減させます。特に昨年からパンデミックの影響により中東・北アフリカ地域でもEコマースの購買が劇的に増加しています。利用方法は簡単で、販売事業者がFlextockのプラットフォームにサインアップし、同社のフルフィルメントセンターに商品を送ります。Flextockはトラッキングのために商品にタグを付けます。その後、Flextockと、Shopify、WooCommerce、Wix、Odooなど、各販売事業者が使用しているオンラインストアとの間で統合を行うだけで完了します。注文が入るとFlextockは商品を梱包し、フルフィルメントセンターから顧客に発送する。Flextockは自社で配送車両を所有していないため、エジプトの既存の物流会社と提携して実現しています。

9. Blueloop – Flux (Nigeria🇳🇬)

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アフリカからの他大陸への移民は約3,000万人存在し、毎年約$40Bがアフリカ大陸に住む家族や地元コミュニティに送金されています。主にウエスタンユニオン等を通じて海外送金を行いますが、手続きや送金に要する期間、高額な送金手数料を考えると利便性が低い手段しかないのが現状です。Blueloopはそんな課題を解決するべく暗号通貨を用いた低コストな送金サービスを提供しています。

ナイジェリアはすでにビットコインの個人間取引額がアメリカに次いで世界で2番目に大きな国になっており、法定通貨の信用の低さや取引コストの高さから人々の資産が暗号通貨に流れています。また、昨年はCOVID-19によるパンデミックの影響を受けてナイジェリアの各地域でもロックダウンが実行されました。その間ナイジェリアではビットコインの取引量は約30%もの急上昇を記録し、Paxfulにおけるナイジェリアでの新規登録数は約137%増加したという報道も出ています。

一方で、先日ナイジェリア中央銀行(CBN)によって、同国内の仮想通貨取引所へのサービスの提供を禁止すると発表があり、一時的にナイジェリアの仮想通貨取引所がサービス停止となりました。現在はナイジェリアの証券取引委員会(SEC)により仮想通貨の規制計画が一旦保留になり、取引所等を運営するスタートアップのビジネスも再開されましたが、この領域は政治や規制によって事業が左右される可能性が高く今後も注目です。

10. Dayra(Egypt🇪🇬)

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Dayraは、ライドヘイリングサービスのドライバー、フードデリバリーアプリの宅配業者などのギグワーカーに焦点を当ててスタートしました。エジプトのギグワーカーの大半は銀行口座を持っていないため、彼らが働くデジタルプラットフォームが給与を支払うのは容易ではありません。DayraはこれらのプラットフォームがDayraのAPIを利用して自社のアプリに金融サービスを追加することを可能にし、ギグワーカーへの給与支払いはDayra社が代行します。

ギグワーカーへの口座開設をタッチポイントとしたDayraのコアビジネスは融資です。エジプトでは、ギグワーカーやマイクロビジネスのオーナーなど、銀行口座を持たない人々は、通常、高額な金利と長い手続きを要するマイクロレンダーに依存しています。また、彼らの大部分は、不当な条件で高利貸しから借りていることが大きな課題となっています。Dayraはこのような人々が過去の給与履歴から低金利な融資を簡単に受けられるサービスを提供しています。$100〜$2,500までのローンを短期、中期、長期にわたって提供しており、返済に関してはギグワーカーの収入から自動的に融資の返済を受ける仕組みになっています。そのためデフォルト率が低くDayraの融資資金を回収できる点が強みです。


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ご拝読いただきありがとうございました。アフリカでは企業やSMEsの経済活動の中でも沢山の課題が存在する中で金融領域の課題は大きく、市場も大きいためYCはFintech企業中心に周辺のコマースや物流領域へ投資を行っている印象です。また、今まではバッチではサブサハラのケニアやナイジェリア中心でしたが、今回からMENAをマーケットとするエジプト企業が増えたことや、フランコフォンアフリカへの投資拡大等が印象的でした。

アフリカで起業したい日本人起業家の方、現地で事業作りをしたい事業会社の方、どんなご相談でも弊社までお気軽にお問合せ下さい。
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UNCOVERED FUNDはアフリカ大陸はじめ新興国の産業創りをリードするベンチャーキャピタルです。2050年に向けて新興国の人口増加と経済成長はここから急加速し、世界経済の中で重要な役割を担っていくことは間違いありません。特にその中でもラストフロンティアと呼ばれるアフリカ大陸は、2050年には世界人口の25%を占める25億人の巨大市場になります。その成長を牽引する最先端のデジタル技術を活用し、既存の枠組みに捉われることなく産業・社会基盤を一から構築していく新興国には、 日本が学ぶべきイノベーションの発想が多く存在します。UNCOVERED FUNDは、まだ十分な起業家支援が行き届いていない『アンカバード(un covered)』な世界で 未開の才能を発掘し、事業を作り、雇用を生み出し、世界100億人が共存する未来へ大きな価値を共創します。
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