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2019.11.17 りんごジャム(ブラムリー)

キング・オブ・クッキングアップル。

それが、ブラムリーという品種のりんごに与えられた称号だ。

と、思ってたんだけど、実際にそのように呼ばれているという確たる証拠をすぐに見つけられなかった。とは言え、イギリスではりんごの生産量の4割以上を占めるらしいので、まぁ実態としてキングを名乗っても良いんじゃないかとは思う。

「クッキングアップル」すなわち「調理用りんご」の意味するところは、酸味が強く煮崩れが良いため、ジャムをはじめパイや肉料理のソースなど加工品や料理に使いやすい品種ということ。日本国内では加工向きの品種の筆頭として紅玉が挙げられるが、ブラムリーはハッキリ言って「加工向き」のレベルが違う。「加工専用」と言っても過言ではない。紅玉は生食でもいけるが、加工用の王様ともなると酸味が強すぎるし甘味も無いし食感はモサモサして最悪、つまり不味くてとても生食できない。僕は常々「美味しい材料で作った方が当然ながら美味しいジャムができる」と申し上げているが(これは「不味い材料でもジャムにすれば美味しいでしょ?」というよくある誤解に対するアンチテーゼである)、ブラムリーについては発言を翻すほかない。いや、「ジャムにしたら美味しい材料」という視点に立てばそれは美味しい材料に違いない、という言い訳の用意はあるんだけど。

ブラムリーはその辺のスーパーを探してもまず見つからない。りんごの産地である青森や長野の、さらにごく一部の意欲的な地域でのみ栽培されているので、直接買いに行くか、お取り寄せするかしかない。僕は今回、先日の紅玉と合わせて長野県飯綱町で購入。飯綱(いいづな)はりんごの産地として多品種の栽培を推しており、ブラムリー以外にもグラニースミスやブレンハイムオレンジといった国内では珍しい品種が手に入る(もちろん時期による)。他にブラムリーの生産地として発信力が強いのは同じく長野県の小布施(おぶせ)。栗で有名だが、栗依存が強すぎるという脆弱性をカバーするべくブラムリーをブランド化して栽培と発信を強化している。知らんけど。

飯綱町の直売で買ったブラムリーは大きさが不揃いで、色もきれいな緑色とはいかず赤色が差しているが、まぁジャムにするのには全く問題ない。いつものように8等分のくし切りにし、皮と芯を除いて刻む。

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全く問題ない、と思ってたんだけど、ちょっと傷みが多かった。茶色い斑点が目立つ。しかしそんなことより、なんか、カメムシ臭い。いやー前にやったときはこんな匂いしなかったけどなぁ。もっと青りんごガムみたいな匂いがしたんじゃないかな。それにしても臭い。大丈夫かこれ…さすがにジャムにすれば美味しいと断言する自信なくなってきた。

レシピは材料の雰囲気を見ながらにはなるが、基本的に先日の紅玉と同様。紅玉では皮を煮出した煮汁を加えているが、今回はただの水を加える。りんご1kgあたり200mlとした。ペクチンが多く固くなるために水を加えないと煮るのが難しいのであって、水増しではない。水を加える分と、酸味が強いことを考慮して、砂糖はりんごの重量の50%とした。あと、臭みが気になるのでレモン汁を添加。

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灰汁が半端ないのでどんどん取る。灰汁を取りたいのは味というより見た目を良くしたいから。多少残しても混ぜてしまえばわからないのでは?と思われるかもしれない。しかし、特にこういう固めに仕上がるジャムでは、混ぜ込んだら混ぜ込まれた形で気泡が残ってしまう。気にならない人は気にしなければいいけど、僕はものすごく気になるので徹底的に取る。

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10分も煮るとこんな具合に実が崩れる。かき混ぜながら灰汁を取っていただけで、実を潰したりはしていないのに。

さらに煮詰めるが、めっちゃ跳ねるので危険。コンロ周辺の養生はしておくべき。服も長袖を着た方が良い。意外と足元に飛んでくるので靴下かスリッパも履くことをオススメする。アッチアッチ言いながら合わせて20分くらい煮たら完成。仕上がりの程度は好みだが、あまり煮詰めすぎるとまた固くなる。

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さて、においは…

よかった!カメムシ臭くない!

しかしあのにおい、なんだったんだろう。ブラムリーは生産量が少ない分、質に結構バラつきがあるという印象はある。小布施ブランドを買えばいいのかもしれないけど、1個200円くらいするからなぁ。とまぁ言うほど高くもないけど。

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まるで市販のりんごジャムのような、りんごジャム然とした佇まいが素敵。「甘酸っぱい」を体現するかのような風味、爽やかな香り、トロットロの食感。バタートーストに乗せてシナモンをかけてとか、王道ながら間違いない。しかし、ヨーグルトに合わせるのはオススメしない。いくらでも食べてしまえるので、あまりにも危険である。

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