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UNCOVERED FUNDエジプト投資開始! ラストマイルデリバリー「Bosta」#1【ECが急成長する北アフリカ・MENA市場でAmazon、JUMIA、Shopifyを支える物流インフラ】


こんにちは。UNCOVERED FUNDです。先日、弊社としては初となるエジプト企業への出資としてラストマイル配送を行っている「Bosta Technology」(以下、Bosta)に対して出資しました!

出典:Bosta

日本においても近年、商品やサービスが消費者の元へ届けられる最終配送を「ラストマイル」、「ラストワンマイル」と呼ぶことが多くなってきましたが、元はAmazonが“配送センターからユーザー指定のお届け先”までの区分を物流における最後の配送区分として「ラストマイル」と呼称していたことが語源となっているようです。
現在では、
・ファーストマイル・・・製品が工場から倉庫または配送センターへ運ばれる配送区分
・ミドルマイル・・・流通センターから個々の小売店へ運ばれる配送区分
・ラストマイル・・・顧客の元へと届けられるサプライチェーンの最終配送区分
として整理、理解されていることが多いです。

今回の出資では、エジプトマーケットのポテンシャルの高さや巨大デジタルエコノミーへの期待、その中におけるBostaの強みを総合的に判断しました。
今後三回に渡って、エジプトおよびアフリカマーケットをデジタルの視点で俯瞰するとともに、アフリカの「Commerce」の現在地と今後を考察していきます。
第一回目の今回は、Bostaの事業内容および、アフリカ、エジプトマーケットのポテンシャルを俯瞰していこうと思います。

出典:Bosta


1. Bosta ーテクノロジーで社会問題を解決!ー

BostaはB2Cに焦点を当てたエジプト初のオンデマンドかつ当日配送宅配業者です。ユーザー(荷主)とドライバー(宅配業者)をマッチングし荷物を配送するプラットフォーム提供しており、ユーザーがアプリ上にて配送依頼、配送状況の追跡、現金回収を行うことを可能にしています。BostaではUberのようなアセットライトの運営を行なっており、ネットワーク上のドライバーはフリーランサーとして、好きな時に好きな時間だけ働ける仕組みを採用しています。

ユーザーは荷物の種類やサイズ、集荷地、目的地などの情報を入力するだけで簡単に配送の依頼ができるだけでなく、在庫管理や配送管理、現金回収等の動作を全てアプリまたはダッシュボード上で完結することができます。特に、依然として決済方法の60%が現金に依存し、代金引換方式が広く普及しているエジプトにおいて、Bostaは翌日現金回収を保証しています 。また、配送失敗率の高いエジプトで荷物の紛失を防ぐための追跡機能や事前に設定が可能な定期配送機能も有しており、顧客のニーズに寄り添ったサービスを提供していると言えるでしょう。配送を担うドライバーには、配送依頼の管理や引き受けができる専用アプリを提供しており、ユーザー・ドライバー双方にとってシームレスな体験をテクノロジーにより実現していることが分かります。

出典:Bosta

現在の一日あたりの配送数は約35,000件(EC分のみ)で、既に、数十年当該地域で事業をおこなっている既存大手物流企業を配送数で上回る規模まで成長を遂げています。 特に特質するべき点として、現在抱える3,000人の顧客の中に、amazonCarrefourJUMIAnoonTaagerといった巨大EC企業顧客を有していること、さらにAPIでShopifyWooCommerceと連携し、商品が売れるとBosta側のシステムと連携され、自動でBostaの倉庫から商品がピックアップされ、配送される仕組みをとっており、荷主の工数削減に取り組んでいることが挙げられます。

エジプトにおけるラストマイル配送の失敗率は40%と言われており、世界平均の8%より5倍も高い数値となっています 。この問題こそが、Mohamed Ezzat(現CEO)をBostaを起業したきっかけでした。彼自身、前職では越境ECを起業し、COOを務めていましたが、商品が顧客の元へ届かない現状に課題と可能性を感じ、Ahmed Gaber(現CPO)、Mohamed El-Houssainyと共に2017年にBostaを起業しました。Bostaはテクノロジーを駆使し、確実な配送と在庫管理、現金回収等を含む包括的なロジスティックサービスを提供できることを強みとしており、現在までに97%の配送成功率を達成しています。

全体の失業率が7.4%、とりわけ若年層の失業率が15%であるエジプトにおいて、Bostaは現時点で1,000人のギグワーカーをドライバーとして管理しており、現地の雇用機会創出の役割を担っています。今後の事業拡大に伴いこの数字はますます拡大していくものと認識している。また、主軸であるラストマイルデリバリーの他に、在庫管理施設(hub)を順次増設し、中小事業者を支えるビジネスを展開しており、社会的な役割を多く有している企業であると言えるでしょう。

さて、続いて弊社が初めて出資を決定した、エジプトマーケットを俯瞰していきましょう。

出典:Statista

2. 若くて密な国、エジプト 

2020年に人口が1億人を突破したエジプトは、アフリカではナイジェリアに次いで第二位、MENAでは最大の人口大国です。人口は今後も増え続け、2030年には現在の23%増に当たる1億2800万人に達するとも予測されています。
人口の95%が国土の4%に当たるナイル川デルタに住んでおり、都市部においては過密化に直面しています。カイロの人口密度は5.2万人/㎢ であり、東京23区で最も人口密度が高い豊島区の2.3万人/㎢ (2022年8月時点)と比較するとその人口密度の高さが伺えます。また、カイロの 2,200 万人の人口は、2050 年までに 2 倍になると予想されており、過密化は留まるところを知りません 。
このような過密化は都市機能の麻痺にも繋がりかねず、シーシ大統領は「非常事態」とも表現していますが、一方で、Bostaのようなラストマイル企業にとっては配送効率が良いマーケットであるとも言えるでしょう。(第二回で深掘りします)

Statistaによると2022年におけるアフリカの年齢の中央値は18.8歳とされています。 (日本の中央値は48.4歳であり、世界で最も高齢化が進んでいることは周知の事実かと思います 。)エジプトの年齢の中央値は24.6歳とされており、アフリカ全体と比較するとやや高いものの、他のアフリカ、MENA諸国同様、若年人口数は多く、全人口の約60%が30歳未満、約40%が10歳から29歳とされています 。

3. 巨大デジタルエコノミー誕生の予感 

出典:Statista
出典:Statista

インターネット普及において後発であり、未だ発展途上であるアフリカは普及率では世界平均の63%に大きく劣るものの、インターネット利用者数においては総人口や中産階級人口、モバイルデバイス利用者の増加も相まって、年々増加しています。利用者数の増加が、今回出資したBostaをはじめ、ECやモバイル決済、モバイルバンキング等のオンラインサービスの顧客数の増加に繋がり、結果的に幾多の社会問題への解決策に新たな選択肢を与えているようです。

出典:Statista

一方で、インターネットの普及においてはアフリカ大陸内で地域差も見られます。国連ではインターネットの「Affordability=手頃さ」を所得比2%以下で使用できることとしていますが、アフリカにおける所得に対する使用料は約6%と言われています。アジア(1.6%)や南米(2.7%)と比較しても高く、「手頃さ」を実現している国は14カ国に留まっているのが現状です。
もちろんこれには所得の低さも挙げられるかと思いますが、インターネット使用料自体も高く、アフリカ全体におけるインターネット使用料の中央値は1GBあたり約$7、使用料が高いボツワナやナミビアではそれぞれ約$16、$11かかるとされています。一方、アフリカ内で最も安い国はガーナで1GBあたり$0.61、今回弊社が出資を行ったBostaが事業を行うエジプトにおいては約$0.93とされており、アメリカやヨーロッパの中央値である1GBあたり$5と比較しても安いとされています。

Worldwide Mobile Pricing の調査によると、過去1年間で大幅に使用料が改善された国もあり、マラウィでは$26から$2へ、チャドでは$23から$2へ、赤道ギニアでは$50から$10へと推移しています。また、近年ではGoogleやMeta、イーロンマスクのStarlinkもアフリカ内インターネットインフラ設備に向けて動いており、今後の巨大なデジタルエコノミーの誕生を大いに予感させます。

参考リンク

インターネットの普及と共にデジタルエコノミー誕生に欠かせない要素の一つが、スマートフォン保有率です。実はインターネット利用に関する調査の中でアフリカが世界で最も高い比率を有している項目があります。それが、モバイル端末からのインターネットアクセス率です。

出典:StatCounter

2021年の調査ではアフリカにおける5億2000万人のインターネット利用者のうち、4億8100万人はモバイル端末を通じてインターネットにアクセスしているという結果が出ています。

出典:Statista

パソコンよりもスマートフォンの方が安く購入できることもあり、モバイルインターネット利用者の数は今後も増え続け、全インターネット利用者数との乖離は減少していくと予測されています。

さて、これまで概観してきたように、アフリカにおいては地域、国で成長スピードの違いはあれど、総人口、若年層人口、インターネット利用者数、モバイル端末保有率等、巨大デジタルエコノミー誕生に向けた土台が着々と形成されてきていることが見てとれたかと思います。
これらの要素を踏まえ、Endeavorは現在$115Bnの市場規模があるとされているアフリカのデジタルエコノミーは2050年には6倍もの規模に膨らみ、周辺業界にも波及し、4,400万人の雇用機会を創出すると予測しています。

出典:Endeavor

次回はエジプトのコマース市場についてを書いてきます!

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UNCOVERED FUNDについて
UNCOVERED FUNDはアフリカ大陸はじめ新興国の産業創りをリードするベンチャーキャピタルです。2050年に向けて新興国の人口増加と経済成長はここから急加速し、世界経済の中で重要な役割を担っていくことは間違いありません。特にその中でもラストフロンティアと呼ばれるアフリカ大陸は、2050年には世界人口の25%を占める25億人の巨大市場になります。その成長を牽引する最先端のデジタル技術を活用し、既存の枠組みに捉われることなく産業・社会基盤を一から構築していく新興国には、 日本が学ぶべきイノベーションの発想が多く存在します。UNCOVERED FUNDは、まだ十分な起業家支援が行き届いていない『アンカバード(un covered)』な世界で 未開の才能を発掘し、事業を作り、雇用を生み出し、世界100億人が共存する未来へ大きな価値を共創します。
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